2011年06月27日

U17、2次トーナメント進出

 ワールドジュニアユース、U17代表が堂々と1次リーグをトップで通過に成功。それもアルゼンチン、フランスと同じグループでのトップ通過なのだから、すばらしいではないか。ついでにジャマイカにしっかりと勝った事も、かつての甘酸っぱい思い出に浸る事ができて、それはそれでよかった。
 特にアルゼンチン戦の3得点がよい。右サイドの石原が見事な技巧で1対1を制したところからの先制点。CKからの植田の高さで完全に勝利したヘディングによる2点目。そして、敵の一瞬の隙をついた鈴木武蔵の敵の隙を突く突破からの3点目。たしかに、過去アルゼンチンはU20は滅法強いのに対し、必ずしもこの世代は格段に強くはない。そうは言っても、技巧と高さと狡さで、それぞれ上回って、このサッカー超大国に勝利したのだから、気持ちよい事この上なかった。

 さて、今回の2次トーナメント進出は93年の日本大会以来、18年ぶり、2回目と言う。
 あの1993年は、言うまでもなくJリーグ開幕年であり、ドーハの悲劇の年だ。元々、広告代理店の巧妙な販売促進政策が奏功し、大きく注目を集めていた日本サッカー界。それに加えて、前年秋にアジアカップを初制覇し、J開幕前には最終予選進出を決めた日本代表の前代未聞の好成績。Jはどんな試合でも満員売り切れ。あの年の日本サッカーは「異様」としか言いようのない雰囲気に包まれていた。
 その中で行われた大会。開幕戦のガーナ戦は国立で行われたのだが、試合前に「久しぶりに空席があるじゃないか」と友人と語り合ったのが忘れ難い。あの年のJは、国立開催の試合のほとんどがチケット売り切れ状態だったのだ。
 日本の戦いぶりもよかった。国見高校の小嶺先生に、読売クラブ出身の小見幸隆氏がコーチ(この2人の組み合わせを考えた人は誰なのだろうか、実に見事な組み合わせだった)の、まとまりのよいチームだった。初戦のガーナに敗れたものの、イタリアに引き分け、メキシコに勝って、準々決勝進出。準々決勝ではナイジェリアに敗れるが(決勝はガーナ対ナイジェリアだった)、非常に守備の強いチームだった。
 中でも忘れられないのは、3DFのセンタを務めた鈴木和裕のプレイ。抜群の反転の速さと、読みのよさ、さらに精神的な落ち着きで、全軍をリード。一緒に応援していた植田朝日が、ガーナ戦突然に、当時全盛期を迎えつつあった井原の応援歌の節で「スズキー、スズキ、スズキー」と歌い出したのも、忘れ難い想い出だ。
 鈴木はその後順調に成長、市立船橋3年次には主将として活躍し、圧倒的な強さで高校選手権を制覇。ジェフに加入し、すぐに3歳年上の中西永輔から右サイドバックの定位置を奪った。このまま、アトランタ五輪代表を経てA代表入りも望めるかと期待したのだが、そこから急に伸び悩み、大きく成長はしてくれなかった。確かにセンタバックとしてはやや小柄で、サイドバックとしてはスピードはあるが自分で持ち上がるプレイがあまりうまくなく、タッチラインの使い方にも課題があった。結局いずれのポジションをするべきか、迷っているうちに持ち味の読みのよさが失われてしまった感があった。それでも、ジェフ、サンガ、ホーリーホック、それぞれで見せてくれた、精神的にしっかりとしたプレイ振りは見事だったのだが。
 あの93年のすばらしかった鈴木のプレイを思い起こすたびに、若い選手の成長の難しさを考えてしまう。
 一方で大成した選手も多かった。鈴木の左右で3DFを構成したのは松田直樹と宮本恒晴。松田のフィジカルの強さと、個人戦術眼のよさは、この大会でも十分に見てとれた。宮本の冷静さは大したものだったが、反転の遅さと言う欠点もこの大会で確認できた。けれども、この選手は持ち味の冷静さを最大限に成長させ、選手にとって「長所を伸ばす」事の重要性を存分に見せてくれた。
 そして、中田英寿と財前宣之。右サイドを見事な技巧で突破していた中田、正確なプレースキックで好機を演出した財前(この大会はキックインがテスト導入され、それを活かそうとした日本が敵エンドでタッチラインを出たボール全てを財前に蹴らせたために、プレイされない時間がとても長くなった。そのため、キックインのつまらなさが理解され、この制度は導入されなかった)。この2人が、それぞれ4年後と8年後に、私の人生の中でも1番目と2番目と言っても過言ではない歓喜を味合わせてくれるとは、当時思ってもみなかった。

 さて、今回のチーム。この若さで、チーム全体として少々まとまり過ぎているのではないかとの想いがない訳ではない。しかし、アルゼンチンやフランスに対して、組織力のみならず個人のサッカー能力(技巧、判断、フィジカル)のいずれでも、ほとんど遜色なかったのだから、文句を言ってはバチが当たるというもの。以降も伸び伸びと戦い、1試合でも多くの成功体験を積んでくれる事を期待したい。
実はこの世代は、私の坊主の世代となる。坊主はサッカーからは離れてしまったが、今戦っている彼らは紛れも無く坊主の同年代の日本中のサッカー小僧から選ばれし若者達。そう考えると、一層思いは募る。79年のワールドユース日本大会は「自分の世代」の戦いに興奮したものだが、とうとう「坊主の世代」に興奮する年齢になってしまったか。うん、愉しみは尽きないな。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(8) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自分は2002年以降にサッカーファンとなりましたが、
30代半ばになり、「サッカーが好きだということは老後もめちゃくちゃ楽しめるのでは」と気づきました。

どこか暗雲が漂う日本において数少ない上昇曲線を描きまくっている日本サッカー。
元気と勇気を得ている人は少なからずいるのでは…と思います。

ぜひ女子サッカー日本代表についても講釈をお願いします。
Posted by 77 at 2011年06月29日 01:36
>右サイドの石原

川口選手のことでしょうか?
Posted by at 2011年06月29日 11:30
城福監督の時には本大会ではパスワーク不発でしたし
基礎技術的なところは下の年代に行くほどまだ進化してますね。
成長という話では、あそこにいるのはただの選抜メンバーですから
その外にはたくさんの金の卵が眠っている事を忘れずに。

本大会はそんなことは気にせずに、現在のU17代表の活躍を楽しみましょう。
ほんとにすごい進歩ですよ、今の子供たちのスキルは。
Posted by at 2011年06月29日 11:57
はじめてコメントさせていただきます。

いや、すごいブログです。
思わず過去まで遡り読んでしまいました。
面白くて,楽しくて。
ただし、コメント部分だけですけど。
だって、改行がなくて読みづらいんですもの。

何がスゴイかって、
初めてです。
こんな、

上から目線

のブログ。
タイトルもすごいけど、プロフィールもビックリ。
「お前は見るプロだと言われました」
って…
フツーの人だったら、そんなこと書きませんよね。

コメント陣がまたスゴイです。
「全面的に同意します」
こんな、太鼓持ちみたいなコメント初めてみました。
スゴスギです。

ところで、
石原?
とか宮本恒晴?
についてはさておき、
財前弟が、
(個人的には兄の方が印象深かったです)
93年の4年後8年後に味あわせてくれた歓喜、
とありますが、
8年後はたぶん仙台の昇格のことなんでしょうが、
4年後ってなんでしょうか。
いくら考えてもわかりません。
97年は、スペインからケガで戻ったものの、ヴェルディで出番がなかった年なんですが。

あまり詳しくない私にどうか教えてやって下さい。
あ、ご本人はコメントしてないようなので、取り巻きの方でもかまわないんですが。
Posted by ひろし at 2011年06月29日 22:54
オレは「取り巻き」とやらでもなんでもないわけだが。

「4年後」は中田のほうだろ。

ロクに日本語も読解できないくせに、慇懃無礼な皮肉(のつもりの)コメントして悦に入ってるのって、笑止千万ですね。
Posted by なんだ「ひろし」ってのは at 2011年06月30日 09:15
「この2人が、それぞれ」って部分が
読解できなかったのですね。
日本語は難しいですからね。わかります。
難しい言語で無理にコメントしない方が
よろしいのでは。
Posted by at 2011年07月01日 00:58
また、挑戦者(?)が現れましたね。

武藤さんのサッカーをみる目、サッカーに対する愛情は、何だかんだで並大抵ではないですよ。

ま、しかし「全面的に同意」する旨のコメントはあってもなくてもいいかも知れませんね。
武藤さんと全て同じ意見なら、わざわざコメントを残す必要は、あまりないような気がします(あるような気もします)。

とはいうものの、このままだとただの慇懃無礼っつーかフツーにブレーな若者(?)に過ぎませんので、サッカーの試合に対するエッセイ並びに自らのサッカー愛を開陳するラブレターで、我々を魅了してください。

よろしくお願いします。
頑張ってください。
Posted by ロベウト・バッソ at 2011年07月01日 02:49
うーん、なんかちょっとこういうのも楽しいかも(挑戦者らしさ溢れる、下から目線? が)

>フツーの人だったら、そんなこと書きませんよね。

そ、そりゃ日本サッカー狂会……

……失礼しましたー
Posted by Dortmund06 at 2011年07月01日 18:20
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