ベガルタは敵地でフロンターレに2点先制しながら、逆転負け。再開後の4試合をで勝ち点僅かに1、16位に落っこってしまった。まだリーグ戦は半ばなので、ビリから3位になってしまった事を嘆く段階ではない。しかし、3試合続けて、ここまで必然的に勝ち点を失う試合を見ていると、さすがに監督を続けていただくかを考える段階には来ているような気がする。
小林監督の策にはまったモンテディオ戦はさておき、以降のアルビレックス戦、サンフレッチェ戦、そしてこのフロンターレ戦。いずれも同じような試合を行い、同じように勝ち点を失っている。手倉森氏がやろうとしているサッカーはよく理解できるが、手倉森氏がどうやって勝とうとしているのかが全く理解できないのだ。
序盤からフロンターレに押し込まれたベガルタだが、しっかりとした組織守備で粘り強く戦い、決定機を与えぬまま前半が継続。そして前半半ば、右サイドをうまく崩しフェルナンジーニョが抜け出して強シュート、GKに防がれるも、朴成鎬が拾い中央関口に合わせ、関口が見事な個人技から先制段を決める。このあたり、フロンターレの大柄なCBはフェルナンジーニョのすり抜けに苦戦、先に失点した事で明らかに混乱し始め、幾度か好機を掴む事に成功。そして、GK林のロングパントからフェルナンジーニョが抜け出し、2点差とする事に成功した。
当然、フロンターレは前に出てくる。そして40分、ルーズボールを関口が稲本に老獪に奪われ、全くフリーの憲剛の高速パスから崩され、楠神の中継からジュニーニョに見事に決められ1点差とされて前半終了。関口のミスと言うよりはフロンターレの名手達の巧さに恐れ入った場面だった。
後半序盤はフロンターレの猛攻をしのぐ展開となる。前半は猛威を振るったフェルナンジーニョだが、フロンターレ守備陣もさすがに対応を工夫し始め、一発で抜かれないようにディレイをかけ、前半のように突破はおろかボールキープも叶わなくなる。朴成鎬は大柄だが、後方からの高いロングボールを収めるのは不得意なのは既にわかっている事だ。しかし、林もエリゼウも高いボールを前線に蹴り続ける。かくして、せっかく奪ったボールを簡単にフロンターレに提供し、再三猛攻を受け続ける事となった。次第に千葉も富田もルーズボールが拾えなくなり、関口も梁も憲剛のマークを意識せざるを得ないので、いよいよ押されっぱなしになる。あれだけ押し込まれて、後方の選手がロングボールを蹴り続ける事にも、各選手の動きにも変化がなく、選手交代も行われない以上、手倉森氏はあの状況のまま事態が進んで守り切る事を期待していたとしか思えない。しかし、世の中そううまく運ぶ事はない。中盤で梁のミスを拾われ、憲剛の完璧なスルーパスから黒津に決められ同点となった。
優勝候補のフロンターレに対し、敵地で後半半ばで同点。ここからの手倉森采配はまたすごかった。朴成鎬に代えて中島、フェルナンジーニョに代えて太田を起用(太田投入以降は関口がFW的ポジションに)、富田も梁も押し上げて猛攻を仕掛けたのだ。中島や関口が決定機を掴む。しかし、反対側のゴールではフロンターレも幾度も決定機を掴むが、林を軸にかろうじてしのぎ続ける。そうこう落ち着かぬ流れの中で80分過ぎ、中盤のルーズボールを拾いに入った千葉の足がもつれたところからの速攻、レナチーニョの強シュートを1度は林が止めるも掴み切れず、谷口に詰められ、とうとう逆転を許す。その後は、フロンターレが全軍で落ち着いてボールキープをまじえて試合をクローズ。悔しい逆転負けとなった。
ここ3試合、みな同じだ。
前半は組織守備も機能、コンパクトで稠密な守備を見せ、梁とフェルナンジーニョを軸にした鋭い速攻で敵を崩す事に成功。3試合の先制点はいずれも非常に美しい得点、今のベガルタは前半ならばJのどのチームも崩し得る攻撃を行えるレベルまで到達したのではないかと自惚れたくなるくらいだ。
そして後半、この蒸し暑い季節だ。次第にいずれの選手も消耗していく。そうなると、組織的に守り切れぬところが出てきたり、選手のミスからの速攻を許したり、軽卒なファウルが出たりして、残念な失点を繰り返す。しかし、手倉森氏はそのような守備選手達の苦労は一切気にせず、前線の選手を入替え、後半半ば以降に強引に仕掛ける事を狙う。かくして、ラインは間延びし、ベガルタも決定機なり好機をつかむが、敵にも決定機や好機を提供する、切り合いの試合を演じる。最後はきっと運のよいか、敵陣前で決定的なシゴトのできる選手がいるチームが勝つのだろう。な〜んて事はあり得ない。無理攻めは、どうしても勝ちたいチームがやる策で、その分リスクが高まる。したがって、毎試合無理攻めを繰り返せば、トータルでは勝ち点を失って行くだけなのだ。サッカーとは不条理な競技で、多くの場合は陰険に守備を固めるチームが勝ち点を重ねる確率が高い。まして、戦闘能力で必ずしも優位とは言えないチームが、無理を繰り返せば、勝ち点を失う確率は飛躍的に高まって行く。
ちなみにこの日のフロンターレ高畠監督の交代策を振り返ろう。同点に追いついたところで、ベテラン稲本に代えて守備力の強い横山を投入し、チームを落ち着ける。ベガルタが無理攻めをしてきたところで、順次レナチーニョ、谷口と、前線で個人能力で何とかできる選手を投入。決勝点はこの2人によるものだった。それに対し、手倉森氏は前線の2人の交代を先に行ってしまい、後方の選手の疲労を放置。逆転される時間帯には朴柱成、千葉、富田の3人はほとんど動けなくなっていた。逆転後に投入された高橋義希は、相変わらず好調でよくボールに触り、中盤を活性化させたが5分間でやれるシゴトは限られている。
手倉森氏が作ろうとしているチーム、狙っているサッカーは非常にすばらしいと思う。全体をコンパクトにして、組織的に守備をする。速攻も人数をかけて揺さぶる。昨年の天皇杯で多くのJ1チームを悩ませた「人数をかけた速攻」はますます冴え、上記した通り、相当な確率で得点を奪えるチームができつつある。
しかし、手倉森氏がどのようにして勝ち点を積み上げようとしているのかが、私にはさっぱりわからない。千葉や富田が消耗したら、義希や斉藤を起用すればよい。中島を前線に起用するならば、今日のように無理攻めを狙わせるのではなく、憲剛をつぶす役回りをやらせる事もできたはずだ。同点に追いつかれるまでの時間帯、平瀬をいれればうまく後方の選手から引き出してくれた事だろう。広大を復帰させて鎌田を千葉の代わりに使う手だって考えられる。梁と関口にあそこまで無理をさせる狙いは何なのだろうか(関口を日本代表に入れるために敢えて試練を与えているのか?!)。勝ち点を積み上げるためには、90分間しっかりと守り切る事が何よりも肝要なのだ。
手倉森氏はいくらでもカードを持っている。それなのに、どうして毎試合毎試合前線の選手ばかり入れ替えているのだろうか。そして、前線の選手を入れ替えて終盤強引に攻める事で勝ち点を重ねられると思っているのだろうか。狙っているサッカーがよいだけに、そしてそれなりの形になっているだけに、勝ち点を積む事への無策が、あまりにも残念なのだ。
我がベガルタは決して経済的に潤沢なクラブではない。シーズン途中に監督を交代するような贅沢は、相当な重い決断となる。そして、その監督が勝ち点積み上げには無策でも、よいサッカーを指向しているだけにその決断は一層重いものになる。簡単な話なのだ、手倉森氏が普通の監督のように、勝ち点獲得に貪欲になってくれさえすればよいのだが。
2010年08月01日
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運動量を要求するサッカーは、弱い相手なら
終盤ごまかしが効きますが、J1上位レベルには
無理だってコトです。
もう一点。こんな時期だからこそ
『専守防衛』が如何に難しいか、サポ・ファンの
皆さんに理解して欲しいと思います。
オシムの言葉を錯覚して捉え、守備的という
コトバで片付てしまって、それが簡単に実現
できてしまうような雰囲気・・・。
高度な組織、ピッチの選手に心の強さを要求する
戦術が、簡単に実現できないことを学習する
良い時期だと考えます。
そのうえで「スリリングな戦術」を求めるのか
「リスクの少ない戦術」を求めるのかを議論する・・・。
そういう応援体制になる事を希望します。
追記
今となっては後悔先に立たずですが、
鈴木淳氏を大宮に奪われたのが残念です。
方法もありますし、それは練習でもやっている
ようですけども…思い切ってそうしても良かった
かなーとは思いますね。
ただ、勝ちが無い状態でチーム全体が勝ちに対して
渇望している状態なのかもしれませんね。
それに予定調和的な交代策もハマれば方程式として
成り立つんですけども…もっと大胆な起用法も
そろそろ考えてもいいのかもしれませんね…
次まで1週間。どういう修正をしてくるかという
部分で注目ですね。
もう言ってもいいと思います。今期の目標は残留でいいです。なのでボランチの使い方を是非とも再考してください、監督。