2011年07月08日

女子代表の状況は悪くない

 女子代表はイングランドに苦杯を喫し、2位抜けで準々決勝で、優勝候補の地元ドイツと戦うことになった。
 難しい試合になるだろうが、元々のねらいは上位進出ではなくて、優勝なのだ。だから、優勝のためには、この最大の難敵をいつかは破らなければならないと考えるべきだろう。
 実際、1位抜けができた時に想定されていた対戦相手は、フランスーブラジルー(ドイツまたは合衆国)だった。それが、一番相性の悪い合衆国がスウェーデンに破れ、反対のブロックに行った事もあり、ドイツー(豪州またはスウェーデン)ー(ブラジルまたは合衆国)に変わった。ベスト4に入れるかどうかと言う視点からは、確率が下がっただろう。しかし、優勝と言う観点からすれば、決勝でドイツあるいは合衆国と言うフィジカルでタフな相手と戦う可能性が下がったと見ると、むしろ確率は高まったと見る事ができる(決勝で日本ーブラジルが見られる事は、世界中のサッカー狂の望みだろう)。また、地元のドイツが一番破りづらい敵であり、かつ(ちょっと悔しいが)戦闘能力が先方の方が高いとすれば、決勝よりは準々決勝の方が勝つ確率は高いはずだ。
 また、イングランド戦のように中盤で敵のプレス(と言うよりはあれはボディアタックだな)を外せないと、ドイツにも合衆国にも勝てないのは自明の理。ドイツ戦の前に、より技術が低く、強引なチームと戦い、よい予行練習ができたと考えれば、あの悔しい敗戦も悪くなかったと言う気もしてくるではないか。
 決して楽観論だけを語る気はない。しかし、いたずらな悲観論は一部マスコミやサッカー好きでない方々ににお任せして、我々は応援に専念すべきだろう。

 ともあれ、ここまでの試合を見て、女子サッカーについて少し考えた事を2点。

 1つ目。イングランド戦の1点目。もちろん、熊谷と鮫島の寄せにも問題があったし、海堀の位置どりのまずさも痛かった。ただ、あのような得点が入ってしまうことそのものに、(決して日本の問題と言う意味ではなくて)エンタティンメントとしての女子サッカーが、現行のルールでよいのかと疑問を持った。
 あの場面、上記の通り日本の2人のDFの寄せ(あるいは最初の位置取り)が悪く、得点を決めたホワイトはもう少し持ち出せば、決定機に持ち込めた可能性は低くなかった。ところが、最初のボールタッチが悪かったホワイトは、苦し紛れにただボールを蹴っ飛ばした(あれは「蹴った」のではない、「蹴っ飛ばした」のだ)。ボールは偶然にも、位置取りをあやまった海堀の手の届かないところに飛んでいった。
 要は、女性の体力(それも彼女たちはとびきりのフィジカルエリート達だ)に比較して、ゴールが大きすぎるのだ。あるいは、フィールドの大きさや、その他のルールが、適切とは言えないのだ。だから、「ただ蹴っ飛ばしただけのボール」が得点となってしまう。そして、あのような得点は、女子サッカーではしばしば見られるものだ。
 正直私はホワイトが強引に蹴っ飛ばした時に、「よかった、ラッキー」と思った。あれが、ああやって入ってしまって、日本人やイングランド人やない第3者が「おもしろい」と感じるだろうか。誤解しないで欲しいが、私はサッカーにおける「偶然や不運による理不尽」は大好きだ。特に、日本代表やベガルタが、その手の理不尽でやられた際に、大いなる快感を味わっている事は、拙ブログをお読みの方ならばよくご存じの事と思う。
 しかし、あの得点は違う。あれは「必然による理不尽」である。だから、飲み込めないのだ。

 2つ目。どうして、女子の公式戦は、女性の審判員が担当しなければならないのか。まあ、このイングランド戦、日本が獲得したCKが相手ボールになり、イングランドの選手が手を使いながらボディアタックしても笛が鳴らない「不運としか言いようのない理不尽」を愉しんだ事は否定しませんが。
 サッカーにおいては、どのような試合でも、できるだけ高い質の審判を集めるのが常である。ワールドカップは世界最高峰の審判が、若年層の世界大会ではそれに次ぐ審判が、それぞれ集う。アジアカップでも、アジア最高レベルの...あれ?!、まあいいや。
 だから、女子のトップレベルの試合は、ふつうに優秀な男の審判がやればよいと思うのだが。もちろん、女性の審判で男と互する実力がいれば、優先的に起用するのは異議がない。ただ、「女子の大会は女子の審判」と言う考え方が不思議なだけなのだが。
 誰か、理由やいきさつを知っていたら教えてください。

 と、どうでもよい事を考えながら、ドイツ戦に想いをはせるのは悪くない。
 澤とその仲間達は、満員の世界屈指のサッカー強国の熱狂的サポータを、完全に静かにさせてしまう、究極の快感を味わう機会を得たのだ。テレビ桟敷から、その快感のお相伴をいただけるかと思うと、胸は高まる。
posted by 武藤文雄 at 23:50| Comment(8) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
悔しい思いをして、ほぼ絶望的と暗くなっていましたが、
このコラムを読んで、前向きになることができました。

やはり勝利を信じて応援したいものですから。

審判のレベルは、アジアカップかよ!と思わず突っ込みを…。

最後にひとつ誤字確認を。
>イングランド人やない第3者
『ではない第3者』もしくは『じゃない第3者』ではないでしょうか?

失礼いたしました。
Posted by むさきち at 2011年07月09日 01:38
>イングランド人やない

そこだけ関西弁と考えれば妥当です。
Posted by bati at 2011年07月09日 07:29
ベスト4に入る確率が低くなったかもしれないが、決勝で勝てる確率が上がったかもしれない、という考察はさすが武藤さんっぽいすねw

俺もちょっと前向きに体を起こして応援しなおします。

ホワイトのシュートに関しては武藤さんとは視点が違ってました。あの手のシュートは男子でも狙う人いますよね。高校サッカーとか素人レベルかもですけど。個人的にはホワイトのシュートは蹴った瞬間「うわ、まずい」と思いました。

ホワイトも狙ってたと思いますし、男女関わらず身長が低いGK相手にする時は共通認識でGKの頭を超えるシュートを意識してるように思うんですけど。それが(トップレベルの)サッカーじゃないと言われてしまうとどうにもならんですけどね。トップレベルで「共通認識」になる時点で「必然」だと言うことですかね。確かに男子のゴールが女子より上下左右にそれぞれ50cmとか広くなっていたら、それこそボールの蹴り合いになるのかもですけどね。

まあ女子と男子は別物と考えるのが一番だと思います。

理想的には別物なんだから別の箱でやるべきかもですけど、サッカーグラウンドレベルになると簡単にはいかないですよね。こうやってフルフィールドで女子サッカーをやる事はなかなか女子サッカーの底辺拡大には繋がらないのも事実だとは思います。素人レベルですが、

■白線引きなおしてグラウンドサイズ調整
■女子用に試合時間作る(20分×4本とか)
■電動でサイズが調整できるゴールマウス

とかどうでしょうか。電動ゴールマウスなど作ってしまうと八百長の温床になるか・・・?でも一旦作ってしまうと男子の若年層とかにも汎用できそうだけどなあ。

審判については全く同意ですね。男女関係無く世界大会には最高の審判を用意して頂きたいものです。
Posted by coffee at 2011年07月09日 07:54
本当に「満員の世界屈指のサッカー強国の熱狂的サポータを、完全に静かにさせ」ましたね!
相手の監督も脱帽の歴史的勝利。
今後、どこまで勝ち進めるのか楽しみです。
講釈の方もまたよろしくお願いします。
Posted by baron at 2011年07月10日 19:50
ドイツ戦勝利!すばらしい。
代表協会から選手にボーナスを出すべきですよ。
W杯ベスト4なんだから。

ゴールマウスの件ですが、少し強引な印象だな。というのも、イングランドの選手の得点、普通にJ2や高校サッカー選手権でしばしば見るシーンのように思うんです。イングランド選手は狙っていたし、仮にあの瞬間だけ日本のゴールマウスが小さくなっていたとしても、やはり決まっていたように思える。

まあ、なんにせよ女子はこの調子で優勝まで一気に行って欲しいですね。
Posted by jo at 2011年07月10日 23:21
>優勝と言う観点からすれば、むしろ確率は高まった
>決勝よりは準々決勝の方が勝つ確率は高いはずだ。

武藤さんの言われるとおりになりましたね。
まずは準決勝ですが、14日までは、日本のW杯優勝への期待、高揚感を楽しむことが出来ると思うと幸せです。
Posted by ヨコヅナ at 2011年07月11日 00:22
>女性の体力(それも彼女たちはとびきりのフィジカルエリート達だ)に比較して、
>ゴールが大きすぎるのだ。あるいは、フィールドの大きさや、その他のルールが、
>適切とは言えないのだ。だから、「ただ蹴っ飛ばしただけのボール」が得点と
>なってしまう。そして、あのような得点は、女子サッカーではしばしば見られるものだ。


言論上はフェミニズム全盛の昨今。
プロの書き手の世界にはフェミコードなるものがあるらしい。
ですから、こうした問題提起も難しいかもしれません。
Posted by 五反田西口 at 2011年07月11日 23:42
女性審判ですけど、歴史や層が違うものを叩くのもどうかと。
男子のW杯審判だって、昔はあんなものだったんだと考えるべきじゃないでしょか。
Posted by 牡牛 at 2011年07月14日 16:26
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