ベガルタはライバル湘南ベルマーレに勝利し、2連勝。ビリ3を脱出するのに成功した。まあ、そうは言っても、同勝ち点に4クラブが並び、得失点差僅かに1差でビリ5になれただけなのだけれど。最終節まで、このような争いになっていて得失点差1で抜けたら歓喜跳躍だろうが、今は「やれやれ」以外の感情は湧かないな。
ベルマーレには少々失礼な言い方になるが、ベガルタにとっては数少ない同格と言える相手とユアテックで相対したのだから、確実に勝利したい試合だった。しかし、逆から見れば事情は先方とて同じ事。ある程度の確率で勝ち点3を獲得できる貴重な試合であり、率いるのはあの反町氏。どんなケタグリをしかけてくるかわからない忌々しい監督だ。ある意味では「最も厄介な相手」との試合とも言えた。試合内容はさておき、そのような厄介な相手に何とか勝利できた事を素直に喜びたい(って、全然素直に喜んでいる態度ではないな)。
ともあれ、厳しいリーグはまだまだ続く。まあ、だからおもしろいとも言うのだけれども。
では、ベガルタの今後はどうなるのだろうか。私は楽観、悲観いずれもが交錯しながらシーズン末まで進んで行くのだろうと見ている。それは手倉森監督が、実にユニークな監督ぶりをしているからだ。
氏のチームを作る姿勢は見事なものだと思う。
氏就任以降の3年間の積み上げが奏功し、ベガルタのチームとしての基盤は非常に安定している。勝ち星が稼げない苦しい期間中にしても、チームが大崩れしなかったのは、その基盤安定の賜物だろう。
また、つい最近加入した赤嶺が最もよい例だが、フェルナンジーニョ、鎌田、太田、高橋義希と言った今期の新加入選手が、皆完全に戦力化し、いずれも重要な選手として機能しているのも、上記した基盤安定に加え、氏が各選手の特長を的確に評価して、その基盤に適切に新戦力の選手を適応させているからだろう。
また、梁、関口、菅井、富田と言ったJ2でトップレベルの実力を発揮した働き盛りの選手が、初めてのJ1でも(菅井は前のJ1時代から在籍していたが、出場機会はなかったので、やはり初J1と言うべきだろう)、堂々とその個人能力を発揮しているのも、チームとしての基盤がしっかりしていて「やるべきシゴト」が明瞭だからだろう。
「チーム作り」と言う視点からは、私は手倉森氏を高く評価するものである。
しかし、だ。
あの、マイペースと言うか、能天気と言うか、自分の都合しか考えないと言うか、采配振り(選手起用)はいかがなものだろうか。以前から再三愚痴を語っているが、必ずしも戦闘能力が秀でているとは言えないベガルタだ、勝ち点を確保するためには、もっと執拗に貪欲にあるべきだと思うのだ。典型的なのは、等々力でのフロンターレ戦、2−0から2−2に追いつかれ、そこから強引に攻め込みにいって、とうとう逆転された試合。中村憲剛に「自分に対してあそこまでルーズな守備をしてくるとは」とはバカにされた(まあ憲剛本人も、当方のいい加減な守備振りに逆にプライドが傷ついたから、あそこまでアケスケに語ったのだろうが)のは、忘れ難い屈辱であろう。同様にユアテックで、グランパスに対して0−1でリードされて、無理攻めをしかけ同点に追いついた後も同じペースで攻め続け、闘莉王とケネディにやられた。いずれの試合も、格上の相手にセオリーを無視して乱戦で臨み、理屈通りに敵のスタア選手にやられたのだから、情けない。
また、ユアテックでのアルビレックス戦やサンフレッチェ戦では、ペースを握って攻め込んでいるが、次第に中盤選手がこの暑さに消耗しているのが、誰の目にも明らかなのにそれを放置して、終盤失点をして、勝ち点を失ってしまった。逆にこの2連勝における充実した斉藤、その他を含めたいずれの試合でも終盤起用されて冴えたプレイを見せてくれる高橋義希のような、優秀な中盤のバックアップがいるにもかかわらず、千葉と富田(もちろん、この2人のプレイはすばらしいのだが、残念な事にこの2人とも超人ではない、この高温多湿下においては、さすがに終盤動けなくなるのは仕方がない)を疲弊ギリギリまで引っ張ったが故の、勝ち点ロスだった。
これらの試合を典型例に、何とも淡白に勝ち点を失って来たのが今期のベガルタなのだ。
そして、ここに来ての2連勝。前節はアルディージャの不出来をうまく突き、点差を付けてしまって押し切った。今節は戦闘能力的にやや劣るベルマーレを攻め付け、梁と中原の個人能力で振り切った。しかし、手倉森氏の采配(選手起用や交代策)が、改善されたとは思えない。相変わらず、高温下で選手が疲弊しているのを放置する采配振りは何も変わっていない。ベルマーレ戦は、赤嶺が削られて交代枠が1枚減った事もあったが、ロスタイムまで義希起用を我慢する意味があったのだろうか。アルビレックス戦は、後半半ばに3−0になっただから、試合から遠ざかっているエリゼウを起用して守備を固めるなど、色々な手だてがあったはずだ。
結局、守りを固めるでも無く、選手の疲労を考慮するでも無く、漫然としたマイペース采配は継続していると見る。
と、文句を言っても始まらない。
決して豊かな財政事情とは言えない、我がベガルタである。ここまでしっかりとチーム作りをしてきてくれた監督を契約途上で解雇する余裕などあるはずはない(まあ、腹が立つ事が多いのは否定しないが)。また、手倉森氏より、優秀な監督は、そう多数はいない(と思う)。そして何より、我々は日本協会とは異なり、自由自在に優秀な監督に声をかけて誘えるようなクラブではないのだ。
何とも言えないユニークな監督振りを見せてくれる手倉森と共に、残り13試合をたっぷりと堪能していきたい。氏の作って来たチームは決して弱くない。次第に暑さが収まってくれば、氏の采配がマッチングしてくる可能性もある(と思う)。そして、我々には梁も関口も菅井もフェルナンジーニョも赤嶺も中原も太田もいる。終盤の苦しい時には、きっと平瀬もやってくれるはずだ。どんな難しい守備ラインをも崩すチーム力はあるはずなのだ。上記の通り中盤の選手層も上々だし、後方の組織守備も決して悪くない。あくまでも「上」を見据えて、しつこく丁寧に戦い続ければ、十分に中位進出の可能性はある。
やはりJ1は愉しい。
2010年08月29日
この記事へのトラックバック
> まあ、そうは言っても、同勝ち点に4クラブが並び、得失点差僅かに1差でビリ5になれただけなのだけれど。
勝ってるだけいいじゃないですか。
こちらは監督未経験者に舵取りを任せて、牛歩のような内容の改善を信じなきゃいけない立場でございますよ。手腕自体は可能性を感じさせるのですけど、このタイミングでは苦しい……。
とりあえず、折り返しも過ぎました。そちらの不幸を祈りつつ(!)頑張ります。
試合内容云々よりも勝ち点3獲得の嬉しさが文章からにじみ出ていますね(笑)
たまにはエスパルスのことも宜しくお願いいたします!
サッカー専門誌では「理に適った采配」だそうです。
ほんとサッカーって面白いですね。
待ってますから来年♪