2010年07月24日

次期日本代表強化体制について

 今大会の日本代表への感想は、パラグアイ戦直後に語った事に尽きる。その上で、今回獲得した我々の成果を述べた。
 では、次期日本代表の強化体制はどうあるべきなのか。

 次回の目標はこれしかないと思っている。そして我々は皆が欲深く、あと50年程度の極めて短い時間で、世界のトップに駆け上がろうと思っている。そうこう考えると、次回大会はとても重要だ。なぜならば2大会連続で、上々の成績を収められたならば、世界サッカー界の中でも相応の地位(の隅っこかもしれないけれど)を占めた事になるから。
 したがって、私は次回大会日本代表は「歯を食いしばっても現状維持以上を狙う」と意識して戦うべきだと思う。では、それを目指した強化体制はどうあるべきか。

 ところで、新代表チームの目先の日程概略をおさらいしていこう。
 まず、いきなりアジアカップが明けた2011年1月に開催される。この日程に関するAFCの愚かさは別に述べるが、困った日程だ。欧州の選手をいかほど呼べるのかを含めて、どのような体制で臨めるか(日本、韓国、豪州、イランなど、ベストで臨めない国が多数でそうだ)。難しい大会になろう。その後、夏には招待されているコパアメリカ。通常だと、12年にワールドカップ予選が活性化するまで、公式国際試合はないのだが、ありがたい話だ。そして、13年序盤からのワールドカップ予選と進む。
 いきなりワールドカップに次ぐタイトルマッチが控える非常に難しい日程だ。「ワールドカップ直後だし無理をせずに」と言いたいところだが、私は非常に心が狭いので、8年もの長きにわたって「アジアチャンピオンでない状態」が続くなんて耐えられない。しかも最近は韓国や豪州への対戦成績が非常に悪い。ここは勝ってもらわなければならない(洋の東西を問わずこのような狭量なサポータがチームの足を引っ張るのだろうな)。
 また今回の代表チームの年齢層が案外と微妙で、若返りを含めたチーム作りが案外と難しい。ブラジル大会に向けて、年齢的に相当きつくなりそうなのが、中澤、遠藤、俊輔あたりだが(中澤も遠藤も、まだまだ代表でのプレイを続けると語ってくれている模様だが)、彼らを除く面々は、まだまだ4年後も「やれる」年齢。今回の悔しさを晴らすために、「4年後」を必死に狙ってくるだろう。しかし、彼らは歳をとる。相当数の新しい血を入れなければ「4年後」の歓喜はない。
 
 つまりだ。新監督に要求される事は、困難を極めそうなのだ。
 僅か半年後のタイトルマッチでの成果を期待されている。意気軒昂で経験豊富な20代後半の選手を軸にしながらも、多くの若手を抜擢しなければならない。しかも、多くのサポータは世界のベスト16が現在位置だと確信している。そして、言うまでもなく、よほど日本協会が大胆な日程対応策を打ち出さない限り、情けない程しか強化期間も提供されないだろう。それなのに、「歯を食いしばっても現状維持以上を狙う」に向けて、戦わなければならないのだ。

 まず監督が「誰か」よりも、どのような強化体制を組むかが重要だと思う。
 監督には「現場」を任せるが、その周辺は別な人が責任を持つべきだと思うのだ。具体的には、選手選考と強化試合設定について責任を持つ、監督の上位者である代表チーム責任者(いわゆるGM職)を置くべきだろう。
 そして、その責任者は監督のリクエストに応じて、選手を試合、合宿に招集する。海外クラブとの交渉、Jリーグクラブとの交渉も、すべてその責任者が担当し、そのような雑事から監督を解放したい。たとえば、現実的に水曜日の強化試合招集を辞退し、前後の週末のリーグ戦は出場している選手がいた事があった。たとえば、ジーコ時代には、負傷上がりの選手が辞退してジーコが激怒した事があった。たとえば、日程が詰まると、1つの単独チームからローテーション的に選手を選ぶような手だてを講じる必要も出てくるかもしれない。重要な事は、このような代表チームと単独チームの利害が一致しない場合に調整が的確に行われる事だ。そして、そのような交渉から監督を解放し、現場に専念して欲しいと言う事だ。
 また責任者は、強化試合のマッチメークにも発言権と責任を持つ。現状の破綻した日程下で適切な強化試合を継続するのはかなり難しい。逆に監督としては望まないような試合を消化しなければならない事もある。それらについて、マッチメーク部門に対して、要求を出し、時には否定し、最後調整をまとめる。状況によっては責任者は、代表の強化期間を確保するために、Jリーグとも戦う必要があるかもしれない。そのような交渉からも監督を解放したいと言う事だ。
 そして、その責任者の部下である監督は、上司が準備した環境下で戦う。同時に、責任者は自分が獲得した環境で、戦うべく部下の監督を納得させる必要がある。繰り返すが監督は現場に専念して欲しいと言う事だ。そして、責任者はすべての矢面にも立ってもらう。もし思うような成績が残せなかったら責任者の問題。もし勝てば選手達の栄光(監督には多額のボーナス)。万が一協会上層部が監督を批判した場合など、その上層部とも戦っていただく必要がある。
 私はその強化責任者として、現状の技術委員長(強化担当)の原博実氏は適任だと思う。FC東京監督時代あるいは現状の技術委員長としての言動は、責任感にあふれている。現役時代の実績も申し分ない(監督に現役時代の実績は必ずしも必要ないともうが、代表の責任者は名選手だった事はそれなりに重要だと思っている)。監督時代のガッツポーズ、テレビ解説から与える印象のよさで、一般のサッカー好きの方々からの人気もある。そして、実質的に現在代表選考の任を担当している。この勢いで、選んだ監督が最大限の活躍ができるように、上記バックアップ活動を行って欲しいのだ。

 次に監督はどのような人がよいのか。
 4年と言う期間がある以上は、現状で日本サッカーに対する知識はそれほどある必要はない。また前大会終了時と異なり、どこに向かうかを迷い超大物に方向性まですべてを委託する状況とは異なる。一方で、よほどの日程問題大改革をしない限り、そうは提供できない強化日程。
 「歯を食いしばっても現状維持以上を狙う」ために肝要なのは、まず強力な守備。大変贅沢な要求となるが、今大会岡田氏が作り上げた精緻な組織守備以上の組織守備を築き上げられそうな監督がよい。そして日本が得意の人数をかけた攻めを作り込める人。今大会登場した監督では、たとえばマルティーノ氏、タバレス氏、バイス氏。日本人であれば小林伸二氏。もちろん、彼らでなければダメと言う事ではないですよ(彼らのうちの誰かでももちろんよいが)、彼らのようなスタイルの監督がよいと言っているのです。オフト氏以降の代表監督で成功した人は皆、トルシェ氏、岡田氏と、皆そのようなタイプの監督だった(余談ながら、オシム爺さんはジェフではそのようなチームを作ったが、日本代表ではだいぶ違うアプローチをしていた、その完成形を見る事はできなかったのはとても残念な事だった...が、それを想像するのはまた愉しい知的遊戯なのだが)。
 難しいのは、先日岡田氏の問題点を指摘した際に述べた「長駆型速攻」を狙うべきかどうか。もう一段攻撃力を上げるためには重要なのだが、果たしてそれが将来に渡り日本選手の能力に見合うかどうかの議論は、そろそろ避けて通れないように思う。そう言う意味では、イタリアのトップ的監督(国内の監督であればオリヴェイラ氏的監督)を試してみたい気もするのだが。冒険かなあ。

 もう1つ。代表チームと言うか日本協会に新たなポストを提案したいのだが、これは別に述べたい。こちら(7月24日、21時から2回目放送)で先に述べているので、興味ある人は聞いて下さい。
posted by 武藤文雄 at 18:43| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
選手予想です。4年後も布陣は4―3―2―1だとすると、こんなものではないでしょうか。
川島―長友、闘莉王、吉田、内田―(アンカー)阿部、谷口、柏木(遠藤)―金崎、松井(香川)―本田(森本)。
あと9人は皆さんご自由にお選びください。
Posted by 嵐山 at 2010年07月26日 20:03
極私的になら何が何でも岡ちゃんに全権監督をやってもらいたい派なので監督のが現場に専念できる武藤様の案に一票。
ただし岡ちゃんはくだらない見栄はあっさりと棄てられるけどプライドは人一倍強いので信頼を全面に押し出さないと引き受けてはくれそうもないなあ…。
とゆーワケで、この際監督は誰でもかまわないんだけど、最低限、2008年のウルグアイ戦後に岡ちゃんが打ちだしたフィロソフィーを踏襲し、かつ上乗せしてくれる人材なら無問題ということで。

私もマルティーノやタバレスのサッカーは好ましく思うけど今回に限ってはブラジル人気質でパッシングされそうで少し恐いかも。
それ以前に、日本人気質の中核である恥の文化に基づく魂の在り方を理解してくれるかどうか甚だ疑問ですし。
まあ、若いうちからどんどん海外に出て選手個々が大いにカルチャーショックを受けてくれれば悩まなくても済むんだけど、日本はあまりにも異質な国なので環境に適応できなかったり、あるいは郷に従うあまり日本人の心まで棄ててしまうヒデのような 人 格 者 を量産してしまうというリスクをも伴う可能性もなきにしもあらずなので一概には言えないけど…。

ともあれ、私は武藤様と違って気長な輩なのですが、それでも日本がアジアの盟主じゃないというのはちょっと納得がいかないので、ベストを尽くせる布陣で臨んでほしいものです。
Posted by かまどう魔 at 2010年07月28日 14:11
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