2012年02月23日

マイナスからのスタートだけれども

 五輪代表は、まあ「まともな試合」を見せてくれた。とは言え、この最終予選に入って以降、「まとも」と言ってよい試合を見せてくれたのは、初めてなのだから、評価すべきなのだろう。

 今までのようにせわしない攻撃ではなく、扇原がテンポを1回落とした「当り前のサッカー」を見せてくれた。もちろん、今までのやり方が滅茶苦茶だったから、積み上げた連携は皆無に近く、せっかくの「緩」から「急」への変化は、ほとんど見られなかった。しかし、個人能力で崩せる確率は、「緩」で攻め込む方が、「急」ばっかりよりは、格段に高まる。そのため、大迫、扇原、酒井の圧倒的な個人能力で、得点を重ねる事に成功した。
 4点差と言う結果も、合格点だろう。もちろん、贅沢を言えばきりがない。後半序盤に4点差として、しかも前半からじっくりとボールを回した事でマレーシアが相当疲労していたのだから、もう2点くらいは欲しかった。ただし、現実的には大迫と扇原が敵のラフプレイで負傷退場してしまったのだから、仕方がない。上記の通り、現状のこのチームでは「個人能力」で点をとるしかないのだから。永井も原口も斉藤も、よい体勢でボールを受けて初めて機能するタレントだが、よいボールを供給してくれる人材が、後ろからも前からもいなくなってしまっては。そう言う意味では、自ら能動的にスペースを作って突破ができる山崎の離脱は、本当に痛かった訳だ。
 重要な事は、扇原と酒井が、堂々と個人能力を前面に出すプレイをしてくれた事だ。ここまで追い込まれたためかもしれないけれど。そして、相変わらず、東は酒井にスペースを提供しようとはしていなかったし、鈴木や濱田は急ぎ過ぎのパスが多かった。したがって、関塚氏が能動的に、扇原にゆっくりした展開を指示したり、酒井の前進を狙わせた訳ではないように思える。つまり、この2人は、自らの判断で、従来の試合とは異なる、しかも自らの能力を前面に押し立てたプレイを見せてくれたのだ。いや、結構な事ではないか。ロンドンはさておき、ブラジルに向けては。
 ザッケローニ氏や原氏が、あの酷いサッカーを放置してきたのは、この2人の自覚を促すためだったのではないかとすら、邪推したくなる。いや、関塚氏の深謀遠慮?

 ただし、今までがあまりに酷かったためか、このチームは問題山積なのも、また事実。
 酒井を除く3人のディフェンダ、鈴木、濱田、比嘉の、自信喪失は目を覆うものだった。ここまでのシリアとの2試合で、急ぎ過ぎから再三敵に簡単にボールを渡し、安易に逆襲を許し、難しい1対1の局面を幾度も作られたトラウマのためだろうか。この日も、大した攻撃ではないのに、1対1となると、完全に腰が引けてしまい、与えなくてもよいコーナキックを再三提供していた。困ったものだ。
 また、比嘉はこの日(いや、この日も、と言うべきか)、あり得ないプレイをしている。頭を強打した大迫が動けなくなっていた時間帯、永井が交代で入ろうとタッチ沿いで待機していた時(アナウンサがそう言っていた)、反対サイドで得たスローイン。「ああ、大迫を代えられる」と安堵していたら、何と比嘉はクイックスローで、プレイを継続してしまった。何と周りが見えていない頭の悪い選手だろう。このポジションは、ドイツに去った酒井高徳を含め、丸橋祐介、金井貢史、そしてこの日も控えに回った吉田豊と、Jで定位置を確保している選手が多数いるのだが。

 東も、相変わらずひどかった。1点目につながったスルーパスなど見事なものだった。なるほど、この選手は鋭い個人技を持っている。けれども、酒井のスペースを消し続けたる動きを典型に、チームメートの特長、能力を活かそうと言う発想が、まるでないのだ。
 たとえば、酒井と比嘉、大迫と永井、原口と斉藤では当然使い方が異なる。けれども、そのような意識が極めて希薄なのだ。受け手にパスを合わせるのではなく、受け手に自らのパスに合わせる事を要求すると言う意味では、若かりし頃の(つまり全盛期の)中田英寿をちょっと思い出したりする。けれども、残念ながら、現状の東のパスの鋭さは、往時の中田には遠く及ばない。

 まあ、いいだろう。文句を言いたい事は無数にあるが、少なくともこの日は、今まであまりにひどかったこのチームが、相応にまともな試合を見せてくれたのだから。上記したように、現状のチームは、マイナス成分が相当に大きい。でも、たとえマイナスでも、そのマイナスを少しずつ減らし、いつかは反転するためのスタートとなる試合だった。
posted by 武藤文雄 at 01:52| Comment(11) | TrackBack(1) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これはひどい
Posted by セキ at 2012年02月23日 02:06
東はそんなに酷かったですか?!
むしろボールを引き出して自分の特長をよく活かそうとしていたと感じましたが。。
元々パサータイプの選手ではないので、攻撃のタクトを任されても荷が勝ちすぎるのかもしれませんね。。
右サイドに清武がいた時はチームがもっと機能していたと思いますが、エヒメッシも頑張ってましたね。
ホントに攻撃的な選手にタレントが多いチームです。なんとか五輪に出て成長した姿を見せて欲しいものです。
Posted by げる at 2012年02月23日 02:16
さすがに対戦相手のマレーシアいろいろひどかったんで、参考になるかわからんですけど、それでもチームとしては前身しましたよね。歩幅は短いかもですけど進んだと思います。

武藤さんの「前へ急ぎすぎる」ってのがよく理解できた試合でした。今日も試合開始5分ぐらいはまだ直ってない傾向感じましたが、まあそこから静かに我慢しましたよね。「緩」を作ろうとしてるの凄い伝わってきた。

それで十分今日は楽しめた。

この年代の試合観るのってそういった成長の過程を楽しむとこにあるんですかね。
Posted by coffee at 2012年02月23日 02:48
比嘉はいつも酷いですよね。
見ててイライラする。
Posted by 来栖 at 2012年02月23日 03:59
東の問題は酒井が進出するエリアを埋めてしまうことだとはっきりしましたね。
斉藤が中央に絞っても右サイドに東が移動したら意味がないと思いました。
同じタイプの選手を並べるなら二列目に三枚もいらないかもしれませんね。
山崎や清武なら器用にスペースを空けてくれるとは思います。
Posted by ななし at 2012年02月23日 04:35
比嘉は山崎のフォローがあったときはそれなりに成り立っていたけど、
他の選手だとそこまでフォローが回らないので
山崎がいないなら外した方がいいですね。
それより途中出場の選手が流れに乗れず足かせに
なっていたのが気になりました。
Posted by 名無し at 2012年02月23日 10:39
東は今までそんな好きではなかったですが昨日の試合は悪くなかったのでは。

酒井を使おうとしてるのもあったし、戻ってテンポ落として扇原ともうまくやってたし。

センターバックとヒガには同館ですが。。
Posted by akk at 2012年02月23日 12:50
東はセンターで受けた時の縦パスは目を見張るものがありました。
ただ彼はサイドで受けると途端にプレーの質が落ちますね
周りを活かすことができないし、自分で打開するほどのドリブルもないんで結構あたふたしてる印象を受けました。
Posted by at 2012年02月23日 13:35
昨日の試合で流れの中での扇原を褒めるのはちょっとどうなんでしょう
緩ができたのはあくまで大迫が自主的に下がってボールを受けるようになってからで、それまでは今までと大差ありませんでした
実際、大迫が不運な交代をしてからは格段に質が落ちてしまいました
確かに縦パスにセンスを感じますが、左足に頼り切りな部分も相まってかなり物足りないです
Posted by at 2012年02月23日 20:25
 A代表だって、荒れたピッチのウズベキスタン戦では苦戦しました。
 仮に1位しか予選通過できないのなら、今頃、A代表だって、解任すべきか、否かの議論が沸き起こっていたかもしれません。
 あるいは、長谷部が不調だったとしても、ザッケローニ監督は別の選手に交代できるのか。
 関塚監督にも弁解の余地は色々とあるように思います。
Posted by at 2012年02月23日 21:05
大迫が下がって受ける場面はほとんどありませんでしたよ。序盤に一度あったくらい。下がってきてたのは東が多かった。大迫が交代したのが後半14分ぐらいで、扇原がピッチを去ったのが21分ぐらいなので違いはほとんど確認出来なかったはずです。
扇原はホームマレーシア戦よりミスが多く、縦パスも少なかったが、元気いっぱいのマレーシアが待ち構えているところへ突っ込むことなく、東や山口や最終ラインとのパス交換は今までよりも遥かに多かったというところを褒めているのでしょう。
ボール保持時間が増え、ホームで張り切ってプレスをかけにきたマレーシアは前半でほとんどガス欠になり、後半酒井の上がりとクロスが猛威を奮いました。しかしその頃、大迫は後半2分で脳震盪を起こしていたのであまり動けていなかったのです。
Posted by fff at 2012年02月24日 03:46
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