久々の東京ダービー、28,000大観衆が作り上げたすばらしい雰囲気の下、野次馬としておもしろい試合をすっかり堪能させていただいた。ヴェルディの選手の識別に悩みながらだったけれども。
個人的には今年のヴェルディは相当やると期待していた。昨期序盤は経営そのものが不安定な事もあり成績も悪かった。けれども、新スポンサの確立や、Jリーグ事務局の羽生氏の社長就任などが進むうちに成績も向上し、そのまま昨期から継続して川勝氏が采配を振るうからだ。ところが、ここまで3連敗。どのような状態なのか。
J1でも優勝を争えそうなメンバ構成(と言うか残留説得)に成功したFC東京も、1勝1分け1敗とはっきりしない成績。こちらは昨期天皇杯から明確なチーム作りの方向性が見えないので、ある程度苦戦する事は予想されてはいた。ただ、友人たちがあまりに悲観的な戦評を書いているので、野次馬的な興味はそそられた。
結論から言えば両軍ともそう悲観的な内容にはとても思えなかった。お互い中断期間の調整はうまく行かなかったようだが。
序盤はロベルト・セザーがうまくボールを受けたFC東京が、両サイドバックの積極性もあって好機を複数回掴む。特に開始早々の梶山の前進は決定的だったが、あれが入らないあたりが、チームが調子に乗り切れない所以なのかもしれない。
さすがに土屋がセザーを厳しくマークするようになると、FC東京が攻め込めなくなる。そして、複数回ロングボールからヴェルディがFC東京守備陣の裏を突く攻撃を見せると(ただし今野と森重の速さと強さを突破するに至らない)、FC東京の椋原、阿部の若い両サイドバックが押し上げられなくなる。すると、森勇介と福田の両サイドバックが精度の高いサイドチェンジを見せ、小林祐希(たぶん...何せ背番号が判別できないので正確には誰だかわからない)が的確にさばくヴェルディが次第にペースを握る。ヴェルディの攻撃ラインは、彼らを信頼して早い動き出しを見せ前線に起点を作り、そこから河野広貴を軸にヴェルディ伝統の短くて速いパスで崩そうとする。ただ、最後の最後で今野と森重が防ぐ。また、ヴェルディの中途半端なクロスはすべて権田が確実に押さえる。
後半に入っても同じ展開が続く。セザーが軽率なダイビングで退場になったあたりから、逆にヴェルディが攻め疲れの感が出てくる。そして、FC東京がペドロ・ジュニオールと谷澤を起用し、椋原と阿部が前進できるようになり攻勢を取る。ヴェルディは前半スタメンFWの平繁が負傷し交代カードを1枚使ってしまったためか、修正できない。以降は1人少ないFC東京が終始押し込むが、ヴェルディも粘り強く守り、最後はGK土肥が負傷退場し平本がGKを務めるハプニングもあったが、そのまま0−0で終了した。
双方が最後まで「戦う意思」を前面に出したおもしろい試合だった。
ヴェルディだが、攻撃の約束事は確立されているし(小林、福田、森の好フィードに選手が飛び出す攻撃は魅力的だ)、最終ラインの粘りも中々。何のかの色々な評価があるようだが河野のドリブルはシャープ。平本、平繁が点を取ってくれれば、上位に粘ってくる事だろう。そうなれば、川勝氏の采配の巧みさは利いてくるはずだし、若手の有力な攻撃タレントの成長は愉しみ。ちょっと終盤のガス切れが気になったが。
FC東京も前半はいただけなかったが、後半両サイドバックが押し上げるようになってからは攻撃もそれなりに機能した。平山と米本が離脱し、中々点は入らないかもしれない。しかし、鈴木達也、羽生、谷澤は後方からのサポートがあれば、好機を作り続ける事は間違いない。そして何より、今野、森重、権田が固める守備ラインからJ2のクラブは、ほとんど得点できないはずだ(だいたいこの4試合での失点は、オーロイにやられただけなのだ)。点は入らなくても、点を取られなければ順位は間違いなくついてくる。
中々エンジンがかからない両クラブにとっての心配事は、複数の他クラブが突っ走り、早々に差が開く事か。しかし、今の所、その可能性が一番高そうなサンガも調子が上がらないようだ。また、ジェフはオーロイの負傷次第だろうが、オーロイが欠けた瞬間に敗れたのを見る限り、攻撃の幅は少なそう。横浜FCもサガンもそこまで早々に調子を上げるには至っていない。栃木SC、ロアッソ、ヴォルティスはそこまで連勝できる戦闘能力はないように思える。そう考えると、反町氏が創意工夫をこらし、比較的早い段階でチームを仕上げてくるだろうベルマーレが間隙を縫って抜け出す可能性くらいか。
そうこう考えると、両クラブとも十分にJ1昇格の可能性はあると思うのだが。特にFC東京は今後、今野、森重、鈴木達也、谷澤のいずれかが長期離脱しない限りは、3位内に入る可能性は十分にある。FC東京周辺から聞こえてくる悲観的意見は、よくわからない。もちろん、もっと有効なやり方はあろうし、現状のコストパフォーマンスがあまりよくないのは間違いないけれど。
2011年05月06日
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