2010年11月10日

ナビスコ決勝2010雑感

 ここのところ本業は忙しいは、少年団の大事な試合はあるは、中学生の審判は依頼されるは、JのみならずU17やアジア大会の映像は追いかけなければならないは、野球の日本選手権を冷やかすは、と諸事多忙で、なかなかブログに取り組めずにいた。
 書きたい事があるのに書く時間がとれないのは結構フラストレーションが溜まるものだと再認識。
 まあ、当然ながら先週今週はいろいろと忙しくなる事は前からわかっていた訳だが、ついつい野球にまで(と言ってもテレビ桟敷だが)手を出したりしたのが悪いのだけれども。

 と言う事で、少々遅くなったが、すっかり秋の風物詩に定着したナビスコカップ決勝について講釈を垂れたい。
 毎年繰り広げられるタフな決勝戦。今年は例年とは異なる、ぶん殴りあいを堪能できた。後述するが、延長戦のサンフレッチェの守り方はいかがかとは思ったけれど、派手な撃ち合いを愉しませていただいたのだから、文句を言うのも野暮と言うもの。もちろん、ここに残る事ができた両軍サポータの熱狂的な応援ぶり。恒例となったコレオグラフィーを含め、羨ましい限り(ようやく羨むレベルに到達した事が、また嬉しいのだけれどもね)。
 とは言え試合内容については、各方面で語り尽くされた感もあるいので、ちょっと違う視点から。

 まず優勝したジュビロ。
 久々のタイトル。03−04年シーズンの天皇杯以来となる。奇しくも、その天皇杯制覇時の監督は柳下氏だった。名波、藤田、服部らを軸にアジアまで制し、精強を誇っていたジュビロ。しかし、強いチームの常だが選手の老齢化からは免れる事はできなかった。そこで、前田遼一らを軸にある程度の若返りに成功し、天皇杯を制したのが柳下氏だったのだ。
 考えてみれば、柳下氏がそのまま留任していれば、そのまま強いチームができたのだろうが、ジュビロフロントの考えは異なっていた模様。その不遇に、柳下氏は自ら三行半を突きつけた。そして、ジュビロフロントが満を持して雇った監督が潤沢な資金でこの名門をガタガタにした事は記憶に新しい。そして今回のナビスコ制覇は、本来あのまま監督を継続すべきだった柳下氏の復讐戦の勝利とも言えるのではないか。
 現実的に、今後のジュビロがかつての名波浩全盛期のようにトップスタアを並べるチームを作るのは、その経済規模を考えると難しいだろう。しかし、駒野不在でも堂々と優勝した今のジュビロは切り札たるスタア選手をしっかりと周囲が支えるバランスのよいチームだ。中でも、2得点を決めた前田遼一は、先日のアルゼンチン戦でも感じたが、持ち前の優雅な技巧に強引さが加わり、何とも期待感の高いストライカになってきた。サイドで確実に仕事をする駒野と合わせ、紛れも無い日本のトッププレイヤと言えよう。
 そして、この決勝戦で改めて感じたのは那須大亮の充実だった。元々この選手は、アテネ五輪代表の完全な中軸、予選当時は闘莉王、今野、阿部らに勝るとも劣らない高い評価を受けていた。しかし、五輪本大会の初戦パラグアイ戦で、ちょっと考えられないミスをしてからは完全に低迷を継続(1つの試合でよい方向に「化ける」選手は多い、しかし同時に1つの試合で悪い方向に「崩れる」選手も少なくないのだ)。しかし、ここに来てかつての輝きを完全に取り戻しつつあるようだ。この10月で29歳になった那須が今後A代表に選ばれる機会があるかどうかはわからない。しかし、1つだけはっきり言える事は、那須は現在国内の「後方から挙動を開始する選手」の中では屈指の名手の1人だと言う事だ。
 前田、駒野、那須と3人の充実した29歳を中軸とするジュビロ。近い将来、より大きな果実を手にする機会があるのか、注目していきたい。

 続いてサンフレッチェ。
 上記した通り、おもしろい攻め合いを野次馬として堪能したのだから、文句を言うのは野暮だとは思う。しかし、結局サンフレッチェは、上記同点弾を含め2度CKで那須をフリーにしてしまい2失点、1点差で負けている時に2度完全に無理な前掛りから敵の単身突破を許し2失点。
 そう言う試合だったのだ。
 けれども、私はこの試合を愉しませていただいた上で(決して皮肉や揶揄ではなく)、サンフレッチェがペトロビッチ氏に采配を委ね、このような堂々とした負け方をする事を否定できなくなっている。たとえば、私はペトロビッチ氏が07年シーズン末に「自殺するかのように」サンフレッチェをJ2に降格させた時には、相当に酷評させていただいた。今期のACLでもそうだった。中盤で攻勢を取りながらも攻め切れず、不用意にセットプレイから失点を重ねての敗退。そして、ナビスコ決勝での玉砕。
 否定するのは簡単だ。けれども、ペトロビッチ氏は再三玉砕しながらも、成功する時は実に美しいサッカーを見せてくれるのだ。そして、このナビスコ決勝も、上記指摘した守備の問題はさておき、多くの時間帯でサンフレッチェが見せてくれた攻撃は実に見事なものだった。ペトロビッチ氏率いるサンフレッチェとは、(少々出入りは大きいかもしれず、痛い星を自ら落とす事も多いが)そのような多くの人を愉しませるチームなのだ。いや、07−08年シーズンの天皇杯決勝進出にせよ、今回の準優勝にせよ、ACL出場にせよ、結果も鮮やかに残しているな。
 サンフレッチェは、日本サッカー界では最高クラスの実績を持つ名門中の名門ではある。しかし、決して経済的に潤沢とは言えない地方のクラブでもある。そして、それらをカバーするためのユース育成システムは、間違いなく日本屈指のもの(1つの高校に全選手を通わせて前途有為な選手達による精強なユース軍団を作るのみならず、近隣のJ2クラブへのレンタルを利用した育成、青山敏弘に代表される近隣地域の有力選手の獲得などを含めて)。そして、そのような育成型の地方のクラブが、ペトロビッチ氏のような監督に全てを託し、好成績を収めながら、たまに堂々と美しく負ける事、それは正しい姿なのではないかと。
 そこで、槙野智章である。あの精力的な活動全般、高く評価すべきだろう。見事だった直接FK。(ややダイビングっぽかったが)最後の最後のPK奪取、そして失敗。恐るべき存在感を見せてくれた。件のパフォーマンス騒動を含め(あれはあれでおもしろいから、私は肯定する)、その存在感は、完全に日本を代表する選手になったと評しても過言ではあるまい。
 しかし、だ。
 上記した一連の屈辱的な失点の数々。槙野が日本を代表する選手ではなく、真の日本代表選手になりたいのならば、(PKを外した事ではなくて)あれらの失点についての真摯な反省が必要だろう。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(8) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>上記同点弾を含め2度CKで那須をフリーにしてしまい2失点、
こっちの方は意義ある指摘だと思いますが
>1点差で負けている時に2度完全に無理な前掛りから敵の単身突破を許し2失点。
こっちに関しては指摘する意義を感じません
一発勝負の延長戦で負けてるチームが完全に無理な前掛りをするの珍しくないですし
中二日だった広島がそれ以外の方法で点を取れたとも思えません
危機管理の放棄ありきの攻撃方法を選んだチームの
守備の問題を指摘して何か意味があるんですか?
書いてる時自分は野暮なんじゃなくて馬鹿なんじゃないかと思いませんでしたか?
相手より疲労度の高い負けてる広島が完全に無理な前掛りをせずに追いつける攻撃方法を
指南した上で守備の問題を指摘するなら意義を感じるんですけど
Posted by at 2010年11月11日 03:45
レベル云々は先入観では?Jリーグって見られてる人ならわかると思いますが、レベル差はあんまりないですよね。
中位同士だからっていうのをよく見かけましたが、この両チームは決勝まですごく調子が良く、だからこそ決勝まで来れたのに。リーグの順位を持ち出すのは、カップ戦決勝の見方ではないような気がします。
5点とられたからという結果もあり、広島の守備組織が悪かったと言われる人もいましたが。
過密日程や延長突入による運動量低下、試合展開という背景を考慮されてない方が多く釈然としませんでした。
広島はイメージで語られる方が多いですが、去年途中から攻撃的チームというより、バランス重視のスタイルに変わってきてると思います。

やりたい事がはっきりしてるので、パターンは同じですが、失点の少ないチームだったはず。
突然の書き込み失礼しました。
両チーム共イメージと、この試合の印象だけで語られる方が多いのでどうなのかな?と個人的に思いました。

とにかく両チームの健闘を称えたいです。
Posted by 他 at 2010年11月11日 05:29
度々すみません。両チームのレベル云々は語られてなかったですね。
勘違いだったみたいで、失礼しました。
Posted by 他 at 2010年11月11日 05:45
>2得点を決めた前田遼一は、先日のアルゼンチン戦でも感じたが、持ち前の優雅な技巧に強引さが加わり、何とも期待感の高いストライカになってきた。サイドで確実に仕事をする駒野と合わせ、紛れも無い日本のトッププレイヤと言えよう。

どうして武藤文雄氏自身がお認めの「紛れも無い日本のトッププレイヤ!」がWカップに出場しなかった、或いは出場できなかったのでしょうか。

アルゼンチン、韓国戦での動きを見れば、彼に1トップができないはずはありませんよね。むしろ、唯一1トップにふさわしい日本人選手であったかもしれません。

その「紛れもない日本のトッププレイヤー!」がW杯で活躍できなかった状況とは、一体いかなる状況であったのか。そしてそのような状況が、なぜ許されたのか。その状況を認識すれば、日本代表チームが信じられないような影響下にあったということが、はっきりと確認できるでしょう。

そのあたりの掘り下げた検討が「岡田監督が好きだ」とは別の次元で、「逃げることなく」なされる必要があるのではないでしょうか。

Posted by at 2010年11月12日 10:14
 ところで、岡田監督が就任時言っていた、「これを最後にサッカー業から離れる」というのはどうなったんでしょうか?(笑)
眉に唾付けてましたが、お人好しのチョッパリを騙くらかして、支援なり助成なりを引っ張ろうとしてたんですかねぇ・・・。(^_^;)
マスゴミとの対立を印象付けながら実はツーカーだったりとか、先輩の川淵や取り巻き共々怪しい人達でした。
Posted by vp at 2010年11月12日 16:55
>どうして武藤文雄氏自身がお認めの「紛れも無い日本のトッププレイヤ!」がWカップに出場しなかった、或いは出場できなかったのでしょうか。

森本や本田の後塵を拝している以上、日本トッププレイヤといえども日本代表には席が無いから。


>アルゼンチン、韓国戦での動きを見れば、彼に1トップができないはずはありませんよね。むしろ、唯一1トップにふさわしい日本人選手であったかもしれません。

親善ムードのアルゼンチン戦では前がかりにきてスカスカの相手へのカウンターに対し、判断力とスピードに難があることが証明された。韓国戦を見ればまだまだ国際レベルのガチ試合では消えてしまうことがわかってしまった。

これらのことは何度も言ってるのに、逃げ続けているのはあなた。
Posted by at 2010年11月13日 11:24
> 2010年11月12日 10:14
しつこいよアンタ。
しっかし、強引だろうが論理破綻してようがとっくに論破された話だろうが「これで岡田氏批判(武藤氏批判、か)のコメントが書ける!」と思ったらともかく何でも使って何回でも出てくるとは、まるでゴキb(略)だね。
あー醜い醜い。
Posted by at 2010年11月14日 23:29
>強引だろうが論理破綻してようがとっくに論破された話だろうが

 実際は、強引でもなければ、論理破綻して論破もされてないけどなwww。
つまり、この部分は、カマシと捏造と印象操作。

>ともかく何でも使って何回でも出てくる
 某ウリナラ同胞の事ですよね。(笑)

>まるでゴキb(略)だね。あー醜い醜い。
 ホントに酷いよねw。だって本当に老若男女みんなこんな奴等だもん。それが通名使って偽装してるから本当にタチの悪いこと悪いこと。(^_^;)
そりゃ無差別殺傷事件が起こるはずだわ。
Posted by vp at 2010年12月17日 09:40
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