賛成、反対いくつも詳細論はあるのだが、究極的には、賛成、反対それぞれの理由はシンプルだ。
賛成については、正に日本協会の情宣ビラの7ページから9ページに書かれている事が理由となる。実際、うちの子供達が、8人制でガップリ四つの試合をしてくれているのを見た時は、嬉しかった。ゴールキーパを含んだ全員が、ボールに呼応して常に動き、一生懸命ボールにアプローチし、技巧の粋を尽くして敵陣に迫る。人数が少ない分、ボールへの関与、プレイへの関与が一人一人多い。これはよいですよ。
余談ながら、上記情宣ビラの「グリーンカード」、「リスペクト」、「フェアプレイ」と言うキーワードには、物悲しさを覚える。「グリーンカード」は論外だが、「リスペクト」、「フェアプレイ」は大事な概念だ。それらの大事な概念を、空虚な(現場を何も知らない人の指示で広告代理店が作った)言葉で語られても...そこまでして、皆で出し合ったキャッシュを、誰かさんの勲章獲得に費やさねばならないのだろうか。まあ、いいや。いや、よくないな。
一方、反対について。とにかく、試合に出られる人数が少ないのは困るのですよ。11人制で何がいいかと言うと、「現状で下手な子供を出しやすい」事。11人制ならば、1人や2人、足を引っ張る子供がいても、時間帯を工夫して起用すれば、極端な破綻は少なかった。しかし、8人制ではそうは行かない。人数が少ない分ごまかしが利かないのだ。
もちろん、逆に言えば「ごまかしが利かない分」だけ、「現状で下手な子」のプレイ機会が多いのだから、それはそれでよい事と言う解釈も成立する。しかし、事はそう単純ではない。ここで「現状で下手な子」って簡単に言ってしまったけれども、色々なタイプがいるのだ。
身体を動かす事が大好きで、ちゃんと練習に休まず来て、一生懸命練習に取り組むけれど、足が遅いとか、反応が鈍い子もいる。運動能力は高いが、いわゆる「闘争心」が少ないと言うか、接触プレイが苦手な子もいる。やはり運動能力は悪くないが、人の話を集中して聞き続ける事ができず、さらにプレイそのものにも集中できないので、技術が向上しない子もいる。そして、全然練習には来ないが、試合の日だけは来る子もいる。
チームメートは正直なのだ。1番目、2番目のタイプの子を起用しても不満は言わない、でも3番目、4番目のタイプの子を起用すると、露骨に嫌な顔をする。11人制では、まだまだ十分にごまかせていたのだが。8人制となると厳しいのだよ(もちろん、それならばそれで、相応に対処して何とかしているけどさ)。
小学生年代で試合結果がどのようになろうが、つまり勝とうが負けようが、ある意味ではどうでもよい事だ。でも、「勝とうとする事」、「何とか負けないようにする事」、「勝ったら本当に嬉しい事」、「負けたら本当に悔しい事」は、とてもとても大事な事だ。しかし、その「大事な事」に対して、上記3番目、4番目の子供を、しかも8人制大会で起用するのは、真剣に戦っている子供達に、「相矛盾する事を指導者がしているのを見せる」と言う意味で、結構苦しいのだよね(もちろん、それならばそれで、相応に対処して何とかしているけどさ)。
はっきり言おう。8人制になると、現場は「全員プレイさせるのが難しくなる」のだよ。
まあ、そう言った反論に対しての日本協会のカウンタアタックが上記情宣ビラの9ページ(ハーフピッチで同時にたくさん試合できる)と、19ページ(1人審判制で、審判確保に苦労いらない)なのだろう。
前者は、「安全のために『固定ゴール』としている小学校で、公式戦が不可能になった」と言う笑えない笑い話が問題となっている。まあ、よいさ。そのうち、どこかの業者が、安価で安全な簡易ゴールを提案してくれるだろうから。日本協会は、これ以上余計な事をしない方がよい(でも、しそうな気がする、「協会公認簡易型ゴールのご紹介」なんて郵便物が...)。
問題は審判だよ。上記の19ページ、あるいはこちらを,見て欲しい。どんなに、広告代理店に書かせた空虚な言葉を並べてもダメなのだ。「セルフジャッジ」と言う言葉は、「判断力ある子供の育成」、「フェアプレイの精神」とは全く相容れない言葉なのだから。
サッカーにおける反則は、意図せずとも起こってしまう。ボールを狙ってタックルしても敵の足を蹴ってしまう事がある。身体を入れてうまくボールを奪ったつもりでも、中途で敵を押してしまいファウルになる事もある。自分としてはうまく敵DFの裏を突いたつもりでも、動き出しが早過ぎてオフサイドにかかってしまう事もある。これらの「反則」は、何があっても自分では判断できない。審判と言う第三者の助言を繰り返し聞きながら、身体で覚えて行かなければいけない事なのだ。
もちろん、練習試合や紅白戦で、少ない審判の下でプレイするのは、それはそれでアリだろう。しかし、「公式戦」と言う、「勝つ必要はないが、勝ちを目指す事が絶対に必要な試合」では、しっかりと副審を揃えて試合をすべきだろう。いや、実際8人制の1人審判は、本当にきついのですよ。体力もそうだが、視野を相当広くとる必要があり、サッカー経験ないお父さんにお願いするのは相当厳しいと言う現実もある。
上記した通り、会場やゴールの問題があり、8人制にしても、公式戦数が極端に増える事は、現状ないかもしれない(それはそれで、選手のプレイ機会が減っているわけで残念な事だ)。しかし、それが定着すれば、1クラブから複数チーム出場は増えて行くだろう。その場合、審判の数だけは揃えるべきだと思うのだ。だからこそ、日本協会は、小学生世代の副審をできる人を大量に作る工夫をすべきだと思う。1つの回答は約6年前に書いたこれあたりだと真剣に思っているのだが。
プラス
8人制だとどうも忙しいサッカーになってしまい、足はそんなに速くは無いけどキック・パスセンスのある子が埋もれてしまいがちになりますね。
今のピッチサイズでの8人制では、足が速くドリブルが上手な子(つまり運動能力が高い子)が集まるチームはやはり上位に行きます。
ピルロ・シャビ・遠藤のような、しっかりゲームをコントロール出来る様な選手は生まれ辛くなるのかな、と少し危惧しています。
だからと言って、強力なFWの誕生にも疑問視がつくのですが。
小回りの効くメッシや香川タイプは相当数生まれそうですがね。といいますか、その様なタイプじゃないと今の8人制では生きてこないと思っています。
増やしたいんだったらフットサルをやらせればいいんじゃないかと。
もちろん、先日武藤氏がカズの話しで触れていたように
フットサルとサッカーは別のスポーツですが、一年中
一つの競技やっているのも微妙な話なわけで。
シーズンを区切ってフットサルと11人制を交互に行えば
両者から学べていいのでは……というのは素人考えですか?
8人制サッカーという新しい競技を始めるよりは導入コストも
安く付きそうですが。
イングランドの若手育成事情
http://www.soccer-king.jp/column_item/20120113_england.html
「バカげているよ。小さなピッチを使えばもっとたくさんプレーに参加できるのに、これではろくにボールにも触れない。プロだってフルサイズのピッチで練習することはまれなのに、なぜ11〜12歳の子供にそれをさせるんだ」
ユアスタで小学生の前座試合をよく見ますが,確かに彼らにはピッチもゴールマウスを大きすぎます。
でも武藤さんが挙げられてる問題点はそれはそれで解決しなければならないものですよね。
それと想像ですけどサッカーの文化が根付いている欧州ではグラウンドや審判は日本と違いさしたる問題にならないのではないですかね。
あまり単純な話ではなさそうです。
審判にしたところで、高学年になれば8人制でも一人審判は誤審の宝庫です。際どいタイミングのオフサイドなんて絶対に見極められません。
今時小学生だってオフサイドトラップぐらい知っていますが、この高等戦術は正しいジャッジが生命線です。結果、高等戦術がDFの崩壊を呼びます。
どうせ8人制にするのなら、4〜5人制にしてしまった方が協会の理論通りになると思います