2012年01月01日

元日に澤と大野を堪能する

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。本年の講釈は、全日本女子選手権決勝からスタートします。

 レオネッサは4DFの前に澤がアンカー。その前に池笑然と南山が位置取り、最前線は川澄と高瀬が左右に開き、引き気味のCFに大野。ただし、大野は中盤深く引く時もあり、その時は池笑然が前線に上がってくる。
 アルビレックスは、フラットな4DFと4MFでゾーンの網を張り、上尾野辺と大柄な菅澤の2トップ。しかし、上尾野辺は守備に回ると中盤に引いて他のMFと共に敵を挟み込む役割なので、4−4−1−1と言える並びだ。

 開始早々に、自ペナルティエリア直前に澤がプレゼントパスをするもアルビレックスのシュートが弱く海堀の正面を突くと言うハプニングがあった。けれども、それ以降は予想通り、レオネッサが攻勢をとる。しかし、アルビレックスの8人に上尾野辺が絡む守備網が機能し、川澄や大野が前向きで受けられるようなよいボールが入らない。それでも、レオネッサは、この2人や池笑然の個人技、あるいは攻撃第一波をはね返した直後のアルビレックスの修正遅れから、幾度か好機を掴むが、GK大友のよい判断もあり崩しきれなかった。
 アルビレックスは、主将の左サイドバック山本の前進に、阪口が長いボールを合わせる攻撃を再三見せるが、サイドまでは行けても、ゴールまでの距離は遠く、好機は作れない。日本の女子サッカーでは、タッチ沿いからクロスを入れるのでは、ボールのスピードが十分ではなく好機になりづらい。ペナルティエリア幅くらいまで、中をえぐらなければならないのだが、そのためには大野や川澄クラスの技巧の冴えが必要になるのだ。
 また、アルビレックスが最前線の菅澤に縦パスを入れても、田中明日菜の厳しいマークにボールがキープできず形にならない。この試合に関しては、MVPは田中だろう。菅澤を完封し、アルビレックスの逆襲をつぶし、3点目も決めた。この堅実な守備振りを伸ばし、代表の定位置争いに割って入って欲しいところだ。

 そして0−0で前半終了と思われた44分、レオネッサのハーフウェイラインやや越えたあたりからのFK、池が蹴ったボールに対し、左サイド深くに向かい澤が見事な動き出しの早さで裏を突く事に成功、GK大友はかろうじてしのぐが、こぼれたところを南山が詰めて先制した。数分前に田中と上尾野辺が交錯し、2人とも頭にバンデージを巻く負傷。田中はすぐにピッチに戻ったが、上尾野辺は担架で運び出される状態で回復が遅れ、このFKの時にピッチに戻ろうとした。ところが、主審と4審の連携が悪く、上尾野辺がピッチ入りするのに時間がかかり、アルビレックス選手たちがやや集中を欠く状態になってしまった。その一瞬の隙を見逃さず、勝負どころを見極めた澤の判断力を褒めたたえるしかあるまい。しかも、この試合澤が最前線に進出したのは、この場面が初めての事だったのだ。

 後半立ち上がり、レオネッサは攻撃を修正する。高瀬のポジションをやや内側に修正して近賀を上がりやすくする。南山を前に押し出し、池を(あるいは大野を)後方に下げる。これにより、攻撃に変化が生まれた。そして、左右への揺さぶりから、高瀬が決めて勝負あり。とてもではないがアルビレックスが2点差をはね返せる雰囲気はなかった。
 アルビレックスは周到な作戦で、よく守っていたのだが、前半終了間際の澤の才気と、後半立ち上がりのレオネッサの変化にまでは対抗できなかった。戦闘能力差と言うものだろう。

 現実的に、重要な試合でレオネッサに他のチームが勝つのは、相当難しいように思う。澤と大野の存在が大きすぎるのだ。
 先制点時の澤のしたたかさは既に述べた。それとは別に、大野の的確な動きはすばらしかった。大野は、両軍の攻守両面をよく見張り、隙があるとそこを埋めに行く。アルビレックスに隙があれば、その隙を突いて点を取りに行くのは当然だが、自軍に隙があると丹念に几帳面にそこを埋めに行く。やや両軍にダレが見られた試合終盤、甘くなったレオネッサのプレスをかいくぐり、再三アルビレックスが逆襲を狙った。その際に忠実に追いかけたのは大野、レオネッサ守備陣が逆襲の第一波をはね返したボールをしっかり拾ったのは大野だったのだ。
 これだけ、敵のほんのちょっとした隙を突く狡猾さと、味方の小さなミスをしっかり埋める知性と献身を持つ選手が複数いると、ただでさえ大きな戦闘能力差が決定的なものになってしまう。
 
 まあ、文句を言う筋合いではないな。新年早々、大野忍の献身を堪能できたのだから。
posted by 武藤文雄 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 女子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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