2012年03月15日

個人能力で殲滅

 先日の敵地マレーシア戦で、このチームの戦い方は大幅に改善、いや改革された。
 シリアとの2試合が典型だったが、せわしなく前にボールを出す事を急ぎ、簡単にカットされては逆襲速攻を許し、自ら状況を苦しくしていた。過去40年近く、色々なサッカーを堪能してきたが、「敵のよさを引き出すサッカー」を全力で、しかも2試合続けて同じ相手に演じるチームを見たのは初めてだった。これはこれで経験である。
 しかし、この個性的極まりないサッカーは、先般の敵地マレーシア戦で封印された。扇原を軸に、中盤でじっくりつなぐ、当たり前のサッカーに切り換えたのだ。結果、危ない場所でボールを奪われて、逆襲を食らうリスクは減ったし、敵陣に近づく頻度は減ったが、敵陣を脅かす頻度は、格段に向上した。
 ただし、残念な事に、改革以降このチームはまだ2試合目。連携不備と言うよりは、「チームとしてどう崩して、どう得点を奪う」と言う概念が、まだ全くないようだ。したがい、特に前半、守備を分厚く固め、速攻に活路を見出そうとするバーレーンを、攻めあぐんだのは仕方がない事だった。前半の攻撃を見ても、およそ得点の匂いはしなかった。右サイドで酒井が、フリーランしても、東も清武も使おうとしない。その瞬間、観客席から嘆息がこぼれるが、マレーシア戦より前の長い強化期間を無駄にしていたのだから、これはもう仕方がない。
 (まだまだ欠点が多いし、この日も前半ミスパスからピンチを招いたりはしていたが)扇原を軸に、スローテンポで丁寧に試合を組み立てるサッカーを構築するには、ある程度時間がかかるものだ。
 え、マレーシア戦から、実質的な指揮官が変わっ(以下消去)

 とにかく、丁寧にボールをつなぎ、急ぎすぎないサッカーをすれば、失点のリスクも格段に少なくなる。前半を終え、よほどの不運が錯綜しない限り、日本が負ける事はあり得ない事は確認されていた。

 で、問題は、いかに点を取るか。
 後半、日本は、敵プレッシャの厳しい扇原ではなく、山口が再三敵DF後方にボールを出し、原口、大津、清武らが「裏を突く」攻撃を狙い始めた。見え見えと言えばそれまでだが、とても有効な攻撃方法である。そして、もし敵に読まれたとしても、個人能力(ここでは「個人能力」と言う言葉を、技巧とフィジカルと言う切り口で使っています)を前面に押し立てれば、それを突破する事も可能になる。
 1点目、比嘉のフィードを受けた原口の強引極まりない突破、そしてえぐり、鋭く低く上げられたクロス、飛び込んで来た扇原は僅かなスペースを逃さず利き足でない右で強烈に叩き込んだ。正に、圧倒的な個人能力での殲滅。
 2点目、原口を警戒するバーレーンDFを引き出しておいて、原口から東に、東は冷静に丁寧なクロス、大津がつぶれ、ファーサイド全くフリーの清武に。清武が全くフリーで悠然とボールに寄るあの瞬間、スタジアムの全てが得点を予感し、全員が立ち上がる、そして、その通り歓喜の絶叫。
 連携どころか、共通認識もないこのチームだが、アジアの予選くらいならば、選手個々の個人能力発揮で解決できてしまうのだ。

 すばらしい時代になったものだ。
 90年代、ようやくアジアのトップになれた頃。吉田光範、ラモス、都並、山口素弘、相馬、呂比須と言った、ある局面では抜群の能力を持っているし、精神的にも格段ではあるが、一部致命的な欠点を持っている選手が中核として機能していた。結果、中東諸国あたりと試合をすると、こう言った選手の弱点を突かれ、苦戦する事が再三あった。それをカバーしていたのが、全選手の意識統一による攻守に渡る連携だったり、井原正巳と言う大巨人のカバーリングだった。
 オフト氏就任以降、早いもので20年経った。時代は変わった。少なくともアジア予選。連携のひとかけらもないチームが、中東の強豪国に対し、各選手の個人能力を前面に押し出すだけで、殲滅できる時代となった。11人、いや控えを含めたラージグループのいずれの選手も、もう上記の英雄達が抱えていた欠点は持っていない。
 よい時代になったものだ。

 今はダメダメの選手達かもしれない。しかし、昨日も述べたように、いわゆる北京世代の現代表の中核選手たちが、4年前の北京で、どんな体たらくだったかは、皆の記憶に新しい。ロンドン世代の若者達の多くも、きっと化けてくれるに違いない。皆が、圧倒的な個人能力を持っているのだから。

 みんな、上記の大先輩達の知性を、ちゃあんと身につけてくれるよね。大丈夫だよね。
posted by 武藤文雄 at 01:42| Comment(6) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
武藤さんの鬱屈した気持ちが良く表れていて面白いです(笑)

>え、マレーシア戦から、実質的な指揮官が変わっ(以下消去)

これなのですが、何かソースがあるのでしょうか?
コーチが交代したとか?
それとも「がらりと戦術が変わったから実質的指揮官が替わったのだろう」という武藤さんの予想でしょうか?

ともあれ、サッカーは男女ともに五輪出場が嬉しいですね。
Posted by むさきち at 2012年03月15日 05:42
サッカーに先輩も後輩もありませんし,サッカーに関する知性は,現在のA代表よりも20歳以下の選手の方が高いと思います.
OAで遠藤を入れたらこのチームは退化するでしょう.入れるとすれば,少し上の吉田麻也,あとは順当に酒井高徳と久保裕也でしょう.
Posted by 若さま at 2012年03月15日 08:47
過去を美化するな爺ほど・・・嫌なもんだ
Posted by K at 2012年03月15日 20:07
過去を美化するな爺ほど・・・嫌なもんだ

って、どこをどう読んだら「過去を美化」しているんですか?
Posted by at 2012年03月15日 22:15
その時その時調子の良い11人を選んで作った即興チームでもアジア予選は勝ち抜けるということでしょう。
ただし外圧や保身などから邪な力がかかると、とたんにチームが腐りだす。と
Posted by ネラ at 2012年03月16日 01:05
今回のオリンピックは否が応でも、女子と比べられてしまうわけです。あの女子チームのプレゼン能力(力と速さと体格を押し出してくる相手に対して、つないでつないでわずかなギャップを攻めていく、という自分たちのサッカー表現)に対して、U-23は「うーーーーん?」

そこが、心配というか不満というか困ったというか…

ちなみに遠藤擁護派の僕ですが、OAには反対(遠藤は入れるべきではない)ですね。遠藤が入るとどうしても1回遠藤に預けなきゃいけなくなる。今のガンバがそうだし、代表もそうなりつつあります。代表がいいときは、遠藤と同等かそれ以上に長谷部が働いているとき。あの2人というか2チームの機能性は、すぐには(しかも爺1人と若者で)求められないと思います
Posted by dortmund06 at 2012年03月16日 21:49
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