2011年02月10日

代表のストロングポイント

 アジアカップにおける日本の最大のストロングポイントと言えば、誰もが遠藤保仁と長谷部誠で組むドイスボランチと答えるのではないか。実際この2人のそれぞれの技巧、判断力、精神的な粘り、そしてリーダシップ、いずれも他国のボランチのそれを凌駕していた。この2人は(他の選手もだが)南アフリカと言う究極の経験をした事により、格段にレベルの高い選手に成長したと言う事だろう。
 この2人の能力が他を圧していたからこそ、フィジカルコンディションが揃わなかったチームが、CBに課題を抱えつつ、審判の愉しい判定に苦しみながらも、優勝できたのだ(あ、もちろん他の選手も、ザッケローニ氏も、すばらしかったですよ)。
 今大会目立った他国のボランチをおさらいしておこう。イランのネクナムの強さは中々だったが展開力はもう1つで攻撃に変化がつけられなかった、イラクのアクラムの技巧的で気の利いた組み立ては魅力的だったし、ムニールのボール奪取は目を見張ったが、2人ともスタミナが不足しており終盤のプレイには不満があった。奇誠庸は日本戦やイラン戦で押し込まれると思うような組み立てができず、さらにはプレイ外の愚行で若さを露呈した。他のポジションはさておき、ここの2枚だけは遠藤と長谷部が、他国を凌駕していたのだ。

 一方で、ここまで2人の能力が卓越していると、逆に将来が心配になってくる。遠藤は若くはないし(決勝直後に語ったように「これから」の遠藤の活躍は愉しみ極まりないが)、もし長谷部が負傷などで離脱した場合にあのキャプテンシーが不在でチームは、あそこまで精神力を発揮できるのか。と、うまく行けば行く程、心配過多になるのが、またサポータ冥利と言うものなのだが。
 と言う事で、この2人を脅かし得るライバルについて俯瞰するのが今日のお題。

 この2人には同年代のライバルが3人いる。
 今野泰幸、阿部勇樹、中村憲剛である。今野は今大会も、最近FC東京においても、センタバックとして見事なプレイを見せているが、本来はやはり中盤で「刈り取る」のが魅力の選手。決勝戦の最中に「中盤でプレイするのは無理」と、ザッケローニ氏とやりとりしたのが話題となったが(デンマーク戦の遠藤と岡田氏の議論、この場面の今野とザッケローニ氏のやりとり、いずれも日本選手の格段なる成熟の証左と言えよう)、あの「刈り取り」を代表で見せてくれる日は再来するのだろうか。
 阿部はイングランド2部で堅実に活躍中と聞く。おそらくイングランドの2部と言うからには、プレミアとは異なり、昔からのイングランド風のサッカーが展開されているのだろうが、そこでの経験は阿部をさらに堅実にしてくれる事だろう。さらには、ボール奪取にも展開にも妙味を発揮できるタレントだけに、30前後になってから味が出てくるはずだ。あの射程の長さに老獪さが加わわるとすれば、代表から忘れてよいタレントではない。
 そして、憲剛。もし、今大会優勝を逃す事になっていたとしたら、憲剛不在が相当な議論となっていた事だろう。しかし、ザッケローニ氏は賭けに勝ち、優勝するのみならず柏木陽介のデビューにも成功した。憲剛はこのオフに欧州行きが噂されたが、結局フロンターレに残留。あの「パッと見えた瞬間、ザクリと出す」能力は欧州のトップでも十分に通用すると思っていただけに残念にも思うし、その恐怖をJでまた味わえるのに安堵感もあるし。昨秋の横浜パラグアイ戦では、自身の代表史上最高とも言えるプレイを見せ、香川へ鮮やかなアシストを通したのは、ザッケローニ氏も忘れ難いはず。優秀な若手が登場しているとは言え、やはりこの男は代表には必要不可欠だと思うのだが。

 その憲剛不在に登場したのが柏木だった。サウジ戦にシンプルにボールを散らしてゲームを作った柏木は上々の代表デビュー。遠藤の後継者として名乗りを挙げた。本田や香川のような派手なタレントが多い日本の中盤にあって、運動量があり、正確な短いパスでペースを作れる柏木はピッタリの存在のはず。ただ、準々決勝以降全く声がかからなかったのは、ザッケローニ氏の信頼がまだまだと言う事なのだろう(いずれの試合も非常に采配が難しい展開になった事を割り引いても)。
 同じように遠藤の後継候補と言うと、スペインに行った家長昭博。元々はウィングタイプのプレイが多かったが、トリニータ時代にポポビッチ氏にボランチに起用されて、その位置での才能を発揮しだした。セレッソではボランチにマルチネスがいるため、前目で使われる事が多かった。しかし、マルチネス不在時での中盤後方でのプレイを見ると、やはりここで才能を発揮して欲しいタレントだ。マジョルカではまず試合に出る事が全てなのだが、過去中々日本選手が安定して活躍できなかったスペインリーグで、どこまでやってくれるか。
 今大会、第3のボランチとして度々起用され、日韓戦では見事なPK後の詰めを見せてくれた細貝萌(あの詰め以降、我が少年団の子供達はPK時に一斉に萌詰めを試みるようになった、おそらく日本中でそうなっているのだろう)。既に準レギュラとしての地位は確保していると言えるタレントだ。昨期レッズでは鈴木啓太から定位置を奪うのみならず、豊富な運動量で活躍。ACL制覇、拡大トヨタカップ、北京五輪、そして今回のアジアカップ制覇と、国内屈指の豊富な経験を持つ細貝。労をいとわないタレントだけに、ドイツでも高く評価されるのではないか。
 日韓戦の延長ロスタイムに残念なプレイを見せてしまった本田拓也。幸いにあのミスが致命的にならなかっただけに、格好の失敗経験となった。とは言え、あのミスは彼の成長のためにも、厳しく糾弾され続けるべきだろうが。もっとも、昨期のエスパルスでのプレイ振りは、アントラーズが違約金を支払いながらも獲得しただけの事はあった。天皇杯決勝でも1人でエスパルスの中盤を支えたプレイは記憶に新しい。今期こそアジア制覇を狙うアントラーズで、一気にレベルアップする事を期待したい。
 もちろん、米本拓司がいる。まだ20歳ながら、格段のボール奪取力と落ち着いて展開できる能力は格段。長期の負傷離脱からの復帰後、すぐに好プレイを見せたものの、リーグ終盤で今一歩のプレイ振り。天皇杯準決勝では軽率なプレイで退場になるなど、苦い思いで昨期を終えたはず。まずは五輪代表の中核を担う事になるのだろうが(どうでもいいが、どうして中東遠征に行っていないのでしょうか)、「素材感」は最高のものがあるだけに、期待は大きい。

 と、まああれこれ考えると、相応にタレントは豊富だな。
 ベテラン勢はそれぞれワールドカップを経験する事で、格段にレベルを上げているだけに、若手にとっては厳しい挑戦となる。しかし、一方で従来とは異なるレベルとなった代表で遠藤や長谷部と共に戦う事で、疑似体験を積めるはず。海外でプレイする選手も、Jで戦う選手も、高い意識を持って2014年を目指して欲しいものだ。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(1) | TrackBack(2) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
中堅だと、青山敏や梶山にも期待したいですね。
兵藤や小椋の成長にも。
他にも何人か成長を期待してる選手がいるので
誰がNEXT遠藤、長谷部になるか楽しみです。
Posted by at 2011年02月12日 07:01
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