2011年06月19日

東慶悟と酒井宏樹に突き付けられた反省

 開始2分過ぎだったか。日本の連続CKをしのいだクウェートが後方からロングフィード。それを受けようとしたクウェートの選手(たぶん6番だったか)に、鈴木大輔が厳しく当たり、簡単にボールを奪う。鈴木は落ち着いて左サイドに精度の高いボールを入れる事に成功した。この場面を見て、正直ここ最近の緊迫感が、過剰警戒だった事を認識した。クウェートはフィジカルも技巧も、それほど強くない。相当戦闘能力に差があるのが、はっきりとわかったのだ。鈴木大輔はJを代表する優秀な若手CBだが、いつもはアルビレックスでもっと厳しい敵攻撃選手と戦っているはずだ。

 私たちは根底に考え違いをしていたようだ。関塚氏はすべてわかっていたのだ。クウェートは弱い。この明らかに格下の敵に確実に勝つために(あるいは勝つ確率を最大限にするために)、氏は淡々と準備を進めて来たのだ。
 たとえば、濱田水輝。レッズでもほとんど出場経験がない(出場した際の不出来も印象的だったのだが)だけに、私は起用を疑問視していた。このポジションには村松大輔もいる。Jで存分な結果を残している渡部大輔や青木拓矢を中盤に起用して、山村をCBに下げて鈴木大輔と並べる手もある。高橋峻希を右サイドに起用して、頭のよい酒井宏樹をCBで試すのも1つのやり方だ。
 けれども、このクウェートを見て、関塚氏の慧眼に感心した。クウェートに中盤を制される心配はない。ならば、前に強く、高さもある濱田は、とても有効だ。実際、前半から濱田は厳しい守備で敵を封じると共に、セットプレイから鮮やかな2点目も決めてくれた。さらに言えば、こうやって五輪代表で経験を積む事で、この185cmの優秀な素材は間違いなく成長するはずだ。加えて、山村が中盤で利く。この守備力と展開力を具備する若者は、鈴木大輔と濱田がクウェートの攻撃選手を止めるや否や、すぐに挟み込んでボールを奪い、素早い展開で組み立てる。確かにこの相手ならば、この位置に守備が強い選手が欲しい。
 かくして前半から日本が圧倒。攻撃のリーダ東慶悟を軸に猛攻を仕掛ける。東は、時に大迫を追い出し前線で引き出したのみならず、強引にシュートを狙う。あるいは、時に後方に引いて、そこに清武や山村や山崎を進出させて、鋭いラストパスを繰り出す。かくして、日本は幾度も決定機を掴みながら決め切れずにいたが、18分に日本が先制。右サイドから、清武と酒井の巧みな連携から2度崩し、クウェートのクリアを拾った山村が左にシンプルに展開、それを受けた比嘉が左をえぐりセンタリング。この揺さぶりでクウェート守備陣は、完全にボールウォッチャになり、逆から飛び込んだ清武が見事なダイビングヘッドを決めた。さらに38分CKから濱田がダイナミックなヘディングを決めて2−0。重要なのは、得点の時間帯。20分おきの2得点と言うのは、押し込んで揺さぶったために、敵DFが疲れ切った事を示している。見事な前半だった。

 後半は立ち上がりに厳しくプレスをかけて、クウェートを沈黙させたいところだった。しかし、クウェートも必死の抵抗。後半立ち上がりから、前線に人を増やし、前掛りに来た。しかし日本は鈴木を軸に冷静に対応。落ち着いて攻め返し、16分には山崎の好技から、大迫が抜け出し落ち着いて3点目を決めてくれた。
 こうなれば、試合の全ては日本のものになるはずだった。このまま試合を終えてもよい。もしクウェートが強引に出てくれば、落ち着いて逆襲し4点差、5点差にするのも難しくないはずだ。ところが、ここまで落ち着いた守備で右サイドを封印し、鋭い攻撃参加で再三決定機を演出していた酒井宏樹が信じ難いミス。後方からプレスを受けながらボールをキープ、中央の鈴木が権田へのバックパスを指示したにもかかわらず(つまり権田がそれを受ける準備ができていたにもかかわらず)強引に振り向こうとしてボールを奪われ、そこから崩されて失点してしまった。
 酒井はJでの実績、冷静で知的な守備振り、右サイドから繰り出す高精度クロス(特に先日のマリノス戦で北嶋に合わせた高精度クロスが最高だった)で、このチームではA代表に最も近い存在と言う雰囲気があった。実際この日も幾度も高精度のクロスを上げ決定機を演出していた。しかし、この軽率なミスでその地位を完全に失ったと言ってもよいだろう。この大事なタイトルマッチであり得ないミスだった。関塚氏は酒井を猛省させるために、レッズの高橋峻希を呼び、酒井を外すくらいの事をすべきではないのか。と言いたくなるくらいの残念なプレイだった。
 関塚氏としても、疲労が顕著な後半半ば過ぎにアウェイゴールを奪われて2点差となったので、もう後方の選手に一切無理をさせない判断。酒井も比嘉も押し上げず、山村か山口蛍(山本に代って起用された)も、後方に残る安全策となった。こうなると、日本は前半のように「前に前に」と行ってはいけないのだが、エースの東はこの時間帯でも積極的に「前に前に」を継続してしまった。前半の東の攻撃リードは実に見事だったが、後半特に1点取られてからは大いに不満。あそこは、落ち着いて後方でキープし、クウェートを引き出しておいて、大迫や原口に裏を突かせたかった。東も酒井と同様に、目指すはロンドンではなくて、ブラジルやロシアのはずなのだから。

 まあ、終わってみれば、ホームで3−1の完勝。「敵地で2−0で負けたらどうしよう」と言うテレビ局的な煽りを相手にする必要はあるまい。いくら敵地、高温灼熱でも、相手はこのクウェートなのだ。そのような僅少な確率を心配するのではなく、彼らがそのような適度なプレッシャを受けながら、難しい敵地戦を経験し、より逞しくなるのを期待するのが健全と言うものだろう。そして、そのような経験の積み上げのために、このような若年層の国際試合があるのだ。
 大事な事は、2014年にザッケローニ氏が、彼らの世代から何人を選ぶかなのだから。
posted by 武藤文雄 at 23:24| Comment(1) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とりサポですが、東が武藤さんにここまで言われる存在になるとは。トップチーム入団時は、想像も出来ませんでした。改めて若者の成長ってすごいですねぇ
Posted by げる at 2011年06月20日 19:23
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