2010年07月18日

遠吠えを愉しむ

 トップリーグにおける史上初めての東北ダービーに向けて、モンテディオは見事な営業活動を展開、競技場の7割以上をホームチームに配席した上での、チケット売り切れ。スタンドは我々のいるゴール裏とメイン側の一角を除き、見事に青一色に染まった。 
 そして、名将小林伸二氏の策にうまうまとはまった手倉森氏と、監督の采配ミスはあったものの判断力にかける残念なサッカーを演じてしまったベガルタ仙台イレブンと、山形大観衆の歓喜の引き立て役となった数千の黄金色のサポータは、ホームチームの完勝を通じて、ダービーマッチを彩り鮮やかなものにする事に成功。日本サッカーの将来の発展に大きな貢献をして、無様に帰宅の途についたのでありました。
 
 開始早々の失点。先方のキーパーソンの石川の進出を容易に許し、そのクロスをカットしようとした富田が田代?にうまく身体を入れられて、後方に流され、秋葉に見事なミドルシュートを決められてしまう。慎重にはいるべき試合で、これはないだろう。
 その後、梁勇基が直接FKを決めて、比較的早い時間帯に同点に追いつくことに成功。以降は、互いが慎重にボールを回す互角の攻防で前半を終えた。
 ベガルタは攻撃MFの関口、太田の2人が負傷で使えず、本来後方の選手である田村を起用した。結果的に田村はよく動いてボールを引き出してはいたが、そこからの突破は難しくどうしても攻めが薄いものになっていた。この日ベンチには、平瀬、中原、加入直後の朴成鎬と3枚のFWがいたが、勝負ところで田村に代えて彼らを投入して攻めを仕掛けようと言うのが、手倉森氏の意図だったのだろうか。
 後半、モンテディオに鮮やかな逆襲速攻を炸裂させられ、2点を連取されてしまった。
 速攻を仕掛け損ねたベガルタが後方でボールを回す。ベガルタの両サイドバックが前進したところで、モンテディオはうまくプレスをかけて、速攻を成功させたのだ。典型的に餌食になったのはCBのエリゼウ。攻撃精神の強いエリゼウはサイドバックなりボランチに展開できないと見るや、強引な縦パスを出すが、モンテディオはそこを狙っていた。
 この日は上記の田村の攻撃力不足の問題もあり、菅井の押し上げは必須だったのだが、そうであればこそ、ボランチとの連携を強化し逆襲に備えるなり、エリゼウに軽率なプレゼントパスとなるプレイを注意しておくなりが必要だった。速攻を仕掛け損ねた時に、サイドバックをある程度上げてボールを保持するのは、「圧倒的な個人」を持たないベガルタとしては必須のやり方。そこを狙われて逆襲速攻された訳で、完全に弱点を露呈してしまった。
 これはベガルタとしては一大事だ。小林伸二氏に、ベガルタは敗戦したのみならず、守備の構造的欠陥を明らかにされてしまった。

 以降の手倉森氏の采配は目を覆うようなひどさだった。
 まずワントップの中島に代えて、いきなり加入したばかりの朴成鎬を投入。長期のオフの間に連携を強化したはずのチームなのに、ちょっと考えられない策だ。積み上げてきた連携よりも、新しい選手の方が頼りになると言うのだろうか。さらに、田村に代えて中原を投入。191cmの朴と、空中戦に強い中原が並んだのに対し、小林氏はCBの石井に代えてヘッドの強い園田を投入。さらに前線の選手に、しっかりとサイドを狙わせる。結果として、焦るベガルタは、エリゼウがロングボールを蹴っては、簡単にモンテディオに跳ね返され、逆襲から好機を掴まれる展開が継続。「4点目が入らなくてよかった」と言う試合になってしまった。まさに手倉森氏が、大観衆の歓喜に貢献するという悲しい展開となってしまった。

 次節に向かいベガルタはいかに修正するのか。小林氏に明らかにされたベガルタの欠点を、他クラブは徹底して突いてくるだろう。
 短期間で、エリゼウに焦って蹴る悪癖を納得させられるのか。あるいは広大を起用して、エリゼウを代えると言う手術も考えられる。誤解されては困るが、エリゼウは守備能力もボール扱いも非常によいCB。フリーで体勢がよければ、エリゼウの前線へのロングパスは有効な武器でもある。問題点を正確に把握し修正さえしてくれれば、従来通りベガルタの守備の要として活躍してくれるはずだ。
 あるいは、千葉を軸とする中盤の守備網を再構成する手もありだろう。中でも終盤に富田に代わって起用された高橋義希のプレイがよかったのが、この残念な試合の中でも救いだった。ロングボール戦法になってしまった中で、落ち着いてボールを回し、時によいフリーランで飛び出し好機を演出した。関口らの回復が遅れるならば、次節義希を起用したトレスボランチは現実的な選択肢の1つではないか。
 次節アルビレックス戦に向けて、手倉森氏の手腕が問われる1週間となろう。

 まあ、それにしても小林氏はすごい。ちょうど、次に就任する人が決まっていない重要なポストがあるのだが、それに就任していただきたいくらいだ。
 って、今モンテディオが手放す訳はないな。そして、腹が立つ事この上ないが、あの満員のみちのくダービーに、小林氏のようなスーパーな指導者がいた事に素直に感謝しよう。モンテディオのプレイも応援もすごかった。負ける事は快感なのだよな。くそう。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(8) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コバさん、あんまり協会には好かれて無さそう。
福岡のGMクビになったのも、あそこ特有の人事についていけなかったからじゃないかなあ?
Posted by    at 2010年07月19日 21:04
コバさんの指導者としての資質から言っても代表監督は向かないと思います。一応大分サポーターとして観てきた観察からですが…本人も多分、毎日選手と一緒に汗を流して練習できるクラブの監督が魅力的だというような発言をしてた記憶が…余りにショックな負けを紛らわす為に異常に相手監督を褒め殺ししているみたいで格好良くないですよ。それにしても残留の為にはナビスコ負けとけば良かったとならなければいいですね。来年はまた思い出深い大銀ドームで対戦になりそうな予感が…多分、経済キャパからすると東北はJ1に複数維持は無理なはず。今年どちらかが必ず降格のはず。直接対決での完敗した方が落ちる可能性大。現に九州も一年だけ実現した福岡と大分のJ1ダービーも大分が福岡に圧勝して蹴落としましたから…当然蹴落とされるのは…。

Posted by たいすけ at 2010年07月19日 22:00
>異常に相手監督を褒め殺ししているみたいで

この場合はその「名将」がライバルチームを去ってくれれば、
という「算段」を読んだほうがいいんじゃないですかね?
Posted by at 2010年07月20日 01:26
にわかサッカーファンだから、細かいことはよく分からない。
けど、みちのくダービーが、J1という舞台で見れるのは、すごく幸せだなーと思いました。
Posted by at 2010年07月20日 10:10
負けるのが快感
とは羨ましいですね〜
小林さん地元で監督やってくれないかなぁ
Posted by 器用な貧乏 at 2010年07月20日 19:56
実はおいらも、小林監督を次期代表監督にと思っていました。
世界から日本代表をみれば、Jリーグの中での山形みたいな位置だとおもいます。
つまり、小林監督の山形コンセプトが、世界の中の日本代表コンセプトになると思っています。
日本が、ポゼッションで勝てるほど世界は甘くないことは、岡田監督が今回証明してくれました。
協会は、理想論を唱える方がおおいから、現実論の監督は推挙されないでしょうが・・・・。
ただ、山形レベルのチームをJ1に残留させられる監督は、小林監督以外は無理だと思いますが・・・。
Posted by 天邪鬼 at 2010年07月21日 00:42
お邪魔します。モンテサポです。
もひとつ触れてほしいと思ったのは、モンテがリードした終盤に、古橋、下村というJ1で経験と実績のある2人を出して試合をきっちり締めた事です。選手層が厚くなったと勘違いしていまいそうな渋い采配にも感涙でした。
Posted by 蔵王山形 at 2010年07月21日 20:59
たいすけって失礼な奴だな
ここに書きこむべき意見ではないね
Posted by 当事者として at 2010年07月22日 00:06
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