2012年03月18日

(書評) サッカー選手の正しい売り方(小澤一郎著、カンゼン出版)

 最初に結論を述べる。
 本書は、内容の一部に疑問はあるものの、世界サッカーにおける日本の位置づけを考察したいサッカー狂にとっては、必読と言っても過言ではない本だと思う。

 明快に論じられていはいないが(正直言って、内容がてんこ盛りで、主張がわかりづらいのは本書の欠点に思える)、本書で筆者が主張したかった事は、以下の2点だと私は理解した。
(1)日本が目指すべき目標の1つが「選手の輸出大国となること(ここでは適正な移籍金、正確には違約金あるいは育成費を獲得するのが前提となる、そのためにも日本人選手の「ブランディング」が重要)
(2)移籍に関しては国際的なFIFAルールに切り換えた日本サッカー界だが、育成費関連ではまだローカルルールが残っている。これらも、国際ルールに準拠すべき。
 (1)については、私自身も氏の主張に「目からウロコ」感があった。確かに、日本のほとんどのトップ選手は欧州に行って自らの能力とランクの向上を目指しているのだから、「いかに高く売るか」は、非常に重要な事だ。だったら、最初から「売る事を考えるべし」と言う発想は、(寂しさがない訳ではないが)一面からは理に叶っている。
 (2)については、今なお日本協会が設定しているローカルルール(「アマ」→「プロ」のケースと、「プロ」→「プロ」のケースに分けている)を説明した上で、FIFA規定の国際ルールへの切り替えを主著している。賛否両論あろうが、私は氏の主張に賛同する。もちろん、(著者はあまり触れていないが)これらのローカルルールを日本協会が作った背景には、日本のサッカー強化の相当な比率が、(税金と言う支援が多大にある)学校で行われている部分があるから、ややこしいのだが。
 後述するが、一部の内容には矛盾もあるし、自説を強調したいが故に墓穴を掘っている部分もない訳ではない。しかし、「世界サッカーにおける日本の位置づけ」を、移籍と言う切り口で整理を試みた本書は、今後の日本サッカー界を考察する上で、貴重な題材となる事は間違いない。

 著者の小澤氏とは、1度お会いした事がある。スペインに長期に滞在した経験のあるジャーナリストで、スペインを中心とした欧州と比較した日本サッカー界の現状を嘆く論調を得意とされているのは、ご存知の方も多いと思う。直接話をさせていただたいた印象だが、大変まじめな方で、多面的な勉強をされており、「日本サッカーをよくしていきたい」と言う情熱にあふれた方だった。
 本書は、その情熱あふれる氏が、豊富な取材を下にまとめたもの。昨今の「ゼロ円移籍」に苦しむJのクラブ、欧州のクラブのFIFAルールの適用法などを具体的に紹介した上で、上記した主張を展開したものだ。

 1つの例が、宇佐美。同年齢で、レアル・マドリードのユース出身でヘタフェに移籍したサラビアと言う選手と比較して、宇佐美の価格があまりに安いとの事(「宇佐美の方がずっとよい」との主張も述べられている)。その事への怒りが、心底伝わってくるのがおもしろい。実際、これを読んで、私も腹が立った(笑)。だったら、「欧州スカウトに”ウサミ”をアピールしよう」と言う提案は、非常に説得力がある。
 「ゼロ円移籍」で苦労するJの各クラブだが、長友を放出したFC東京、内田を放出したアントラーズは、相応の利益を出したと言う。この背景を丁寧に分析しているのもわかりやすい(一方で、同様に日本代表の中核選手で儲け損なったクラブとの比較は辛辣だが)。
 また、朴智星、フッキ、ドゥンビアらを好例に、「海外の優秀な選手を『育てて売る』を前向きに捉えるべき」と言う主張もおもしろい。特にフッキ的な選手に、日本のよさである規律を植え付けて売る、と言う発想は、何かとても有効に思えてくる。

 残念ながら、論理的な矛盾も見受けられる。たとえば、氏は「ゼロ円移籍」を防ぐための有効な手段として、内田をよい例として「ホームグロウンプレイヤ」として、クラブへのよい意味での忠誠心の醸成を示唆している。その割に、同じアントラーズが、柴崎を高校2年時点で5年契約した事を否定しているのは、よくわからない。もしかしたら、氏は公開できない契約内容を知った上での憤りを述べているのかもしれないが。
 また、欧州市場を重視したのだろうか、既に「実施は極めて困難」と明確な結論が出ている「秋開幕」を持ち出しているのは、この本全体の説得力を欠くものとしている。Jリーグの運営については、氏は専門ではないのかもしれず、筆が滑っただけかもしれないが。

 正直言って、章立てや、主張の構成が、やや曖昧なため、読みづらい本ではある。
 けれども、上記の通り、論じられている内容は読み応え十分。「世界サッカーにおける日本の位置づけ」のたたき台としては格好の一冊である。

posted by 武藤文雄 at 23:22| Comment(4) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
さっかー選手なんか0円で十分。誰も活躍しないんだから。ダルビッシュの金にウンコドーレが湧いてきませんように
Posted by ヘディング脳死ね at 2012年03月19日 14:11
さっかー選手なんか0円で十分。誰も活躍しないんだから。ダルビッシュの金にウンコドーレが湧いてきませんように
Posted by ウンコドーレ at 2012年03月19日 14:12
>Posted by ヘディング脳死ね at 2012年03月19日 14:11

ダルビッシュの移籍金は、
日本ハムの赤字補填にされたの知らないの?w
ファイターズに入らなくて、
親会社の日ハムに入ったんだぞ。

それと、日ハムと関係あるのはセレッソで、
コンサドーレはまったく関係ない。

こんなとこまで書き込むなよ、税リーグブログのクソ管理人は!
Posted by N at 2012年03月19日 17:40
いつも興味深く読ませていただいています。
先日の乾否定や、秋開幕に関する独断と偏見などに怒りを感じながら。笑
小澤さんは私が応援しているバレンシアとの繋がりもあり、イベントでのトークや雑誌での記事はよく目にしていました。本当に真面目な方ですよね。
今回の氏の新著、購入しようと思います。
ご紹介、ありがとうございました。
Posted by 吉田公平 at 2012年03月19日 18:13
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/258492441

この記事へのトラックバック