嬉しい勝利だったが、もう1つ勝たなければ、この勝利の価値は半減する。嬉しくて嬉しくて仕方がない勝利だったからこそ、この価値を今以上のものとするためにも、決勝での勝利を期待したい。
ワールドカップに次ぐタイトルマッチが、そのワールドカップから僅か半年後に行われる異常な日程。我々も先方も非常に難しいチーム作りを要求された。いや、当方はチーム「作り」などはせずに大会に臨んでいるな。そう言う中で、双方が創意工夫と体力の限りをぶつけあっての3時間に及ぶ死闘。まあ、これ以上の娯楽を臨むのは贅沢と言うものだろう。しかも、この娯楽には、今後代表チームをいかに強化すべきかの方向性の明確化まで含まれていたのだから結構な事だ。
もちろん香川の負傷は何よりもとても悲しい事だ。あの2つのPK判定をいかに飲み込むかも考えどころだ。サッカーはそこそこ上手だが人間的にあまりに未熟な若者がいた事も残念だ。しかし、そうは言ってもすばらしい試合だったのだ。
日本の立場から見ると、ザッケローニ氏の采配に2つの分かれ目があったように思う。
1つ目。後半半ばあたり。前半半ばから後半序盤にかけて、日本のパス回しが韓国を圧倒。同点弾を含めて、次々と好機を作った。後半20分まで我慢していた趙広来氏はFWを減らして守備要員の洪正好をアンカーに起用し、5DF気味の守備ラインとして、李榮杓と車ドゥリを両翼の守備に専念させた。これは見事な采配だった。もっと早くこの交代をしていれば、その瞬間の守りは固められるが、スタミナを豊富に残す日本はギアチェンジをして別な仕掛けが可能だっただろう。これより遅ければ、韓国は守り切れなかっただろう。結果、両サイドからの攻撃が仕掛けづらくなった日本は、ややガス切れしてきた事もあり、思うようにボールが回らなくなる。一方、韓国は少々怪しい日本のCBとGKの連携を突き、フィジカルと技巧にすぐれたFWを走らせて形勢挽回してきた。
この場面、ザッケローニ氏は動かず、結果後半の終盤は韓国の反攻を許してしまった。常識的には、ここは選手交代すべき場面だった。もっと早く細貝を入れて中盤を活性化させるのも一策だし、サウジ戦ですばらしかった柏木を起用する手段もあったはず。今大会総じて言える事だが、ザッケローニ氏の交代は「遅い」印象が強い。
しかし、そもそもオプションを試す準備期間など一切なかった今大会。前田を含めた攻撃ラインの連携がようやく見事に機能したこの試合、しかも最も難しい敵相手に機能したのだ。ギリギリまでこのメンバで戦いたかったザッケローニ氏に気持ちもわからないでもない。また私が上記した細貝、柏木の投入にしても、連携を高めるトレーニングはほとんど行っていないのだし。
2つ目。日本が延長でリードした後。日本は4−5−1でブロックを固め、守備に専念した。日本に後方を固められた趙広来氏は196cmの金信旭を投入。試合後思い出したのだが、この試合にいた選手だな。さすがに2m近い巨人が出てくるとビックリするが、結果的にはでかいがそれほどヘディングは強くなかったので助かった。また、韓国がパワープレイに専念してくれば、それは岩政にとっては得意の形ではある。さらに日本の中盤の5人は、判断は確かだし、献身も問題ない。ブロックを固めてしっかりと守備をしていた。が、さすがに皆さん疲弊していた。また攻められっぱなしでは交通事故のリスクもある。常識的にはしっかりと守れているのだから、前の選手を代えて運動量を確保すると共に逆襲を仕掛けたいところだ。そこでの伊野波の投入である。逆転早々に代えて完全に引きこもる、あるいはギリギリまで我慢し最後の5分くらい後ろを厚くする、ならばわかるのだが、何とも中途半端な気がした。
それでも真ん中が固まった事もあり、長友が上がりやすくなる。実際延長後半は、(まだ脚力が残っている)長友と岡崎の2人で攻めれば点が入りそうな感もあった。結果的には、岩政がとられた怪しいファウルのFK以外はそれほど怖い場面もなく試合終了が近づいていた。そう考えると、逆転してちょっと我慢して、伊野波でフタをしたザッケローニ采配も妥当だったようにも思えてくる。
明言しておきたい。同点に追いつかれたのは本田拓也の責任である。PK戦で勝利した今となっては、それは良好な失敗経験となった。捲土重来を期待したい。
PK戦、これだけのビッグゲームで1本も入らなかったと言うのは極めて珍しい。思い出すのは、85−86年シーズンの欧州チャンピオンズカップ決勝のステアウア・ブカレスト対バルセロナ。ステアウアのGKドゥカダムがバルサのPKを全て止めた試合か。今回の川島の快挙は、それに匹敵する見事なものだった。
PK戦が進むにつれ、ベンチの趙広来氏の表情がどんどん悲しくなっていくのを見るのは愉しかった。25年前のメキシコワールドカップ予選、私にとって選手趙広来は過去の韓国選手の中でも最大級の忌々し度をもつ男だ。その趙広来の絶望的な表情。何とも言えない快感だった。
最後に敵を称えたい。この試合が同点に持ち込まれてしまった最大の要因は、後半以降の日本の右サイドの攻防にあったと見た。老獪な李榮杓が内田を完全に殺したのだ。何ともいやらしい位置取り、ギリギリまで我慢した応対。単純な瞬発力や脚力では圧倒できるはずの内田は、完全に李榮杓に押さえ込まれた。腹が立つ事この上ないが、何とも芸術的な守備だった。
李榮杓は代表を引退すると言う。過去約10年に渡り、幾度も忌々しい思いをさせられてきたこの名手。最後の最後までやられてしまった。この日完敗した内田も、逆サイドを蹂躙した長友も、この隣国の偉大な選手を2014年までに完全に超える事ができるかどうかが1つの目標となる。
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精神力というよりも、経験の差、ではないかと。大舞台でのPK戦という異常な事態に対応できないことは、あの人選を見ても明らか。若者に経験を積ませる、といえば聞こえがいいけど、なんであの人選なんだろう。
非論理的な言い方かもしれませんが、ザックさんの余りに守備的な交代が本田のファールを呼んだような気がしないでもありません。日韓戦に特別な思いを抱く李忠成を入れて前線でパスの出所を潰すことを試みてもよかったような。
以上、文句終了。
土曜日の夜が楽しみです!香川の欠場は、モチベーションの高い控え組が、必死に埋めてくれるでしょう。
それでも、PKではあるけど、試合には勝てた。
おっしゃる通り、あの絶望感から切り替えられた事、その逞しさが嬉しいです。
にしても、5年も勝ててなかったとは…。
決勝の相手豪州も、韓国ほどではないけど忌々しい敵(笑)、カンガルーパンチのニヤケ面は見たく無いです。
先攻の勝率は6割だとか…、W杯では9割だとか…(本当かね)、まーでも統計処理すれば(t検定?)有意差ありそうな気がします。
だから、基本的には遠藤がコイントスで勝った(のかな?)時点で、文字通り勝ったようなもんだったのかも知れません。
とはいえ、武藤さんが指摘するように、同点ゴールを決めたときの韓国の選手たちの喜び方は些か過剰であり(ただの同点なのにね)、それゆえ彼らの試合に対するナイーブさが表れていたように思います。
何はともあれ日本が勝ってよかった。
ぜひ優勝してコンフェデに出て欲しい。
そして、5バックにして結局守り切れなかったことについて、「守備の文化がないから」とかいっちゃう人もいるようですが、文化的なものは徐々に醸成されるものだろうし、〜文化論については疎いんで特になんともいえません。
ただ、恐らく不慣れであろう3センターバック(5バック)にせずとも、伊野波も今野もボランチができるわけだから、4バックのままダブルないしトリプルボランチにしても、センターラインでしっかりブロックを作ることは可能であったように思います。
4バックを維持できれば、もういく分支配率も期待でき、失点もなかったかも知れません。
いずれにしろ、5バックにしたことは、結果が欲しいあまりの臆病な采配に感じたし、失点もしてしまったので、リスクマネジメントとしてはいまいちだったと思います。
ザックには些か(些かね)がっかりしました。
どんな素晴らしいコーチが監督であろうとも、過剰な期待は禁物…、ということでしょうか…。
僕はそういうことにします。
本気で真剣勝負の日韓戦なんてそうそうあるもんじゃありません
ましてやPK戦まで行って勝利するとは!いつまでも忘れられない大会になりました
疑問が一つ
香川真司の怪我が何故わからなかったのかです
アドレナリン全開でプレーしていたのでしょうが明らかにパフォーマンスは落ちていたのではないでしょうか
あれだけの怪我なら廻りも気付いたのではないでしょうか
ザッケローニ監督の交代判断に大きく影響したのですが何時怪我をしたのか何時わかったのかを大会終了後でも知りたいものです
ただ、この強さはまだ本物ではない。
長谷部、本田圭、岡崎、細貝、闘莉王(今回はいないけど)
といった何人かの圧倒的な精神力を持った選手たちが
チーム全体を引き上げているにすぎない。
全て大事だがあえて1つ選ぶとしたらそれは「精神力」だと思う。
そして世界トップと比べて日本一番劣っている部分・・・それも「精神力」だと思う。
俺に言わせれば、日本の育成は強化するポイントを間違っているね。
それ以外の選手は全然駄目といいたいのかな?
何様だよw
運動量やテクニックと違って、測定する事も比較する事も不可能で、それ故、安易に「精神力が足りなかった」と使われる事が多いですね。
ブラジルやドイツのようなメンタルタフネスの権化のような国であっても、非常にナイーブな形で敗れ去る事があるのですから、どんなレベルにあっても「足りない」と言われ続けるものだと思います。
私は「精神力」を「どんな困難な状況でも勝利への意志を失わない力」だと考えています。
かつての日本はアジアの国に対しても、戦う前から勝利の可能性を信じていませんでした。
またドイツW杯でも、困難に直面して、アッサリと心を折られてしまいました。
しかし、今大会の代表選手は、準備期間も無く、日程も最悪で、怪我人が多く、審判に苦しめられ、最強の敵に土壇場で追いつかれるという、これ以上ないほどの悪条件でありながらも、見事な「精神力」で勝利を手繰り寄せてくれました。
やはり「精神力」とは修羅場をくぐった経験によって培われるものなのだな、と実感しました。
武藤さんの仰るとおり、南アフリカで高いレベルの競った試合を経験した事が、代表チームの「精神力」の強化に大いに貢献したと思います。
あと1試合。
死闘を演じ、エースを失った日本。完勝劇で悠々と決勝進出を果たしたオーストラリア。
苦境にあるのは我々です。
決勝戦でも、その精神力を見せてくれる事を期待しています。
日本ー韓国戦は、不思議と120分+α負ける気がしない試合でした。もちろん韓国の強さ・すごさは随所に感じましたが
というのも、あのおかしなPK以外、常に「先手」を取れていたからだと思うのです。後半、同点状況でかなり押し込まれていましたが、それも「こういう時間帯もあるよね」的な感じで、得点されるニオイはあまりなかった。…ということは120分やれば勝てるだろうと。(実際はちょっと違いましたが)
あと、この日本ー韓国戦が、ガルフ諸国や中国、韓国で非常に高く評価され、日本代表の戦いが称賛されていることも嬉しいですね。
韓国、趙監督が「日本はこのパスサッカーを5年かけて作ってきた。われわれはまだ43日間だ」的なことを語ったそうですが、韓国や中国の指導者・選手が(オシム以降の)日本のサッカーの進展を非常によく見ていることをありがたく、頼もしく思います。(それと同時に、将来はもっと手ごわくなるな〜とも。でも、それもまた楽しみです)
東洋人が得点後に猿のマネをすることで、「馬鹿にされた」と嘆く日本人はいたのでしょうか?
もしいたとしても100万人にひとり位の割合でしょう。
その位に圧倒的な文化の差、民度の差を感じました。
「旭日旗云々」は後付けの言い訳に過ぎません。彼こそがまさに誤った教育や洗脳、低いモラルに踊る猿。
FIFAに厳罰を望むとともに、彼の愚か過ぎる行為が蹴球選手としての命まで絶ってしまわないことを願います。
なあーんていっちゃあいけないよう.
その中心に遠藤がいることもうれしい。本当に老獪な選手になった。二手三手先を考えた(であろう)プレーの一つひとつを堪能するのも試合後の楽しみです。
例えば、カタール戦の香川の2点目。本田に出した横パスは、香川と岡崎のところに密集している敵DFを一枚はがすための仕掛けパスでしょう。単なる逃げのパスにも見えるでしょうが、そこに深みが感じられる。判断力の確かさとプレーイメージの豊かさ…、もう、たまらんですよ。
個人的に日本歴代最高の選手。いつまでプレーしてくれるのか。ぜひ、ブラジルでも見たい。