2011年11月28日

深刻な五輪代表

 五輪代表は、非常に苦しい試合ながら、国立でシリアに重要な勝利。この手のタイトルマッチはとにかく結果が大事なので、本当によかった。本当によかったのだが...
 
 内容は最低としか言い様のない試合だった。

 日本選手の技術、フィジカルはすばらしい。すばらしいのだが、あまりに判断力が低いのだ。この判断力の低さは、先日のマレーシア戦でも見られたが、何ら改善されていない。ここまで、あまりに稚拙で愚かな試合展開を見せられると、そしてマレーシア戦以降それが何ら改善されていない現実を考えると、何かしら絶望的な想いに囚われてしまう。

 とにかく前に前に急ぎ過ぎなのだ。
 中盤なり後方で、ボールを回すのと、縦に急ぐのとのバランスは、常にサッカーにおける重要な課題だ。安全サイドのために、ボールを回してばかりいると、およそ迫力のないサッカーになり、結局その回したボールを奪われて速攻を食らったりするなど、ロクな事はない。だから、いつも各選手は縦にボールを出して突破を狙えないか、考え続ける必要がある。
 けれども、このチームは、いつもいつも縦を狙う事を考えているのはなく、機械的にすぐに縦を狙ってしまう。特に中盤の扇原と山口蛍が顕著だが、最終ラインの選手も皆同じ傾向がある。パスの出し手は、自分の体勢が必ずしもよくないにもかかわらず、縦に速いボールを早めに入れようとする。そのような縦へのボールは、精度とタイミングが重要なので、体勢がよくなければ、成功の確率は低い。また、当然受け手も常に準備できているとは限らない。そんなこんなで、再三前線で簡単にカットされ逆襲を許してしまう。
 シリアのトップの10番の能力の高さは見事だったし、7、8、9も皆よいタレントだった。こう言った選手に前線でボールを渡すと、苦しくなる。だからこそ、簡単に速攻を許さないように、攻撃(要は悪い奪われ方をしない事)を工夫するのが重要。しかし、上記の通り皆で無理をしては、速攻を許すと言う展開となってしまった。特に後半は、せっかくリードしているのに、それを繰り返すのだから...
 さらに悪い事に、いつもいつも縦に入れてくれば、敵の守備陣だって慣れてくるし、読みやすくなる。特にシリアの主将の2番はフィジカルや1対1の強さも中々だが、何より読みがよいので、この日本の単調に縦に入れる攻撃はほとんど押さえられてしまった。
 また急ぎ過ぎるので、サポートが間に合わないと言う問題もある。両サイドバックの酒井も比嘉もスタミナが豊富な選手で、上下動を繰り返すのは得意のところだが、ボールよりは速くは走れない。だから、彼らのサポートが間に合わずボールを奪われる事も多かった。そうなると、サイドバックの裏を速攻で突かれると言う悪循環にもつながる。
 一方で、日本は前線近く(具体的に言えば、敵ゴールラインから20m程度の奥深く)で、1対1なり2対2なりの状況に持ち込む事ができれば、次々と決定機を作る事ができていた。決勝点がその典型で、単純なサイドチェンジで比嘉が前線奥深く進出、あの疲労していた終盤に見事な脚力で突破し、鮮やかなクロスを上げてくれた。この他にも、大迫も直輝も大津も、前線で前を向ければ、見事な能力を発揮していた。この日、後方からの急ぎ過ぎのパスをうまく収められず2番に完敗し続けた大迫だが、よい体勢でボールをもらった後半の1回だけは見事に2番を振り切り抜け出して決定的なシュートを放っていた(GKがこぼしたボールを大津が詰めるが、直輝がブロックしてしまった...ただ、大迫があの場面でカーブをかけたシュートを狙い、グラウンダの強いシュートを打たなかったのに不満はあるのだが、それは今日の本題とは関係ないのでここまで)。

 日本の各選手がいつも「前に前に」と急ぎすぎず、時にはゆっくりとボールを回せば、あそこまで敵の速攻を食らって苦しい思いをする事もなかったはずだ。また、そうやって敵の守備の様子を見て、パスの出し手も受け手もよい体勢の時に前線にボールを入れていれば、もっともっと前線の選手の特長が発揮できて決定機を作れたはずだ。
 言い方を変えれば、この日の日本のサッカーは「みんなで必死になって、日本のよさを消し、シリアのよさを引き出す」ものだった。まあ、興奮はしたけれどね。

 他にも判断力の欠如は多数見受けられた。
 
 相変わらず、お互いの特長を活かそうとしていない連携の稚拙さ。
 たとえば、酒井宏樹の右足のクロス、大津の突破力、山田直樹の緩急など、このチームには既にJでも相当の実績を挙げている武器がある。けれどもマレーシア戦でも指摘した通り、それらの特長を相互に活かそうとする意識が低過ぎる。お互いが、チームメートを4−5−1と言う風に並んでいる「駒」としか思っていないのではないか。
 酒井がタイミングよく前進しようとしたスペースを東がわざわざ斜行して埋めてしまう。後方から挙動を開始して、緩から急に動いてスイッチが入る山田が大迫より前でボールを受ける。大津は上記急ぎ過ぎのために、結果ハーフウェイライン付近のゴチャゴチャの突破に、エネルギーを費やす事になる。大津がハーフウェイライン近傍で、鮮やかな個人技を発揮するのに、何の意味があるのだ。
 結果的に、どの選手もJで(おっと大津はブンデスリーガか)見せてくれている魅惑的な特長を発揮できない事となっている。

 セットプレイの工夫の少なさ。
 敵陣近いセットプレイは、山田と扇原が蹴る。2人がボールの前に立ち、1人目がボールをまたいで走り抜け、もう1人がクロスを狙う。全く同じパタンを試合中ずっと続ける忍耐力と創意工夫のなさ、ある意味で感心した。もちろん、すべてシリア守備陣に読まれてしまったけれど。
 前半の先制点はショートコーナで敵DFをボールウォッチャにする事に成功した事によるものだった。そのような成功例があったのだが、どうしてFKにもそのような変化を取り入れないのか。失敗を繰り返すのも情けないが、成功を取り入れられないのも悲しい。

 時間の使い方の稚拙さ。
 前半終了間際に、濱田の得点でリード。本当ならば、ここで厳しいプレスをかけて、自陣にボールを入れずに前半を終えたいところだったが、安易に攻め込みを許しFKを与えてしまう。そのFKが逆サイドに流れたを拾ったのが比嘉。ここで比嘉は信じられない判断をする。既にアディショナルタイムが終わろうとしているのだから、敵陣深くのタッチに蹴り出してしまえばよかったのに、前線にフィードしたのだ。そして、そのボールを拾われ、再度シリアは攻め込みを許した(日本が何とかしのいで前半終了)。敵陣タッチに蹴り出していれば、そのままタイムアップとなったかもしれないし、もしそうならずとも敵陣のスローイン。まず、危ない場面を作られる心配はない。こんな事、普通にサッカーをやっている小学生でもわかっている事だ。
 苦労して苦労してようやく突き放した後半アディショナルタイム。永井の頑張りでCKを得た。あとはコーナフラッグ近傍でボールキープして時計を進めればよい場面。ところが、その場面で濱田が得点を狙い敵陣に進出したのだ。ただただ呆れてしまった。これは、判断と言うより、サッカーのセオリーなのだ。このようなケースでは、無理をしない方が、勝利の確率は格段に高い事など、これまた小学生でも知っている事だ。
 厳しいタイトルマッチを戦っていると言う緊張感を持っているのか?、シリアに対するリスペクトを持っているのか?と問いたくなるような愚かなプレイだった。

 繰り返そう。
 全軍で必死になって、日本のよさを消し、シリアのよさを引き出した一戦だった。

 これだけひどい試合をしても勝つ事ができた。正に「勝ちに不思議の勝ちあり」とも言うべきか。いや、不思議ではないのかもしれない。圧倒的な戦闘能力差がありながら、それを最小にする作戦で苦戦したが、結局それでもなお埋められない差があったと見るべきか。
 2月5日はシリアとの敵地戦。この日の不出来の反省があれば問題ないと思う。しかし、勝利に興奮した関塚氏のインタビューを見た限りは、不安は高まるばかりである。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(8) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
後半同点にされるまでのオープンな展開になっていたのをNHKで解説してた長谷川健太氏や岡田氏も懸念されてましたね。鹿島サポーターとしては、ボランチの位置で柴崎岳を入れたら、少しは落ち着くだろうなぁと観てて思いました。
ただフロンターレを指導してた頃から忙しいサッカーのイメージがある関塚氏がオープンな打ち合いになってしまったことを問題視してるのかやや疑問ですし、次の2月シリアアウェー(もしくは中立地)が不安です。
Posted by 鹿サポ at 2011年11月29日 03:02
個人的にはそこが若さ故と言えるように思いますが。この経験を生かしてくれれば何ら問題ない。その実現が数年後だったにしても。
Posted by ティー at 2011年11月29日 07:38
言われてみれば相手エリア内で選手同士が重なったりしていましたね。
前後半のアディショナルタイムでの比嘉と水輝のプレーにはまったくもってその通りですね。
Posted by 浦さぽ at 2011年11月29日 08:00
日本人は、信号が青にならないと横断歩道ひとつ
渡ることができない体質がDNAに刻み付けられている
民族だから、判断力が劣っているのでしょうね。
Posted by 鳥志江 at 2011年11月29日 13:05
なつかしいですね。
トルシェなら真っ赤になって怒ったかな。
Posted by seasun at 2011年11月29日 17:59
そういえば恥ずかしながらこの試合のキャプテンマーク誰がつけてたのか思い出せない・・・。大津?大迫?東だっけ?

個人的には山村がキャプテンっていうこのチームには賛成なんですよね。で彼がケガして永井がチームキャプテンって聞いてたんすけど、先発してないんですよね・・。どういう事なんだろ。

でもそういえばさいたまスタジアムの北朝鮮戦もちょっと思い出したな。北朝鮮のGKが足痛めて素人目にもチャンスって時間帯があったのに選手もベンチも特になんにもアクションを起こさなかった記憶があって・・。

今回のシリア戦に関してはピッチに強いキャプテンシーを持った選手がいなかったことも凄い問題だけど、ベンチのコントロールにも問題ありですよね。なんていうかそういう意味での危機感は凄い共感です。
Posted by coffee at 2011年11月30日 01:35
実にバカっぽいサッカーでしたからねぇ
武藤さんの心配はこいつら一生バカのままなのではということだと思いますが、
いずれバカ度は薄まっていくのでは…と思います。
本当の強豪を前にしたら違ってくると思うのですが。本番を待ちましょう。
Posted by とんちゃん at 2011年11月30日 07:49
柴崎岳くんが入ればってのは賛成。
年齢は下だが、彼が入れば少しは落ち着きが出せるかもしれない。

キャプテンは権田だったが、フィールドプレーヤではないので、彼がどうこう出来るかってのは難しいでしょうね。
誰がキャプテンかは、この際関係無いでしょう。中継でも言われていましたが、同年代の集まりなので、中々難しい部分もあるんでしょうね。

技術、フィジカルがこの水準まできたのだから、次はゲーム運びというのが次の課題というなら、順調に段階を踏んでいるとも思います。
Posted by こーいち at 2011年11月30日 12:45
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