敵地ウズベク戦と言えば、2年前の南アフリカ出場を決めた試合を思い出す。開始早々に、岡崎が見事に先制、そして大久保が追加点を決めるが、あり得ない理不尽判定で取り消される。その後も、実に愉しい判定の連続で、プレスをかけられなくなった日本は大苦戦。さらに、ボールの受け方がヘタな若き本田圭佑を交代起用する岡田監督の采配ミスもあり、終盤は完全に押し込まれた。加えて、意味不明の長谷部の退場劇と、長いロスタイムの楢崎の美しいセービングの連続もあり、大変印象的な試合となった。まあ、今思えば、あの大久保の得点取り消しも、本田の空回りも、長谷部への赤紙も、すべてが南アフリカへの経験だったと思えば、感慨深いが。
いくらなんでも明日は、2年前のような主審は降臨しないとは思う。ただ、ウズベクと試合する以上は、日本が一番信頼できるイルマトフ氏が笛を吹く事はあり得ない。常識的には、西アジア人が吹く事になると思うが、そう言えば2年前はシリアの審判団だったな。
まあ、心配してもしかたない事をどうこう語るのはやめにしよう。
ウズベクはアジアカップでもベスト4に進出しているし、常にアジアのタイトルマッチでも最終ラウンドに残る常連。今、アジアのサッカー界は、日本、韓国、豪州が完全に抜け出しているが、ウズベクはイラン、イラク、北朝鮮などと並び「その次」に位置する強豪だ。ソビエト連邦が崩壊し、独立国となって初めて参加した94年の広島アジア大会で、欧州風の洗練したサッカーで見事な優勝を飾ったのも忘れ難い。そして、サウジが低迷し、イランやイラクが往時の決定的な強さを発揮できない現状、アジアの4番手としてブラジルを目指し得る強豪国である。
ただし、アジアカップの準決勝で豪州に0−6で完敗したり、南アフリカ予選でも日本と引き分けに持ち込みながらバーレーンやカタールから勝ち点を取り切れなかったり、安定感に欠ける。随分昔話となってしまったが、あのフランス予選で国立で日本に対し攻め合いを狙ってカズにチンチンにされたり、地元で韓国に5点取られて完敗したり(ウズベクのこのタシケントのドジで、韓国は完全独走してしまったのだ)、何か伝統的にムラの多い国である。
さらにこの3次予選は不運にも、日本と北朝鮮と同じグループ。北朝鮮の調子次第では、最終予選に残れない確率も低くはない状態になっている。さらに言えば、初戦は敵地でタジクを無難に破ったが、埼玉での北朝鮮の内容のよさを考えると、相当な危機感を持ってこの試合に臨んでくるはず。
ただし、ウズベクはライバル北朝鮮と比べて格段に有利な事がある。最終節が日本戦の事だ。常識的には、日本は最終節を待たずに4次予選進出を決めているだろうから、最終節は日本は相当メンバを落としてくる可能性がある。また、敵地タジク戦の勝った事から、勝ち点計算上も悪くない位置につけている。
そう考えると、ウズベクが狙ってくるのは、タシケントでの試合とは言え、勝ち点1なのではないだろうか。
日本からすれば、北朝鮮戦の反省を活かす試合となる。宇宙開発を連発したシュートのまずさ、敵GKの負傷で攻撃の手をゆるめた事、終盤岡崎の強引さが足りなかった事。こう言った課題を、どこまで改善できるかどうか。この手の総当たり方式の予選のおもしろさは、見えて来た課題を1試合事に改善していく事にある(サポータとしては、その改善の進捗を愉しむ事となる)。
もう1つ。上記した通り、ウズベクは無理をしてこないと思うが、シェバロフやシェツキフを軸にした速攻は相当厄介なはず。敵地で、そのような鋭い敵の攻撃を、芽の段階でしっかりと摘む事ができるかどうか。本当の意味で世界で戦うためには、得意の組織守備の質を高める事が重要で、敵地でのウズベクとのタイトルマッチは、そのための格好の試合となるはずだ。
決して簡単な試合とはならないかもしれないが、各選手が自らの力を存分に発揮し、勝ち点3を獲得してくれる事を期待して、テレビ桟敷から応援するものである。
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