2010年08月18日

あらためて原博実氏に期待する

 日本代表監督の選考が遅れているとの報道が出ている。
 たしかに、9月4日、7日に有料国際試合を企画し、既にチケット発売が始まっている。日本協会としては、現在日本国内で指揮を執っていない外国人監督を雇用しようとしている模様。とすらば、もし今後速やかに新監督と契約が成功したとしても、4日のパラグアイ戦より前にその新監督がJリーグを視察する時間などないだろうから、初采配の試合は選考する選手をほとんど知らずにぶっつけ本番で臨むしかない。まあ、現実的には褒められた状況とは言えないだろう。
 で、日本協会としても「商売」を考える必要もあり、また(パラグアイ戦に間に合うのかどうか不明だが)新監督に従来の中核選手と接触する機会を作る必要もありで、欧州でプレイする選手をパラグアイ戦に向けて招集しようとしている模様だ。果たして長谷部や本田圭佑のように自クラブで完全に「地位を確保」している選手ならばさておき、今夏に新たに欧州に参戦した選手を、このタイミングで代表に呼ぶべきかどうかは、議論が分かれるところだろう。
 ただし、現実的に新監督選考がやや遅れているのは仕方がない事にも思える。以前も述べたが、次期代表監督に要求されるシゴトは決して簡単なものではないからだ。「わずか5ヶ月後のアジアカップに優勝しろ」とか「4年後は今回以上に悔しい敗戦を」など、私のような偏狭なサポータの要求レベルは極めて高い。もし、原博実氏も同等の要求を新監督候補にしてくれるとすらば、候補氏が当方からのオファーを受けるかどうかについては、相当な熟慮、熟考が必要だろうから。
 急に代表監督を決めなければならなかった事例として、しばしば2年半前にオシム爺さんが倒れて、岡田氏が招聘された時と比較されるが、今回はあそこまで急ぐタイミングではない。あの時は、Jは完全オフに入るタイミングでオフ明けのワールドカップ予選に臨まなければならなかった。当時は時間が全くなかったのだ。
 しかし、今回は状況が異なる。もしパラグアイ戦に新監督が間に合わないとすれば、興行的にはみっともないし、プロフェッショナリズムの面から見ても情けないし、そして何より「何のための試合だ!」と非難される事になる。間に合って欲しいものだと思っている。けれども、拙速に事を進めるべきでないのは、それ以上に間違いない事だ。上記の目標を達成してくれるだろう優秀な監督と、適切な契約を結ぶ事を最優先すべきだろう。また、2年半前の代表はオシム爺さんが長期計画でチーム作りを進めている最中だったために完成度は決して高くなかったのに対し、今の代表チームの完成度は非常に高い。フィジカル面、メンタル面での調整は厄介だが、短期的にアジアカップまで現状のチームの延長線上で戦うのは、非常に現実的なやり方だ(もちろん、全く正反対のやり方として、早々に若返りを進めるのも一策である)。
 だいたい国内の親善試合で、どこまでおもしろい試合が期待できるかと言う問題もある。過去酒精メーカ殿のスポンサシップにより国内で何試合も国際試合を愉しませていただいてきた訳だが、過去10年間それらの試合が十分におもしろかったかと言うと、非常に微妙なものがあるではないか。トルシェ氏も岡田氏もオシム爺さんも、この手の親善試合に「手を抜いた」とまでは言わないが、明らかに「テスト重視」の試合をしていた。そう言う試合はどうしても緊張感に欠けたのは言うまでもない(そうでなく、おもしろい試合もあったのは確かだが)。そういう意味では、代表の親善試合のおもしろさは、時にJリーグの1試合1試合の足下にも及ばない事がよくあるものだ。もっとも、ジーコ氏だけは唯一、これらの試合にもベストを尽くそうとしていたように思えたが(ただし、残念ながら都度ジーコ氏は、氏の「脳内ベストメンバ」に拘泥したために、体調のよくない選手、調子を崩している選手、連携が熟成されていない選手が多々起用され、空回りの試合が多かった)。などと、試合前に語ってはいけないのかもしれないが。

 ただしだ。
 私は原氏に2つの事を実行いただく事をお願いしたい。
 1つ目。早急に1月のアジアカップをどう戦うのか明言して欲しい。もちろん私の希望は上記の通り「優勝宣言」だ。そして、原氏も同じ事を述べてくれる事を節に希望する。しかし、そうではないやり方もあるだろう。その場合はその場合で、どのように戦い何を目指すのか、本大会まで半年を切った現状で、それを強化責任者が自分のことばで語るのはとても重要だ。そして、その宣言を実現すべく新監督に適切な強化環境を提供するのが、原氏の責務となる。
 2つ目。新監督が決定した暁には、その選考理由を、やはり自分のことばで語って欲しい。そして特に、新監督が噂されている通りに外国人になったとするならば、「なぜ、現行の日本人監督より、新監督がよいと判断したか」を説明して欲しいのだ。今回の岡田氏の成果で、我々は同国人の監督の能力が他国と比較して劣るものではない事を確認できて、安堵する事ができた(具体的にはアテネ五輪や北京五輪の失敗が、ある種のトラウマだったとも言える)。とすらば、次期代表監督に日本人監督が候補に挙ってもよいはずだ。Jリーグで秀逸な成果を挙げている監督達にとって「代表監督」は1つの目標であって欲しい。だからこそ、日本協会の代表強化責任者の発言は重くあるべきなのだ。

 アジアカップのライバル達の動向。韓国は趙広来氏を起用してきた。あの85年に「これ以上忌々しい敵がいるのか」と思わせられた「韓国代表史上屈指の悪い記憶」を残した選手だ。あの顔を見ただけで腹が立ってくる男だな。豪州は、なんとオジェク氏。前向きにとらえるとレッズで堂々とACミランと対抗した監督とも言えるし、後ろ向きにとらえるとカナダ代表時代にはチンチンにしてやったとか、07年シーズン不要なメンバ固定でレッズの連覇に失敗した監督とも言える。
 我々は誰とともに戦って行くのか。原氏の手腕に期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
岡ちゃんから始まって、トルシエ、ジーコ、オシム、そして岡田氏まで、僕が知る限りのこれまでの日本代表監督選考過程は、『早く決めちゃわないと格好付かないから』と、ビジョンよりも体裁第一で選考が進んでしまっていたような。

そんな選考過程でしか進められない日本サッカー協会に、とてもとても不満を感じていました。


なので、今回の選考過程に対しては、『今までと違って、遅い』というただそれだけで、今までに感じたことのない期待、好感を持ってますし、小倉純二氏に対しても、同じように期待と好感を持ってます。


もっとも、“Jリーグを築いた男”や“レッズを叩き上げた男”に対しても、最初はかなり期待してましたが。。。
Posted by 木村カズ at 2010年08月22日 00:20
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