2011年12月05日

ドトール・ソクラテス逝去

 ドトール・ソクラテスが亡くなったと言う。
 あの82年のブラジル代表の主将。言うまでもなく、黄金の4人の一角として、サッカーの愉しさ、美しさを世界に見せつけてくれたオッサンだった。合掌。
 
 あの82年のブラジル。中盤最後方でファルカンが美しい姿勢と抜群の視野の広さから、壮大な展開。トニーニョ・セレーゾが、あきれるほどの上下動で持ち上がる。そして、その前でソクラテスが何とも味わい深い位置取りと蹴る前に一泊おく独特のインサイドキックで全軍の溜めを作る。そして、ジーコが長短自在なスルーパスを通す。何か、言葉で説明し切れないのがもどかしいが、あの4人があちらこちらから火をつける攻撃で、列強を圧倒した。
 78年ワールドカップでは、大ベテランのリベリーノの負傷もあり、技巧の粋を尽くしたサッカーを見せられなかったブラジルだが、81年正月にウルグアイで行われたコパデオロ(黄金杯、ワールドカップ歴代優勝国を集めた大会、もっともイングランドは日程都合で出場できず、オランダが代替出場だったが)で、テレ・サンタナ氏率いるブラジルは、美しい攻撃的なサッカーを再び見せる。
 その中軸がソクラテス。コパデオロではCFを努め、長身を活かした懐の深さでのボールキープ、スローテンポだが独特のターン、正確で独特の溜めの後のインサイドキック、落ち着いた位置取りが猛威をふるった。
 そして、負傷が癒えたジーコ、ローマでプレイし「ローマ皇帝」と評されていたファルカン(当時欧州でプレイしていたブラジル人はファルカンを含め数える程しかいなかった)が加わり、ブラジルは82年大会の優勝候補筆頭と目される事となる(もっとも、ブラジルはいつも優勝候補筆頭なのですが)。

 我々との最も深い縁は84年年明け、コリンチャンズでの来日か。近々行われるロス五輪予選の準備試合として来日したコリンチャンスは、日本代表と3試合を行った(当時の強化試合はこのような形態で、欧州南米のブロチームを呼んで行われ、ここにソクラテス的スーパースタアがいる事で、観客動員を狙うやり方だった)。この3試合、コリンチャンスは明らかに体調が悪かったが、木村和司をウィングから中盤に下げる策が大当たり、「これはロス五輪行ける!」などと勘違いしたのが、懐かしいな。
 ソクラテスと黄金の4人を組んだパートナの3人はすごく日本に縁がある。2人は代表の、1人はトップクラブの監督を務めたのだから。ソクラテスもまた親日家だったと聞いた事があるが、それを含めて、あの夢のようなスーパースタア達が、ここまで身近になるとは、これはこれで感慨深い。あと、ソクラテスの実弟のライーが92年トヨタカップで活躍した。クライフのオッサンが率いたバルセロナ(グアルディオーラが展開し、バケロが受けて、ストイチコフやラウドルップが突破する)に前半チンチンに圧倒されたサンパウロだが、ライーを中軸にミィーレル、カフー、トニーニョセレーゾ爺さんらが反撃。ライーの嘘みたいな直接フリーキックが決勝点、テレサンタナ氏が高笑いした試合だった。

 色々ソクラテスのプレイを思い浮かべて、ハッと気がついた。攻撃的MFに起用された遠藤のプレイと、ソクラテスのプレイって、かなり似ているように思える。ただ、ソクラテスの方が懐が深いから後方からのボールの受けがうまい。一方で、遠藤はソクラテスに比べて守備が格段にうまいが。
 ジーコがいない時のソクラテスは自らが主役、ジーコがいる時はしたたかな脇役、また局面によってはCFでのポストプレイも絶妙。つまり、いわゆるブラジルの8番(今風だと引き気味の7番か11番か)も9番も10番も、完璧にこなせるタレントだった(もっとも10番をつける事はなかったようだが)。しかも、あのタレント集団では主将を務めた事でもわかる通り、リーダシップも抜群だった。
 ソクラテスのプレイで、一番印象的なのは、失敗場面。あの「史上最高の戦い」と言われた86年の準々決勝のフランス戦。延長で、プラティニのパスから抜け出したベロンを、ブラジルGKカルロスがペナルティエリア外で大ファウルで止めるが、ベロンが何とか倒れぬように頑張ったので主審はファウルを取らない!(今日のルールではもちろん、カルロスは一発退場)。そのこぼれ球をブラジルがつなぎ、決定機を作る。しかし、疲労困憊のソクラテスが見事に空振り。もし、あそこでソクラテスが決めていたら、あの「史上最高の戦い」は「史上最悪の主審」と共に語られる事になっていたであろうと(笑)。
 皆様ご存知の通り、ジーコのインサイドキックのスルーパスは長短自在。一方でソクラテスのインサイドキックは一拍置くタイミングが絶妙で、10mくらいの距離にピタリと通るのがおもしろかった。この2人の同世代のブラジルのスーパースタアのインサイドキックの比較だけでも、一晩語り尽くせるな、うん。
posted by 武藤文雄 at 23:30| Comment(1) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
http://murakamisoccer.blog.so-net.ne.jp/2011-12-07
武藤さんの文章とリンク先のブログの記事があまりにも似ているのですが、気のせいでしょうか。
タイムスタンプを見る限り、リンク先が武藤さんにインスパイアされたと考えられるのですが。
Posted by Ayame at 2011年12月12日 18:17
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