先日惨敗したユース代表。残念だったし、腹も立った。また、先日も述べたように、少なくとも布監督は、日本協会の強化スタッフを辞任すべきだろう。
もちろん、布氏が過去市立船橋高校で積み上げた実績、「高校段階で勝つ事」は最高級のものだった。一方で高校段階での勝利を目指し過ぎではないかとの批判もあったし、市立船橋の選手は「後で伸びない」との揶揄もある。しかし、こちらを見るとわかる通り、野口幸司、北嶋秀朗、小川佳純など、純然たる日本のトッププレイヤを多数輩出している訳で、代表のレギュラ選手を作れていないだけの事。そして、代表の中核選手となるには、ユース時代の指導よりは天分の要素の方が重要に思える。そうこう考えると、布氏の日本サッカーへの貢献度と実績は極めて高いものだったと評価すべきだろう。
もっとも、今回布氏が作ろうとしたチームは、市立船橋当時の「とにかく勝つ」と言うチームとは随分と異なるものだったが。諸事情があったのだろうが、Jで活躍中のトップクラス選手招集の自粛、今なお不可解な大型CBを招集しなかった事。最終ラインの平均身長は今回のユース代表よりも、布監督当時の市立船橋の方が高かったのではないか(笑...いや、さっぱり笑えない)。
しかし、繰り返すが重要な事は、布氏が日本協会の若年層強化スタッフから去る事だろう。先日も述べたが、あのような無様なチームを作ってしまった人が何を言っても、単独チームの関係者は冷笑するだけだろうから。もちろん、過去あれだけの実績を挙げた布氏である。いずこかの高校チームなりクラブユースチームの監督の話はあるだろう。そこで、市立船橋時代を凌駕する成績、人材育成に成功すればよいのだ。そうすれば、また協会育成スタッフとして今回やり残した仕事を目指す機会も生まれよう。
ではユース代表の監督を誰に任せればよいか、と言うと中々難しい。もちろん、倉又氏や森山氏はよい選択肢だろうが、果たして各クラブが手放してくれるかどうか。まさか「森山って言っちゃったね」と言う訳にもいかないだろうし。また、さんざん上記した通り、布氏のユース世代の指導者としての実績は格段のものがあったのだ。その布氏の、今回の味わい深いチーム作りを見てしまうと、ユース世代での監督としての実績が十分条件ではないようにも思えてくる。
とにかく、協会御用達ではないプロフェッショナルを、と言う声も多い。それにも基本的に賛同するが、典型的協会御用達コーチだった田中孝司氏や山本昌邦氏が、ワールドユースでそこそこの成績を収めた事もある(2人とも、爾後Jの監督に就任し、お世辞にも成功したとは言えない成績だったが)。また、まだ10代の若者のチームをまとめる仕事と、トッププロの指導の仕事は随分と性格が異なるのも間違いない。そのような状況で、10代の代表チームをうまく強化できるプロフェッショナルをどのように探すのか課題は多い。
優秀な外国人監督の招聘を推す声も多いが、この世代の指導に外国人監督が果たして適切かも議論が分かれる。フィリップと言う大成功例はあるものの、あれは日本代表監督として「未来へのつながり」が明確だったゆえの成功と言う見方もできる。たとえば、「今の若年総代表チームをフィリップに任せる!」と日本協会が言い出したとすれば、「おいおい」と止める人も多かろう。まして、新外国人監督には、日本の学校制度、高等学校卒業年に合わせてJクラブも選手を輪切りにするなどの日本独特のJリーグ制度、さらにJ1、J2、JFL、大学リーグ、その他地域リーグなどへの選手分散の理屈、そう言った日本独特の事情をある程度理解してもらう必要ある。これはこれで、相当エネルギーが必要そうに思えるではないか。
誤解しないで欲しいが、上記理由から「現状維持がよい」などと言う気は毛頭ない。私だって、もう布氏の顔をとうぶん見たくないし、「協会御用達コーチがよい」などとの思いはない。ただ、「誰に何をどのような立場で頼むと成功する」と言った、簡単な議論では片付かない事を述べたかっただけなのだ。
しかしだ。
あの悔しい敗戦が日本サッカー界を絶望の淵に落とすものだろうか。むしろ、ユース代表なのだから、代表入りを目指せるであろう何人かが「高い個人能力」を存分に発揮して、よい経験を積んでくれれば、それで十分ではないのか。そして、あの韓国選手は、そう言った一部の選手が「圧倒的な個」を発揮したのも確かなのだ(ただし、そうは言っても2回連続のワールドユース失敗は堪え難いものがあるのだが)。
先日の試合で、終盤の永井のシュートがバーを叩いた場面。試合映像は見られなくとも各種のニュース映像で見た方が多いと思う。あの場面、日本は宇佐美と永井の即興で約5名いた韓国守備網を完全に右に寄せる事に成功、さらに永井は永井でボールを受けた後見事な加速で敵DFを振り切るのに成功した。同様に、序盤の指宿の2得点も同様に見事だった。大柄な指宿にもかかわらず、瞬間的な柔軟性と技巧を発揮してくれたのだ。これだけ前線のタレントがそろっていたのだ。負けたのは悔しくて仕方がないが、若年層育成はうまく進んでいると考えるべきではないか。
今回のユースの敗戦は、日本協会が作ったユース代表チームの敗戦であり、日本サッカー界の若年層強化の敗戦でない。あるいは、前後して行われたA代表の颯爽とした戦い振りや南アフリカでの成功は、日本サッカーの育成の成果であって、日本協会の育成の成果ではない。我々はここを絶対に間違わないようにしなければならない。
2010年10月21日
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同じコンセプトでシステムを作るのが定石なのに
各年代で別々なシステムでチームを作ってます。
共通してるのは442とパスワークというお題目だけ。
それが一番問題で、U代表からA代表に抜擢したときに
持てる力を発揮しにくいという弱点があります。
山田直輝が割りとすんなり岡田さんのチームに入れたのは
城福さんが作ったU17のスタイルが岡田さんのに
似ていた所もあるように思います。
「上手くいか無くても悲観する事は無い」・・・。
どうでしょうか?
メインプロジェクトが上手くいって言って、若干なりとも余裕のある今だからこそ
次の世代の事に力を注ぐべき(結果にこだわるべき)じゃないのかな?と思います。
若い世代の停滞は、近い将来の危機です。
世界最高レベルでの勝負は個人ではなくチームで「勝ちぐせ」をつけておくことが
重要ではないでしょうか?
個々のプレイだけを取り上げて、試合途中の技術が高かったから・・・云々は、
「タレント寄せ集め時代のRマドリー」になってしまう可能性すら感じます。
悲観主義を責め過ぎるのは「裸の王様」を造りだす一歩目を踏み出す事に繋がりかねません。
今回の講釈の一番のポイントは・・・
・日本の学校制度、
・高等学校卒業年に合わせてJクラブも選手を輪切りにするなどの日本独特のJリーグ制度
ここだった様に思えます。
選手を批判ではなく、巨大な資金を運営する側への監視や批判はブラジル並みにあって
良いのかもしれません。
いずれにせよ、「誰かが腹をくくって、失敗の責任は誰にあるのか」は始める前に聞き出さないと
サッカーファンが仲間割れする哀しい状況になってしまいます。
次のプロジェクトは誰が『仕切り役を決める責任を持つのか』、
今回のW杯での戦績は、選手の能力による成果であって、監督の成果ではない。我々はここを絶対に間違わないようにしなければならない。
いつも武藤さんの主張が、別の場面では逆の結論になるところが不思議ですね。
牧内コーチも辞任すべきでしょうねえ。
悪評しか聞きませんが
「信賞必罰」って言葉もその時代唱えられたが、忘れているらしい。
武藤氏も含めて熱い時代だったなぁ。
ある程度のコンセプトは必要でしょうが、時間をかけてチームを熟成する必要はないと思います。
彼らにはそれよりの大事なことがあると思います。
代表が日本サッカーを成長させるのか?
草の根の活動が日本サッカーを成長させるのか?
JFAにはその舵取りを間違わないで欲しいですね。
↓
1.監督辞めろ。
2.次の人選は知らん
3.しかし育成は成功してる
4.育成成功は絶対に協会の功績ではない!
布氏っていつのまにか協会代表にされてるわけね。w
まあ、悪いの全部「協会」で、功績はその「協会」を批判する「我々」なのだ。。。
うーん。。。
ところで,背が低くて経験もないセンターバックの件ですが,誰を招集,またはチーム内で起用すればよかったと思いますか?この年代のセンターバックの人材不足は驚くほどですよ.
確かに招集できなかったと思われる選手も何人かいますが,そのほとんどは前線の選手で,その前線の選手は招集された選手のレベルはかつてないほどレベルの高いものだと思います.
なので,個々の選手の能力云々よりも,あのような試合になるという「危機管理」というか,準備ができていなかったのが問題で,やはり監督の責任は大きかったと思います.
A代表の監督だった岡田も一年前は同じだったと思いますが,本番直前になって危機管理のかたまりのようなチーム編成に変更して成功しました.
本気の国際試合とはどのようなものかを日頃から意識して,それに対応できるチーム作りをすることが監督の仕事と言えるでしょう.
「育成はうまくいっているが、協会が悪いので出場できませんでした。」と?
ユースも五輪も(もちろんフル代表も)世界大会に出場できなければ、世界の中でどのような位置にいるのか測れません。
サッカーファンにはそれを見届け、希望をもつことすら叶わない。
「絶望の淵」に落ちることはないだろうが、育成がうまくいっているかどうかを測るモノサシが日本には与えられない、ということではないか。
それはそれで、日本サッカー界にとって、絶望的な問題ではないか。
それとも、一部の才能を持った(と思える)選手の活躍が見られるなら世界大会に行けなくても十分希望が持てると?
武藤さんの理論ですと、W杯で活躍できれば結果論で育成はうまく行っているということでしょうか。
では、シドニー世代の育成は「大成功」で、シドニー・アテネ世代は「大失敗」で、アテネ・北京世代は「大成功」ということですね(笑)
悔しくて仕方がないのなら、監督、日本協会だけでなく、サッカー界の育成や選手たちにも、もっと疑問を呈することが大事でしょう。
U-19はフル代表じゃないんだから、そんなアナロジーは無意味なんじゃないでしょうか。
というか、少なくとも僕は同じモノサシを当てないし、おそらく武藤さんもそうなんじゃないかな。
「あぐれっさー」のひとは、どうやらマジで「ほとぼりが冷めた」と勘違いしてるようですね。
ブログ主も自分と同じような鶏頭だと考えるのは大きな勘違いだと思うw
と言われれば、それまでなんですが・・・。
私は日本のサッカーが世界にどれだけ近づいているかは、世界と戦うことでしか測れないと思います。
世界のモノサシはひとつしかないと思いますが。アジアのモノサシで十分判断できるならそれでもいいですけど。
武藤さんはアジア予選を見て、育成はうまくいっている、と思えたようですが、私には正直うまくいっているのか、いっていないのか判断できません。
サッカーはテクニックやフィジカルが優れていても「強い」わけではないですよね。
世界とどれだけやれるか、で判断できるのではないでしょうか。
そこで自分たちに足りないものや強みも確認できる。
選手自身も協会もサッカー界の育成の立場の人も、ファンも。
そして同時に世界の育成状況も認識できるメリットもある。
ワールドユースを経験することで、日本サッカーが劇的にレベルアップすることはないでしょうが、マイナスになることはないでしょう。
世界と戦うことはそれ自体が若年層の「育成」になるのでは。
それをどれだけの糧にできるかは、彼らの問題ですが。
例えば宇佐美の自信がズタズタにされるとかね。
今回は、世界レベルでの強化状況を「測る機会」と、めったにない「育成の場」を、『与えてあげられなかった』罪は非常に大きいと思えます。
悔しくて仕方がない、のならもっと声をあげていただけたらありがたい、と勝手ながら思った次第。
それを、「育成成功」と言い換えても無駄。
結局、協会批判と自己陶酔だけに終わっている無意味な記事。
このエントリーのどこをどう読んだらこういうコメントが出てくるんだ?
唖然。