このチームの最大の問題は「何をめざすのか」が明言されていない事だ。
オーバエージの選択を見れば、日本協会(原博実氏と言うべきかもしれないが)の意図は明らかだ。「ロンドン五輪の優先度は、ワールドカップ、Jリーグよりは低いが、その拘束条件下で最強のチームを作り、とにかくメダルを目指す」と言う事だろう。
原氏はそう宣言し、「オーバエージについては、優先度を考慮すると、これが限界」と現実を隠す事なくマスコミに説明し、「それでも君達ならばやれる。メダルに到達できるはずだ。」と選手達を鼓舞すべきだった。いや、今からでも遅くはない、原氏には明快な発信を期待したい。
仕方がない事なのだ。女子代表とは異なり、日本サッカー界にとって、男子の五輪はすべてをかけて戦う大会ではない。個人的には、香川を軸に、闘莉王あたりを起用して、A代表とは異なる強力なチームで、ブラジルやスペインに食らいつく、いや逆に平らげてしまうようなチームを見たかった 。けれども、それがかなわない事情もよくわかる。そして、現状の大会のレギュレーション、国際サッカー連盟の五輪への対応、日本サッカー界の現状(日程問題、欧州クラブ在籍選手達の立場)を考慮すると、どのようなチーム構成をとっても、中途半端な感覚は残る。
しかし、その拘束条件の下、粛々と上を目指す我らの若者たちを堪能するのも、素敵な愉しみだ。だからこそ、繰り返すが、原さんには今からでも発信して欲しいのだ。我々サポータは、チームと共に戦っている。だからこそ、チームの責任者が、ハッキリと語ってくれた瞬間に、皆がモヤモヤ感から脱する事ができる。
とは言え、オーバエージについても、一言、二言。
この世代で明らかにタレントが不足しているセンタバックのみオーバエージを補強、それも欧州クラブ在籍A代表レギュラとJリーガから一人ずつ。正に優先度の中で最大限の補強とも言える。さらに、選考された二人を見ても、協会サイドの労苦がしのばれると言うもの。
アンダー23の香川が入らず、吉田麻也が入ったのは、所属クラブの考え (VVVは麻也を最高値で売りたい、 日本サッカー界と良好な関係を築き続けたいと、考えているのだろう)、ポジションの違い(センタバックと異なり攻撃的MFは、この世代は人材豊富)、ザッケローニ氏の意向(麻也を本当の意味で、代表の大黒柱にするための経験と考えた可能性は高い)など、様々な要因が考えられる。とにかく、麻也はこのチームの大黒柱としての活躍が義務付けられている。このロンドン五輪が、麻也が世界に名をなした大会と記憶される事を期待したい。
徳永はとてもよい選手で、センタバックもサイドバックも高いレベルでこなせる。ただし、A代表には、今野や伊野波のように 徳永同様の特長を持つ選手がいる。持ち味こそ異なるが、同じFC東京には、先日のワールドカップ予戦で常にベンチ入りしていた高橋もいる。「その状況下で、なぜ徳永?」と考えると、原氏の苦悩が見えてくるではないか。この難しい状況下で、徳永と言う有効なカードにたどり着いた日本協会と、中心選手派遣に合意してくれたFC 東京フロントに敬意を表したい。よい準備ができれば、麻也と徳永のセンタバックは、かなり期待できそうではないか。
オーバエージ発表時にザッケローニ氏のメッセージを流せばよかったのではないか。「ブラジルに向けて、ハヤシにもゴンダにも大きな期待をしている。短い時間で、いかにセキヅカさんにアピールできるか。たとえ、セキヅカさんの決定が不本意なものでも、しっかりとチームに貢献できるか。」
続いて、アンダ23のメンバについて。
今回のチームは、誰が選ばれようが、サポータ達からは不満ばかりが寄せられる構造になっている。
代表チームと言うものは、予選のメンバを中核にして構成されるのが常識と言うもの。ところが、関塚氏は予戦を通じて、固定したメンバで戦い続け、無様な試合ばかり見せていた。しかも、その固定メンバの選考基準はJリーグでの実績とは関係なかった。
予戦で、幾度も判断力に欠けたプレイを見せ続け、同じポジションにJで定位置を 獲得している実績があるライバルが多数いたにもかかわらず、必ず起用され続けた選手もいた。Jでほぼフル出場して、自チームの攻撃の中心となっていたにもかかわらず、まったく呼ばれなかった選手もいた。
たとえ、独特の選考基準でメンバを選んだとしても、見事な内容のサッカーを見せてくれれば、問題はない。しかし、シリアとの2戦に代表されるように、およそ知性も敵へのリスペクトも欠いた試合を見せられると、誰もが「別の選手を起用してくれないものか。」と考えたくなるものだ。一方で、ここまで固定メンバで戦ってきたために、今から新しい選手をどう選んでも、「ぶっつけ本番」と揶揄されてしまう。つまり、どうメンバ選考を行おうと、文句を言われる構造なのだ。
当然ながら、私も小言を言いたい。
大迫の落選は、このチームが完全に「ぶっつけ本番」を選択した事を示す。攻撃の連携が、ほとんど見られないこのチームにおいて、不正確で意図のない事が多かった縦パスを、何とか収めて攻撃を整えてきたのが大迫だった。ようやく急ぎ過ぎの悪癖から抜け出せた敵地マレーシア戦(このチームが最もよいサッカーを見せた試合だった)は、扇原の落ち着いた展開を大迫が巧みに受ける事で、酒井宏樹や齋藤が前進するスペースを作っていた。この2人の連携は貴重なものだと思っていたのだが。
関塚氏の東への拘泥は理解できなくもない。多彩な攻撃的MFが揃っているこの世代だが、多くのタレントは、ドリブルなり突破を武器にしている。しかし、東のようにいわゆるキラーパスを得意としている人材は案外に少ないのだ。ただし、このチームでは、東の能力は必ずしも輝いてはいない。むしろ、不用意に右サイドに流れては、最強兵器の酒井宏樹の前進スペースを埋めてしまい、このチームの拙攻の象徴的存在だった。この選手は、パスはうまいが、まだ味方を使う域には達してはいないと言う事だろう。難敵とのギリギリの戦いで、持ち前のパスセンスが、チームメートを活かす域に昇華する事を。
この世代には、山崎、水沼、大前がいる。この3人は、技巧と闘争心に優れ、プレイも安定しており、戦術的にも色々な事ができて、しかも得点力も備えている。したがって、短期決戦においては非常に使い勝手がよい選手だ。しかし、関塚氏は彼らを誰も選ばなかった。これって、非常におもしろいと思う。通常の代表チームでは、この手のタフな選手が多く選考され、素材は優れているものの不安定な選手が外れ、サポータが文句を言うのが普通なのだが。齋藤がすべてを背負うと言う事か。
陳腐で申し訳ないが、山村の選考は不思議だ。後方のスタメンは、両酒井、麻也、徳永、扇原、山口または村松が、予想される。すると、ベンチは、鈴木、山村、村松または山口となる。試合終盤、後方を厚くしたい時、中盤選手が疲弊した時に、山村を使うのは相当勇気がいると思うのだが。と言って、スタメン起用もあり得な いだろうし。
とにかく時間はない。連係は、戦いながら立ち上げて行くしかない。そう考えると、初戦がスペインだったのは、幸運だった。まずは、守ればよいから、短い準備期間を守備の組織確認に費やせる。やらなければならない事が多い時は、優先順位が明らかな方がありがたいものだ。
もう一つ重要なのはコンディショニング。8日から合宿に入ると言うが、そこでしっかりと追い込めるかどうかだろう。日本協会の、このあたりの科学的トレーニングは定評のあるところ。このような強みが、うまく発揮されるのを期待したい。
関塚氏には、散々イヤミを連発してきた。
しかし、監督に要求されるのは結果である。氏は、色々あったが、無事に予選を突破してくれた。結果は出しているのだ。そして、フロンターレでの氏の出した結果もまた色鮮やかなものだった。
ロンドンでの、氏が出してくれるであろう結果に、大いに期待するものである。
2012年07月07日
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もう一つ。スペイン戦はそのような期待はできないかも。前がかりになって玉砕するんじゃないかと。
圧倒的と言われるブラジル、スペインも磐石ではありません。
スペインは中心選手のチアゴは怪我で出ないのは大きい痛手です。ここに、セルヒオブスケツがいたら大変なことになったでしょうが、バルサはさすがに許さなかったようです。中盤を落ち着かせるいわゆるプレーメーカー選手がいなくなったので、スペインは結構厳しくなると思うのですが。
またブラジルも選手層がすごい割に、中盤、前線で守備を献身的やってくれる選手は皆無ですね。というかチアゴシウバしかいない。
だから、劣勢に回ると考えれないくらい脆かったりします。これはA代表でも抱える弱点ですが。
あまり、悲観することはないと思うのですが。
となると、左SBは徳永になると思われます。
関塚監督はアジア大会に近い戦術を採用するはずなので、徳永はSBというより、3バックの左と考えた方が正しいのかもしれないですね。
「それでもメダルが欲しい」サッカーでどこまでやれるか。個人的には永井に大ブレイクして欲しい。
概ね同意です。
オーバーエイジに関しては、『代表拘束権が無い』のですから、クラブ側が拒否可能です。
細貝等は所属クラブから期待されている選手は、クラブの事前合宿に呼ばれてますから最初から無理でした。
ただ、オーバーエイジ枠で予備登録者にGK林で使ったのは納得はしていません。
おそらく、五輪初戦24時間前までは、怪我人等があれば予備登録者から入れ替えできるので、GK権田の怪我に備えたのでしょうが。
本大会時点で23歳以下の選手(正確には1989年1月1日以降に生まれた選手)は、五輪男子本大会では、『拘束権』があります。
従って、香川も宮市も、JFAは無理やり呼べました(実際、原氏は、香川にギリギリまで打診してましたし)。ただ、JFA全体の総意としては、プレミアリーグという現在、世界最高峰リーグの一つで活躍させる為、休養とクラブ合宿に参加させる時間を与えたという方針でしたから、納得はしています。もちろん、非常に不満ではありますが。
この五輪男子代表拘束権は、2012年7月12日以降から有効になる為、7/8からの合宿及び7/11の壮行試合では、効力がありません。
その為、DF酒井高徳とMF宇佐美は7/12以降に合流します。また、CB吉田はけがの回復優先の為、壮行試合には出場しません。
何はともあれ、怪我人での入れ替えが無い限り、この本登録者18名で戦うわけですから、がんばってほしいものです。期待は全くしていませんが、岡田ジャパンのように、良い意味で期待を裏切って欲しいものです。
大迫をサブで使っても流れを変えられるほどの選手ではないと監督が判断したのだと思います。
そこでサプライズの杉本となったのは理解できないわけではありません。
ただ大津がけがなどした場合、杉本で大丈夫なのかという不安はありますね。
いづれにせよ大迫は期待の選手。今回のくやしさを糧にして飛躍してほしいと思っています。