さて日韓戦である。
日本と韓国が、このように公式タイトルマッチで、完全に雌雄を決する機会は、いつまで遡らなければならないのか。記録を再整理して驚いた。
前回のアジアカップは3位決定戦であり、消化試合に過ぎなかった。すると97年フランス予選か。いや、あのレギュレーションはH&Aだったし、リーグ戦で他国との結果も重要だったし、何よりも2位になっても「死」ではなかった。同様に93年のUSA予選も総当たり戦で2位までOKだった。となると、85年の「メキシコの青い空」以来と言う事になる(この時木村をマークしたのが、趙広来氏だった)。もっともあれはH&Aだった。さらに遡って整理してみたのだが、アジアカップでの一騎打ちは事実上、上記の前回のみ(それ以前に韓国と2回手合わせしているが、88年、67年(予選)とも日本はB代表を派遣)。そしてワールドカップなり五輪予選については、多くはリーグ戦形式。1950年代、60年代には幾度か一騎打ちがあるがすべて2試合行われている。そう言う中で、事実上の一騎打ちとしては、あの67年メキシコ五輪予選があるのだが、あの時は日本にフィリピンと言う格好の援軍がいた。代表チームではないが、2003年ワールドユース1/16ファイナル(今野が主将だった大会)と言うのがあるけれど、価値が全く異なるのは言うまでもない。
つまり、今回の手合わせは、事実上最初の手合わせとなった54年スイスワールドカップ予選以降、はじめての完全な一騎打ちと言う事になるのだ。
このような偉大な試合に現地に行かない俺は本当に情けないな。2年続けての負け組である。
イラン戦を見た限り、韓国の攻撃は朴智星と李青龍が敵を引きつけておき、李榮杓と車ドゥリの両サイドバックの押し上げに、ボランチの李ヨンレ(李容来?)が絡んでサイドを突破するのがポイント。そして、その破壊力は相当なものがある。また売り出し中の若手選手達の能力は確かに高い。しかし、この攻撃が成立するためには、若き指揮官の奇誠庸がフリーで展開する必要がある。南アフリカでは、奇の横で金正友や金南一などのベテランがそのあたりを担当していたのだが、今回のパートナの李ヨンレはそのようなタイプではなく、どんどん飛び出すタイプ。したがって、現実的に自力で日本の中盤の組織網を奇がそう簡単に抜け出せるとは思えない。特に本田と岡崎のプレスは相当厳しいはずだ。奇が自由に展開できない状況で、強引に両サイドバックが上がって来てくれたら、それこそ岡崎や香川が裏を取りやすくなろうと言うものだ。
そうなると朴智星と李青龍の個人能力による前進と言う事になると思うが、そこにはこちらだって長友と内田がいる。長友は次第に体調が上がって来ているのはカタール戦で証明された。内田はシリア戦の守備振りはほとんど完璧だった。だいたい、シャルケがユナイテッドと欧州で戦うとしたら、内田は朴智星に互角に戦えなければダメだろう。もはや、相手が朴だからと言ってひるむ必要はない。そして、今野の今大会の充実振りは言うまでもない。また岩政(が起用されるのだろうが、ザッケローニ氏は何もあそこまで記者会見で明言する必要はあったのだろうか、伊野波のCB期用も匂わせて趙広来氏を悩ませるのも一興かと思うが)は、池ドンウォンならば高さと強さで対抗できそうだ(ちょっと気になるのは、廉基勳が来ると岩政の苦手なタイプに思える事だが、ここまでの起用法を見るとスタメンは池だろう)。
以上、日本のプレスが機能すれば、韓国はそう自由には攻める事はできないと思う。10月のソウルの試合でも、そうだった。日本の体調が揃っていて、組織的なプレスがかかると、韓国は逆襲速攻に頼らざるを得なくなるはずだ。
では、それを打開するために、強引なロングボールで来られたとしたらどうか。1つは、岩政はそのような単調なロングボール戦法には滅法強い。さらに、韓国は強引に蹴って走ってくる策に来ようにも、スタミナの問題がある。日本は夕刻に試合を終えた中3日だったが、韓国は夜中近くに試合を終えた中2日。イラン戦後は、身体のケアをして寝るのが精一杯だったろう。真偽は定かではないが、翌日は完全休養としたようだが、調整方法としては普通とは言えないやり方だ。これは、日本が中3日の中間日を計画的に休養日にしたのとは本質的に異なる。また延長戦で奇誠庸が相当無理をしていたが、回復は相当厳しそうに見えた。確かにまだ21歳と若さにあふれる選手ではあるが。
そうこう考えると、強引に走り回って日本を押し込む策はとりづらいのではないか。無理をすれば、それこそ終盤皆動けなくなる。遠藤と長谷部の中盤に対し、それは悪夢と言うものだろう。となると強いて無理するとしても、前後半の開始早々15分ずつ、一気に無理して点を狙うとともに、日本に押し込まれるのを防ぐのが精一杯ではないだろうか。
したがって、韓国はある程度守りを固めて我慢する試合を狙ってくると思う。
もしそう来られたとしても、韓国のCBは今一歩な事もよくわかっている事。李正秀(この選手だって結構怪しい守備振りだ)が出場停止で、黄載元にとサガンの郭泰輝のコンビとなるのだろうが、2人とも強い事は強いが、俊敏な選手への対応がよくないのは自明。イランが崩し切れなかったのは、最前線の選手達が技巧的だがやや判断力に難があったからだが、岡崎や香川はそのようなヘマはしない。
ワールドカップの経験値の違いもあると期待したい。韓国の4試合を振り返ってみよう。ギリシャは32国中最弱と言っても過言でない相手、アルゼンチン戦はなすすべなく惨敗、ウルグアイ戦はフォルランとスアレスの個人技の前に完敗。唯一のギリギリの体験は、ナイジェリア戦のみだったのではないか(あのナイジェリア戦は見事な戦いぶりだったが)。また元々、1/16が目標と語っていたように、ウルグアイ戦もよく粘ってはいたが、敗れても許丁茂監督を含め、何か淡々としていた(もちろん、許氏の涙は美しいものだったが)。対して、我々は違った。楽な試合も、完敗もなく、いずれも最高レベルの競った試合を4本経験、およそ考え得る最も悔しい体験までする事ができた。そして、誰一人満足する事ない結果だった。だからこそ、それを経験した長谷部、遠藤、岡崎、本田と言った面々は、今大会でも苦しくなればなるほど、その高い能力を発揮しているのだ。対して、韓国にそこまで精神的な強さが出てくるだろうか。
ザッケローニ氏が、韓国−イラン戦後に「我々にとって難しい試合になるが、相手にとっても同じく難しい試合になるのではないか。」と語ったと言う。対して趙広来氏は「私は、選手時代も、監督としても、過去一度だって日本を恐れたことはない」」と強気の発言をしたようだ。しかし、氏の現役時代の日韓の差はずっと大きかったが、今日の双方の差は、ほとんどない事は周知の事実である。先日の日韓戦は敵地ながら当方が圧倒したのは記憶に新しい(そう言うと、「朴智星がいなかった」と自虐的に語る人がいるが、こっちだって「岡崎がいなかった」、もちろん経験と実績は朴は岡崎と比較して格段のものがあるが、今大会の自国への貢献度合いを比較すれば、その差が僅少な事は確かだ、さらに言えばあのソウルの試合は今回欠場の朴主永はいたのだから、先方は一層マイナスと言う考え方もある)。なぜ趙広来氏はそこまで強気なのか。おそらく氏には虚勢を張る必要があるからではないか。20代前後の若い選手の多い韓国だけに、若い選手をひるませたくないからだろう。昨日も述べたように、今回の韓国代表のメンバ構成は、かなりいびつだ。そして、20代前後の選手達の潜在力は疑いないが、彼らが明日の大一番で力を発揮できるのか、一番不安に思っているのが趙広来氏なのではないか。
以上楽観論を羅列した。
もちろん、韓国は強い。朴智星は欧州でも屈指のスタアの1人だし、李榮杓はアジアサッカー史に残る巨人だ。李青龍と奇誠庸の才能も疑うべくもない。そして、彼らはどんなに疲弊していても、日本とのタイトルマッチで勝負を諦める事はないだろう。当然、韓国は強い。
しかし、今回の対戦の相対関係は、当方に有利だといいたいのだ。日程の幸運などもあるが、チーム作りの相性的なものも、当方に有利にはたらいているように見える。
難しい試合にはなるだろう。難しい試合だからこそ、勝敗を分けるのは細部へのこだわり、几帳面さの継続になる。そして、長谷部とその仲間達は、この大一番で90分間、あるいは120分間、几帳面に戦い続ける事ができる集団だと信じている。だから、PK戦よりも前に当方の歓喜が待っている確率は、極めて高いはずだ。
2011年01月24日
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えーっと、そこで負けたせいで今回予選免除にならなかったんじゃなかったでしたっけ?
すいません、どうしてそう言いきれるのかがまったくわかりません
カタール戦はヒヤヒヤするって予想が当たりました。
http://blogs.yahoo.co.jp/hideg_2k3/22229994.html
そこで書いたもう一方の予想、、、
本田と川島を下げて、楽勝ってパターンが証明されるかw
ザックに期待してます。
このような文章が読めて、ホッとしました。
個人的には、そこまで韓国は強くはないだろ?
と思っていますので。
ただ、日本有利で進み、体力的にも追いつめられた韓国が、ラフプレイに走ること・・・それが、いちばんの懸念です。
どうか誰も怪我せずに終わりますように。
一発勝負で滅多に当たっていないというのは新発見でした。
いいタイミングで巡って来たという感じですね。
そういえば今大会は権田と森脇以外は、みんな出場しているんですね。
何気にすごいかも。
グループBのレベルの低さは異常でした。
カタール戦の攻撃陣はひとり少ない中で3点取ってるわけですから、
柏木の守備がそんなにいいとは思えないし辛勝の責任はDF陣にありでしょう。
ザックは2点目以降は相手が酷すぎたサウジ戦を、
そんなに過大評価してない(吉田red→サウジ2得点の前田out)ですから期待してもムダですよ。
って、今シーズンはどこなんでしょ
ただ今の日本も長谷部中心にメンタルすごい強いですよね
なんのかんの終盤は精神力勝負になるんじゃないですか
勝利を期待します。
カズが先制→逆転される→井原のスーパーミドルで追いつく→土壇場での微妙なPK献上で敗北。
あまりにドラマチックだっただけに、当時、メチャクチャ悔しかったなあ。
武藤さんはFIFA主催の大会じゃないからカウントしなかったんだろうけど、今振り返ると屈指の名勝負だったと思う。
選手たちは本当にお疲れ様です
リードしてガチガチに固めてひっくり返された
フランス予選の国立韓国戦を思い出していました・・(追いつかれる前から何となく)
ザック氏が加茂氏の二の舞になるのかと・・・
勝ってよかったです本当に。
経験値の差ってでかいですね。
前田変えない方がよかった?
それでも選手の皆様お疲れさま
前田を交代したときも不安でした。
でも勝ってしまうのはザック監督がやはり勝負師なんでしょうか?
武藤さんの講釈を期待しています。
話は違いますが、本田圭に対するリポーターのPKに対する突っ込みは良かったです(笑)。
あ〜、でも延長戦で勝ってしまいたかったなぁ〜
自分も柏木を投入して欲しかったですね。
韓国はこれで強くなりますよね。凄く変な気持ちです。悔しい思いをするって事がなんかうらやましいですね。日本はブラジルまでに悔しい経験をいつすればいいのか。悔しい思いは4年に1回でいいんですかね。
監督采配についての講釈期待しています。
とは言え、疑惑の判定で勝ったと言われるより(お互い様ですが)、
PK合戦で決着したのは結果的には良かったと思いますが。
ほかの方も書き込んでらっしゃいますが、延長の本田拓は何しに入ったんでしょうね?あれなら柏木を入れるべきだったと思います。
あと韓国ってあんなに転がる国でしたっけ?昔はもっと、なんというか迫力があった気がします。
ファールを取りに来てたんでしょうけど、転がらないでグイグイ来る韓国の方が怖い気がします。
岩政が敵味方ともにうまく噛み合ってよかったですが決勝は誰がCBになるのか楽しみです。
前回PK戦でやっと勝ったオーストラリアに、すかっと勝てたら、アジアNo1認めてくれるでしょう。
いい試合でした。
いや、どっちかに有利な判定をしていたってことじゃなくてあんなにゲームを止めるか、と。笛がえらく軽いな、と思ったらさらっと流したり。
一点目のPKなんてどこがファールかまったくわからないです。
あと韓国の選手はしたたかと言えばそうなんでしょうけど、なんというかファール欲しさに転がるサッカーを続けていくといずれ体の強さという韓国代表の良さを損ねてしまうんじゃないかと思ったりします。
昔からこんなに転がるサッカーで、その中で体を強化してきたのならこちらの勉強不足でした。
それは氏が論者としての信念と矜持というものをかなりシリアスに自覚しているからだろう。
そしてありがとうと。
次もまた、た思うに付け、どうしても守備陣が気になります。
ブラジルを考えると中沢、トゥーリオの次、そしてその次くらいまで必要になるのですから、今回は丁度良い機会(まぁ居ないのだから仕方ないし)ではあるのでそう言う目で見ている訳ですが、それでもバタバタしすぎな感じがしてなりません。
というか、攻撃陣がなんだかんだと点を取り、やっぱり日本は得点欠乏症かと嘆かなくて言い分、余計に守備に目がいくのかもしれませんが、もう少しなんとか、という感じがしてなりません。
経験不足なのか、連携不足なのか、タレントの問題なのか、起用の問題なのか。
残り一試合。
特に守備陣は自分たちが納得できる試合をしてもらいたいですね。
う〜〜〜ん、次も点が取れそうに感じる決勝・・・。
それだけでも日本代表が変ったと感じてしまいます。
それともグループリーグ敗退国からの刺客?
でもみんな面白がってみてるなあ.
それを思うと、終盤のカテナチオ(笑)も致し方ないのかなぁと…。
その少ない準備期間の中で3バックの練習していたわけで。
「強敵相手にとにかく守ればいい」というシチュエーションが
出来た段階で3バックを試す気だったんじゃないですかね。
点とらなくていいんだから両サイドは守備重視の
分り易いシチュエーションになりますし。
試す気が無ければ時間足りないのに3バックの準備をする訳がない。
ああいう後ろ向きな5バックを期待していたわけじゃないでしょうけど。
今大会のザックはタイトル獲得と並行してブラジルワールドカップに
向けての準備をしているように思われます。とにかく
タイトル取れればいいって言うならやり方変わって
きたんじゃないかなぁ。
それは韓国も同じで、「ブラジル大会の頃には若手俊英」
というメンバー中心で挑んできたのはブラジルを見越しての
事でしょう。「そんな目の前に集中しなくて勝てるのかよ」
と言われても現実に勝ってるわけですし。
結局、日韓両国はアジアの中では飛び抜けてるんだろうな。
そんな日本が急激に成長し、韓国に対して優位に試合を進めることができるようになったのは、やはりザックの功績です。監督の差ですね。
ジャッジの問題とは別に,不必要なファールであったと思われませんか?DF の位置どりが適切であったらあのままプレーが続いたと思いますが.
<日本が急激に成長し、
おめでとう!
・オランダやドイツと互角に戦うウルグアイ
・韓国はウルグアイに惜敗
この前提は本当でしょうか?
日本はパラグアイに決定機を作れてないとするなら、パラグアイに決定機を作らせてもいませんし、パラグアイに惜敗すらしていませんよね。のみならずオランダとは1-0の惜敗、岡崎の飛び出しから惜しい決定機もありました。
・韓国に対して優位
これもねえ…。前半はともかく後半以降はかなり苦しかった。中二日延長2連戦の相手に…。
守備に対する指導を重点に置いてやっているようですがお世辞にも機能しているとは思えない。
あまり指示がない攻撃は結果は出ているものの、本田香川前田岡崎(松井)の役割整理がまだできていないと思う。ひとり減ってから機能し始めることが多いあたり、南アフリカ体制から進歩はほとんどないと見ていい。
同じ試合を見ていたとは思えませんね。
2トップがワールドクラスだから勝ちあがったようなチーム。
日本は急成長してるでしょう。アンカーが必要なく守れてる。もう少し時間をかけて守備の戦術や連携が取れるようになると安定するはず。