2010年09月07日

グアテマラ戦雑感

 本作文中に、楢崎が代表引退を表明したとの報道を知った。まだ34歳、GKとしてはこれからだとも思うのだが。とは言え、13年間代表GKとして活躍。02年の地元大会での颯爽とした活躍、04年の敵地チェコ戦での神業、そして昨年本大会出場を決めた敵地ウズベク戦の堂々たる守護神振り。幾度も名場面を思い出す。今後もグランパスで、あの完璧な守備を見せてはくれるとは言え、やはり寂しい。
 本件については、色々な思いが錯綜してすぐにはまとまらないが、この機会に何とか代表GK論を整理したいと思う。それにしても、こんなに早く、楢崎も川口もいない代表チームを見る事になるとは、思いもしなかったな。
 長い間、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。豊富な経験をグランパスで活かしてくれる事を期待します。

 グアテマラ戦に移ります。

 序盤の猛攻がよかった。
 森本の動き出しを、グアテマラDF陣が捕まえられない。1点目は香川による左サイドの崩しから長友が抜け出し、(ただ1人ペナルティエリア内に進出していた)森本にピタリと合わせた。森本のこの手のセンタリングへの対応の巧さは、正にJデビュー以来だが、先日文句を言った長友のセンタリングがピタリと決まったのは嬉しかった。その後も森本は細貝のスルーパスから抜け出し決定機を掴むなど、冴えた動き出しを見せる。そして本田との見事な連携から抜け出した香川のこぼれ球を見事に詰めて2点目を決める。パラグアイ戦では、強力なCBコンビに完全に押さえ込まれた森本だが、この日の敵3DFとは相性もよく、再三動き出しと位置取りのよさから「これぞCF」と言うプレイを見せてくれた。敵の力が落ちれば力を発揮できると言うのは決して悪くない。セリエAの厳しい環境を打破すれば、本当の世界トップのストライカになれると言う事なのだから。
 序盤の本田と香川の距離感もとてもよかった。2人は、橋本の素早い球出しと細貝の運動量に支えられ、長友と駒野の巧みな飛び出しを巧く活かし、自らも前線に飛び出し好機を演出した。この2人の組み合わせと言うと、約2年前のこれとかこれを思い出す。2人とも当時を思えば大出世したものだなと。この2人については、今後も色々と書く事がありそうだが、憲剛と言う「ボス」がいなかったこの試合の2人の連動がどこまで充実するかが、我々とザッケローニ氏の喜びに直結して行くのは間違いないだろう。

 ところがだ。 ここまで、軽妙なボールさばきで中盤を支えていた橋本の軽卒なミスから、1点差にされる得点を許すと、快調なペースは終わりを告げた。この失点で、グアテマラが息を吹き返した事、序盤からの猛攻で日本が一息ついた事による。ここまで橋本は、ちょっとボールをさらしながら、実に見事なステップで敵のアプローチを外して、香川なり本田に展開するなど、非常に利いたプレイをしていた。しかし、その勢いでのプレイが裏目に出たと言う事だろう。橋本はその後も素晴らしいプレイを演じたのだが、試合終了間際には似たプレイからボールを奪われ、強烈なミドルシュートを許した(楢崎の代表での最後の大仕事で救われた)。調子がよく意欲的にプレイしたが故に、2つのミスが生まれたようにも見えた。これだけのベテランでも、プレイのバランスを取ると言う事は難しいのだろう。本当にサッカーとは厄介なものだと思う。
 また、乾の消極的なプレイは残念だった。この選手の持ち味は、強引にグイッと入って行くドリブルにあるのだが、明らかに他の選手への遠慮が見られた。結果、持ち出せばよい場面でパスを選択する事が多くなり、持ち味を発揮できず、前半で交代となった。原代行監督、結構厳しい。

 後半、乾に代って藤本が、長友に代って永田が、それぞれ起用され、槙野は左サイドバックに入る。
 藤本は先日のパラグアイ戦でも今一歩だったが、この日も明快に活躍できず。右サイドから左利きのメリットを生かして内側に斜行する特長を、チームメートに覚えてもらう事から再スタートが必要か。そのためには、これまで以上にエスパルスで圧倒的なプレイを見せる必要があるのではないか。
 永田は岩政と併せ、可も無し不可もない出来。グアテマラが、強引に中盤を抜け出した少々無理なミドルシュートばかり狙う攻撃だったので、時に上がってくる強引なロビングだけ落ち着いてはね返せば問題とはならなかった。彼らの評価は、10月の準備試合だろう。ただし、槙野を左サイドバックにしたのは失敗。長友と比較する気はないが、左サイドから強引に前進しても、抜け出しやクロスに型を持たぬ選手が国際試合で活躍するのは難しい。槙野自身が活躍できなかったのみならず、後半チーム全体が機能しなかった大きな要因となった。やはりこの若者はCBが向いていると思うのだが。
 後半に入り、中盤選手の運動量が落ちると、前半のように派手に攻める事が叶わなくなる。これはもう仕方がない事だ。月並みだが、結局日本が国際試合でよさを発揮するためには、技巧と判断にすぐれた選手が、よく動いて連動する事が必要なのだ。それをごまかすような高等戦術を身につけるのは、もう少し先になりそう。
 それでも終盤起用された岡崎と憲剛が、よく攻撃を引っ張り、そのまま2−1で試合終了。まあ、やれやれ。

 この2連戦。大きな大きな収穫が3つあったと思う。
 1つ目は先日も述べた、「代表への期待」、「代表の権威の自覚」みたいなものを、再び我々サポータが持つ事ができた事。これの理由が先日のベスト16にあった事も、先日述べた。
 2つ目は香川だ。この選手については、改めて講釈を垂れたいが、元々「将来性最高」と言うくくりで語られる事が多かった。ところが、この2試合、完全に「化けた」感を印象として受けた。まずはドルトムントでの活躍を期待したい。
 そして3つ目は細貝。この2試合で選考されたメンバで、2試合180分間プレイしたのは、細貝のみ。そして、広範な運動量、周囲をよく見る能力で、見事にチームを支えた。このシリーズのMVPと言ってよいだろう。阿部のイングランド移籍に伴い、レッズでも格段に存在感が高まっている今、一気にレベルアップして行く事を期待したい。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(7) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
楢崎の代表引退は残念ですね。
私もゴールキーパーとしてはまだまだいけると思うんですが。
Posted by サッカーファン at 2010年09月08日 04:37
失点につながったボールロストは、本田のパスが弱かったような・・・。詰めてきた相手の体勢のほうがよかった。あれで橋本を責めるのは酷かと思います。試合終了間際のミスは大チョンボでしょうが。
Posted by サンガファン at 2010年09月08日 10:39
久しぶりに長居での代表選を楽しみました
森本の2点にからんだのは香川・長友・本田ですがそこに汗かいてボールを供給し続けた細貝は良かったです
橋本は吹田サンなので論評しません(笑)
でも乾貴士はビビりなんです(笑)
セレッソでの1トップ3シャドーがセクシーフットボールの申し子には合っているんですがこの日は家長がいない
自分でも家長を差し置いての代表に戸惑ってるかもですね
香川家長乾の3人を代表で見たいですが贅沢すぎとわかっています
さて世界の香川に大きく育ってもらえるようガンバレ〜〜
Posted by ロベルトヤマ at 2010年09月08日 11:56
武藤さんは褒め称えてますが、森本は今のままじゃ、ただ裏への飛び出しが得意なFWで終わってしまいそうだ…
Posted by トゥーレ at 2010年09月08日 22:11
楢崎選手の代表引退はほんと残念です。
しかし去り際の彼なりの考え方が、らしくて素敵でした。
楢崎は代表での活躍もさることながら、五輪オーバーエイジでの若手を言葉でなく
プレーで引っ張っていた姿が忘れられません。

代表GKの講釈楽しみにしてます。
Posted by とし at 2010年09月08日 22:21
楢崎は本当にお疲れさまでした、ですね
キックの精度が、今の若手に比べると劣るのと、ときどき大事なところで印象に残るミスをやってしまう不運さを背負った、けれど間違いなく名GKでした

特に1対1での強さは尋常ではなく、普通のFWであれば、1対1でも半分くらいは止められちゃうんじゃないか、というくらいでしたね

横浜フリューゲルス時代、マザロッピGKコーチ(キックの名人!)の薫陶を受けて成長曲線を描いていった様子が思い起こされます
Posted by Dortmund06 at 2010年09月09日 14:40
「橋本の軽卒なミス」

これは「軽率」じゃないですか?
Posted by 匿名 at 2010年09月15日 11:30
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