2011年07月06日

角田誠の向上

 U17についても、女子代表にも、書きたい事は無数にあるのだが、今日は今日でベガルタの選手について。昨日は移籍する斉藤大介だった訳だが、今日はその斉藤から定位置を奪う(それもベガルタでもサンガでも)形となった角田誠について。
 今期ここまでのベガルタの好成績に、いわゆるアンカーに位置取る角田の見事なプレイが貢献しているのは言うまでもない。元々、肉体能力の高さと気の強さから来る守備能力の高さに加えて、安定したボール扱いができ、ユース代表時代から早々のA代表入りが期待されていたタレントだ。しかし、当然レギュラ候補と思われたアテネ五輪代表に選ばれる事なく、伸び悩み今日に至った。
 そして、ベガルタの手倉森監督は、昨期終了直後から最大の補強ポイントとして、中盤後方の守備能力の高い選手の獲得を示唆していた。そして、その目的で獲得したのが角田だった。そう言う意味では、その高い守備力は獲得前からの期待通りとも言える。しかし、現実的には今期の角田のプレイ振りを見ると、その期待を大きく上回ったプレイを見せてくれていると思う。

 今日(7月6日)発売のエルゴラッソに、その角田のインタビューが掲載されている。インタビューアは、おなじみ板垣晴朗氏。そして、今期の角田の向上の要因が実に的確に引き出されており、実に読み応えのあるインタビューとなっている。
 角田の言葉の一部を抜粋したい。まずは今期の向上が、必ずしもベガルタ移籍後によるものではないと言う下りから。
(前略、前サンガ監督秋田氏の指導により)ボランチでプレーするときには、常にCBの前にいてコースを消すことを求められていました。それを意識していたら守備範囲が広くなったんです。周りが見えるようになって、安易にボールに行くことがなくなった。(後略)
 大変おもしろく、興味をそそられるコメントではないか。CBの前に位置取りするいわゆるアンカーとしてのプレイの、言わば「コツ」を、敵にひきづられずにゾーンを守る事にあると体得したと語っている訳だ。さらに、その指導が日本屈指のハードマーカだった秋田氏の指導の賜物と言うのが、また愉快ではないか。
 続いて、ベガルタ加入後の向上について。
(前略)攻撃面では、最初はやはり付いていけなくて、僕のところでパスミスすることも多かったんですよ。仙台の選手はボールを離すタイミングが早くて、カウンターのときは自分で運ぶけれども、ビルドアップのときは少ないタッチでパスを回せる。それがどうしてもうまくいかなくて…。練習の中で意識しないと変わることはできないと思って、ワンタッチでやる意識を持っていたら、攻撃面でもみんなと同じイメージでできるようになってきたと思っています。
 これはもう、ベガルタサポータとしてはニンマリするしかないな。J1昇格を決めた一昨シーズンから、ベガルタの最大の武器はツボにはまった際の「湧き出る速攻」にあった。これは、多くの選手の相互理解と的確な判断による、素早いパス回しによるもの。角田も最初はそれについて行かれなかったものの、自らの創意工夫で、能力を向上させ、自らのものにしたと語っている。実際、震災中断直後のフロンターレ戦では、角田のミスパスから先制を許し、またその他の場面でも稲本に角田は再三狙われていた。しかし、試合を重ねるに連れ、角田の球出しは早さ、精度共に充実してきたのは、ご存知の通り。そこに至るまでの角田の努力や鍛練を、短いコメントから具体的に知る事ができるのがよい。
 自らの向上を具体的に言語化できると言う事は、その向上を客観的に理解している事であり、またそれが完全に血となり肉となっている事を示している。角田は昨期から今期にかけて、大幅に向上したのだ。

 余談ながら、これらの角田のコメントは、日々一生懸命サッカーに取り組んでいる中学生、高校生くらいの若者にとっても、非常に参考になると思う。正に、考えに考えて、自分の能力を向上させた事を、簡明な日本語で具体的に語っているからだ。おそらく本誌は、明日(7日)中は、各地のコンビニや駅売店でも購入可能だと思う。興味ある人には是非購入をお勧めする。

 これだけ充実したプレイを見せている角田だけに、一部で代表入りの可能性が取沙汰され始めた。現実的に、来る7月10日の誕生日に28歳になる角田が、ザッケローニ氏のお眼鏡に叶うかどうかはわからない。ただし、最終ラインの前で、守備能力を前面に発揮でき、180cmの上背を持ち空中戦も相当強く、時に効果的に前線に進出できるこのタレントは、日本サッカー界にとっても、とても貴重な存在のはずだ。代表入りの可能性は決して低くないと思っている。
 私は、この選手は03年あるいは04年あたりには代表入りできるのではないかと期待していた。随分と時間がかかったものだ。しかし、若い頃から期待していたタレントが、よりによって我がクラブで、20代後半になってから大化けし代表を目指しているのを、じっくりと応援できるのだから、幸せなものだ。
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(1) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
若手選手が力をつけるとすぐに海外移籍してしまう今、Jリーグを見る楽しみは角田みたいな選手(地味な実力者)が支えていくんでしょうかね。

あまりに活発な若手選手の海外移籍について、Jリーグサポはどう受け止めればいいのか、武藤さんの講釈を聞きたいです。
Posted by at 2011年07月09日 00:07
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