ところで、誤解しないで欲しいが、本エントリの目的は8人制と11人制の比較、あるいは是非の議論ではない。私は基本的には8人制化に賛成だが、それについては前回述べた。もちろん、既に決定はなされたものの比較、是非の議論が継続される事自体はおかしい話ではない。
けれども、日本代表(あるいはベガルタ)サポータとしては「成功か否かの結論は極めて長いレンジでしか評価できない」話であり、底辺少年指導者としては「来年に迫っている制度改変にいかに対応するか」が重要である。したがって「是非は問わない、まずは対応だ」が、現状の本件に関する私の基本的立場である。
以下、私が地域の少年委員会ルートから聞いた話から、いくつか現実的な問題を要約する。
まず、全国少年大会(この夏もテレビの都合か何かしらないが、灼熱の昼間に決勝戦が行われた大会の事です)の本大会も予選も、8人制にするのみならず、前後半での交代を義務つける案があった。日本協会筋から出た案らしい。
この案には、
○11人から8人の人数削減をカバーできる、
○16人と多くの選手の出場が確約される、
○選手の過労を防止できる
などのメリットがあるが、残念ながら致命的な欠点がある。
日本中ほとんど多くのクラブでは最上学年はおろか、5年生を含めても16人+αの人数をそろえるのは簡単ではないという事だ。もし、この案を採択すると、チーム間の戦闘能力差が広がる一方になる。あまり戦闘能力差が開いた試合は、勝負の面でも強化の面でも意味が薄くなるし、そして何より「やっている少年達の愉しさ」と言う面で問題がある。
協会からの強制で、このような方策が選択されたら、多くの少年達も父兄も指導者達も不満を感じるだろう(まあ父兄や指導者の不満はどうでもよいか)。結果的に今日までに築き上げられた日本サッカーの広大な底辺を損ねる恐れががある。少なくとも神奈川県では予選大会でこのやり方は不採用にする模様だ。
1つのクラブから複数のチームを出せるようにすると言う案もある。戦闘能力差が開く可能性は同様だが、これは前後半総とっかえよりは現実的だ。なぜならば、各クラブ側に選択肢があるから。複数チームを出したくなければ1チームだけの出場にすればよい。どうやら神奈川県はこちらを選択する方向を模索している模様だ。
けれども、現実には問題山積である。まずチーム数が増えれば、それだけ試合数が増え、運営側の負担も増加する。事務側の仕事量も増えるのも大変だが、何よりグラウンド確保が最大の問題となる。実はグラウンド確保については、チーム数贈とは別な問題もある。多くの小学校のグラウンドは安全のために固定式のゴールが装備される場合が多い。当然ゴールは従来の11人制に対応して固定されているから、そのようなグラウンドは、8人制の大会そのものを実施できない可能性もある。すると、今以上に確保できるグラウンドが減るのにかかわらず、チーム数が増えると言う、実に難しい方程式を解く必要がでてきてしまう。
チーム登録の問題もある。たとえば、あるクラブがAとBと複数のチームを出して予選に出場、チームAが全国大会に出場したとして、全国大会で(予選で敗れた)チームBでプレイした選手は全国大会でチームAとしてメンバ入りできるのか?常識的にはダメだろう。しかし、そのクラブにおいて、予選時点でのチームAが1軍、Bが2軍だったとしよう。そして、全国大会に向けてチームBのエースが大きく成長したとしても、全国大会で一軍には入れなくなってしまう。もちろん、このあたりはルールに従って意思決定を行っていく以外の方法はないのだが、そう言った明文化規定を準備するのは、結構時間がかかるし、難しい。意見が分かれるところも少なくないはずだ。あと半年で、日本協会、地方協会共に納得できる明文化規定を作成しなければならないが、間に合うのか。
審判の確保が問題なのも言うまでもない。試合数が増えると、審判の確保(具体的に言うと各チームに帯同する審判の確保)が重要になる。日本協会は「主審1人で試合の面倒をみて、選手にセルフジャッジができる自主性を期待したい」的な事を言っている。しかし、私はこのやり方には根本的に疑問を持っている。まずラインに貼り付く副審がいなければ、ラインを割ったかどうかの判定が実質的に不可能なのは言うまでもない。
さらに、実際に8人制の試行試合で1人審判を行うと、すぐに矛盾に気がつく。と言うのは、現状の3人審判のやり方は主審が(守備陣から見た)右サイド同士を結ぶ直線を対角方向に動き、副審に(守備陣から見た)左サイドの判断を手伝ってもらうもの。ところが、副審がいなければ、(守備陣から見た)左サイドの判定を的確にするため、右サイドに貼付けず中央に寄りがちになる。ところが、そこでサイドチェンジを出された瞬間に、もうオフサイドを見る事は絶対にできない。したがって、かなりタッチ沿いに近い(守備陣から見た)右サイドに貼り付き、攻撃のエンドが変わったら爆走して逆エンドの(守備陣から見た)右サイドに動くと言うやり方を継続しなければならない。そんな芸当、私のようなオッサンならばさておき(要は判定ミスをしても、堂々とした態度を貫く、ふてぶてしさがある)、一般の少年団を率いる(若い)指導者にはかなり厳しい要求だ。
加えて、「セルフジャッジ」を若いエリートタレントに求める理屈がよくわからない。たとえば、ラインを割ったかギリギリ、オフサイドかどうかギリギリ、と言ったプレイに対して、自分から「相手のボールです」と叫ぶ選手を育成するのは重要なのだろうか?実際にプレイすればわかるが、ラインを割ったか、オフサイドかオンサイドかなどは、ギリギリのプレイと絡まると、わからない。そう言う時に、「ラインギリギリのはずだ」と楽観的に最後までプレイを続け、第3者に必要事を主張する選手の育成の方が、よほど重要ではなかろうか。
以上「8人制の積極採用」を行おうとした場合の現場での弊害を列記した。現場への落とし込みがいかに厄介なプロジェクトか、理解いただけただろうか。とは言え、「ダメだ、ダメだ」ばかりでは進歩もない。一連の矛盾を乗り越えて、理想に近づくべく、底辺は底辺で活動を推進するのが重要なのだろう。
ふてぶてしさより、体力がもたないですよ>審判
おっさんはもちろん、若者でも正確な判断は無理。
というか、正確な判断は求めないそうです。>セルフジャッジ育成???
正確な判断を求められない審判というのもなぁ。。。
周知の通り、無茶苦茶トップダウンの組織(発表もT氏のフライング)なので、
現場からの声が大事かと。
というより、私の楽しみ(4種の副審)を奪うな ^^;
どうも協会は、何か制度等を変更するときに、問題点を把握できていなくて、実現のために克服しなければならない課題が明確になっていないようなきがしますね。
大人の方がカリカリしすぎ、余裕なさすぎ。
ジャッジに大人げなくキレてるのはだいたい親。
年間を通したリーグ戦を各地で行えばいいと。
リーグ戦こそが選手を成長させる。という強い意志が感じられます。
8人制、1人審判、複数チーム、サイズ...ルールはアバウトでもよし。とにかくゲームをしようってことらしいですね。
3種の高円宮も将来的は廃止の方向らしいから。
ただ、日本人は甲子園的なものが好きだから...軌道に乗せるのは大変でしょう。
底辺の指導者は日本の規範で動く日本人ばかりで、
たかが玉蹴り遊びごときの為に生き方は変えられません。
外国かぶれのジャーナリストがラディカルな事を
言うのは重要ですが、同じ感覚で協会が動いたら、
「現実が見えてない」と言われても仕方ないでしょう。
私の地域では先日1人審判研修があり、参加してきました。
ここのコメント欄ではちょっと誤解があるようなので、
> ファールかどうかを自分で判断するな
ファウルの判定をさすがにセルフジャッジでやらせることはありません。
ボールが明らかにラインを割った場合には主審の指示を待たずにセルフジャッジで再開する、が主旨で、ギリギリのものやどちら側のボールで再開するかが不明確なときは従来どおり審判が指示します。
> 正確な判断は求めないそうです。
少なくとも私はそのような指導は受けませんでした。
審判の動き方については、対角線審判法は体力と技術のある人でないと難しく、4級レベルの審判であれば片方のラインを補助審に預けるワンサイド審判法がオススメとのことでした。
で、主審の位置取りの基本は”オフサイドライン(付近)を保持する”こと。守備側の反撃が予想される場合は速やかに反対のオフサイドラインまで走る。
要は副審二人分走れってことです^^。
審判については憶測で不平を言う前に、どうすれば正しいジャッジができるかを考え、上級の審判のアドバイスを受けるなどした方がいいですよ。
JFAにアップされているルールには、そのような記載はなかったと記憶していますが、当方の読み方が足らなかったのでしたら、ごめんなさい。
いつも拝見されて頂いております。
さて、私も3級審判のはしくれでして、よく8人制で一審しております。
ハッキリ言って、JFAの方針ではまた審判は死んでしまいますよ。
今年は非常に暑く、試合中に飲水タイムを設けていましたが、審判のためじゃないかと冗談をいっていたぐらいですから。
少なくともフットサルのように二審でいってもらいたいですね。
かしや氏の書き込み
> JFAの方針ではまた審判は死んでしまいますよ
というのもまったくその通りで、私が書き込んだ方法で審判やるとかなり疲れます。
夏だと小学校高学年の試合1本でいっぱいいっぱいです。普段からトレーニングされている方ならそういうことはないかも知れませんが、ボランティアのお父さん審判にはちょっと求められない感じではあります。
となると武藤氏の本文どおり審判の確保は問題で、スタッフのそろった強豪クラブなら問題ないかもしれませんが、地域の”底辺クラブ”にはきついです。
これも武藤氏が本文で触れられていますが、底辺普及のための8人制と、サッカーエリート教育のための8人制というのは別に考えられるべきものなのかも、とも思います。
主審は審判資格が要求されましたが、副審は審判資格のない方でもお手伝いいただいて、オフサイドだけ見てもらっていたと記憶しています。
人手が足らないときは子供に担当させていましたが、集中力が切れるので安心できませんでした。
大体 熱くなるのは選手よりも周りというのはどこも同じ
8分 3本だったように思います。
選手は極力同じ時間出場させるようにという趣旨でしたから、選手全員 8分または 16分の出場でした。しかし、これは紳士協定で、協定を守らなければ当然有利になりますが、周りからは白い目で見られます。
GKが途中で変わって フィールドプレーヤー 16分 GK8分(あるいはその逆)の場合はokだったと思います。
良い点は全員出場できることと、ボールに触る機会が増えること。
FWに背が高かったり、足が速かったり、技術がずば抜けている選手がいると 11人のときよりも顕著に有利になります。
私は セカンドチームを受け持っていたので8人制はメリットがあったと思います。
試合に出られなければ面白くないので途中で挫けて大人になってから、サッカービジネスにお金を落とさないが、8人制ならば楽しみも感じることができるので、大人になってもサッカーを楽しんでくれます。
米国で移民の人たちと玉けりをしましたが、ストリートで鍛えた方が圧倒的にボールの扱いは上手。
小学校年代は戦術理解よりもボールコントロールに重きを置いてほしいと思います。(最近はそのような指導はしていないのかもしれませんが....)