2012年07月26日

ロンドン五輪を前に

2週間ほどブラジルを含めた異国に滞在していたため、男女とも五輪代表の準備試合の映像を見ることはできていない。と言う事で、過去の経験からの、大会展望と言うか願望を述べて行きたい。

 まず女子。言うまでもなく目標は金メダル。ただし、勝負は水ものだし、サッカーと言う理不尽な競技には常に運不運がつきまとう。「金」に至れるか否かは「神」の領域だろう。私は今回の宮間たちの冒険の成功の正否は(ドイツ不在と言う幸運を含めて)「決勝進出できるか否か」にあると見ている。けれども、今の宮間たちに対して、そのような常識的なものの見方そのものが、失礼と言うものだ。宮間たちは「金」しか考えていないだろう。そうである以上は、我々サポータも「金」のみを考えて応援するのが、ロンドンの正しい愉しみ方と言うものだろう。そして、「金」を狙うと言う視点で考えると、私はポイントが2つあると思っている。

 今回のメンバ編成を見ると、全員が、昨年のワールドカップ経験者。佐々木氏は「新しい武器」よりも「安定と成熟」を選択したようだ。
 一般的に、この手の短期集中型の大会は、前の大会にはいなかったタレントの登場が勝負を分ける事が多い。前回のワールドカップで、鮫島と熊谷は純然たる新戦力だったし、川澄と(このチームからは、長期離脱していた)丸山が、準々決勝以降に機能したのは記憶に新しい。
 ただし、今回の五輪は、昨年のワールドカップから僅か1年後の大会だし、新戦力開拓に十分な時間がなかった。いわゆる「なでしこフィーバー」が、その貴重な時間を奪ったと言う見方もあろうが、あれは「勝利が故についてくる事態」、世界一がゆえのの一種のハンディキャップと考えるのが健全だろう。
 ただし、化けた感のある大儀見、負傷癒えた岩渕(が、この1年の様々な経験を活かし、大幅に成長してくれていれば)の2人は、間違いなく「新しい武器」となるだろう。特に大儀見の成長は、結果的に色々な難しい仕事を的確にこなせる安藤をベンチにおけると言うメリットもあるし。
 一方、後方のタレントは完全に現状維持。ただ、近賀、熊谷、岩清水、鮫島、阪口、澤に割り込む選手が、そうは出てこないのも理解できる。このベストの6人が万全の体調で大会を終えられればよいのだが。個人的には田中あたりが、ここいらに割って入って欲しかった思いはあるのだが。
 佐々木氏の「安定と成熟」の選択が吉とでる事を祈りたい。

 2つ目のカギは、やはり澤穂希だろう。
 一時期体調を崩していたが、やはり疲労が要因だったのだと思う。そして問題は、33歳と言う年齢だ。疲労で体調を崩したのも、年齢とは無関係とは言えないだろう。彼女の武器は、最高レベルの知性であり、格段の技巧であり、研ぎ澄まされた得点力であり、抜群の精神力である。そして、それらはいずれも年齢的に極端に衰えてくるものではない。また、積み重ねてきた鍛練によるフィジカルは、日々の努力により相変わらず強靭なものだろう。しかし、33歳と言う年齢も、また確かなのだ。
 昨年、名実ともに世界一になる以前から、スタアがゆえのオーラが全身から発せられている彼女。ワールドカップの準々決勝以降を思い起こしても、ドイツ戦の絶妙なラストパス、スウェーデン戦の敵先制点となるミスパス、そしてあの決勝延長の舞い。たまに見せる極端なマイナスを含め、いずれもスタアならではのプレイ。そして我々が再び世界一を獲得しようとするならば、澤の昨年同様の活躍は必須なのだ。

 直前の準備試合での敗戦を気にする必要は一切ない。過去、このチームは、あのようなフィジカルやスピードをかいくぐって、勝利した実績をいくらでも持っている。しっかりと体調を整えてくれば、彼女達のパスワークを防げる敵はいない。
 願わくば、サッカーの女神がほんのちょっと、ほんのちょっとでよい、我々に味方してくれれば。後は彼女達は自らの戦闘能力で、最高の色のメダルを獲得してくれるだろう。

 さて男子。ここにきてオーバエージの麻也と徳永が加入。メキシコに競り勝つなど、何とか間に合いそうな雰囲気が出てきたようだ。

 過去を振り返ってみよう。まず、気をつけなければならない事だが、シドニーのトルシェ氏、アテネの山本氏は、北京の反町氏、今回の関塚氏と比較すると、「無限の差」と言いたくなるくらいに、提供された準備期間が多かった(アトランタの西野氏は、日本サッカー界そのものが「世界で戦う経験に乏しかった事」、選手を増長させるバカマスコミを防ぐノウハウをがなかったなど、今日と比較してあまりに「時代」が異なるので比較以前と考えた方がよいやに思う)。
 確かにトルシェ氏はすばらしいチームを作り、ほんの僅かな不運とミス(主審のミスジャッジによるPK、守備の控えにユーティリティ性がない宮本を選考していた事など)がなければ、メダルを獲得していた可能性も高かった。しかし、もしトルシェ氏に、関塚氏に提供した準備期間と拘束条件で、その仕事を依頼していたら、どんな事態になっていたかは容易に想像できる(笑)訳で、これはやはり比較障害と言うものだろう。
 ただし、潤沢な準備期間を与えられながら、そのほとんどを「テストごっこ」に浪費し、大会に入ってからも、ベストメンバさえ決められなかった山本氏のアテネのチームよりは、現状のチームは格段にまともと言う事には言えるだろう。

 そう考えると、やはり適切な比較は反町氏率いた北京大会と言うになる。正直言って、いずれのチームも予選段階はひどかった。いずれも選手間の適切な連携は少なく、選手の個人能力の高さでアジアを勝ち抜いたもの。ただし、敵へのリスペクト欠如、常識的修正のなさ、と言う視点からは、関塚氏は、よりダメだったのは間違いないけれど。
 しかし、今回のチームは、北京と比較して格段のストロングポイントを持つ。そうオーバエージだ。Jリーグを代表する仕事師の徳永、腕章を巻きこの大会以降世界を席巻する吉田麻也。この2人の存在は、間違いなく、このチームを支える存在だ。
 そもそも、北京大会、色々問題は合ったが反町氏は最後の最後で帳尻を合わせつつあった。準備試合のアルゼンチン戦で、そこそこのレベルまでチームを引き上げていたのだし。しかし、初戦の同格の合衆国戦、森重や長友が信じ難い経験不足を露呈し敗戦。戦闘能力的に劣勢のナイジェリアに対し、前掛りで戦う必要が生まれ、最終的にチームは崩壊した。大事なところで、チームに柱となるオーバエージ選手がいてくれれば、十分に上位進出の可能性もあったのだ。つまり、北京での敗因は、誰一人オーバエージを連れて行かなかった事、つまり日本協会が真剣に北京で勝とうとしなかった事にあった。けれども、今大会は違う。日本協会は苦労に苦労を重ね、上々のオーバエージ選手2枚の補強に成功したのだ。そして、この2人は過去積み上げて来た存分な経験で、チームを支えてくれるに違いない。

 もちろん、不安も大きい。特に心配なのは、Jリーグで格段の実績を持ち戦える精神力を持った選手の多くを外している事。その分、外見的な潜在力は高いが、Jでの(あるいは所属クラブでの大人になってからの)実績は少なく、過去の準備試合でもほとんど戦い切る事のできなかった選手が、結構選ばれている。もちろん、そう言う事を今さら語っても詮無き事。一人一人がこのロンドンで大化けしてくれる事を期待するのが、今となっては健全だろう。
 4年前の北京のチームは、試合内容も結果も残念だった。しかし、言い古された事だが、当時のメンバの多くは、完全に大化けして、4年経った今では世界のトップレベルに飛び出す選手に成長してくれた。そして、今回のチームは、北京と比べて、オーバエージのプラス部分があるのだ。選手全員が誇りを持ち、タフに粘り強く敵の喉元に食らいつき、戦い切ってくれる事を期待したい。そして、メンバの多くが、2年後のブラジルで主力として戦ってくれる事を。
posted by 武藤文雄 at 00:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なでしこは「新しい武器」になっていたであろう
アルビレックス新潟レディースのFW菅澤が怪我で選考されませんでした。
おそらく彼女が万全ならば丸山の代わりに選ばれていたんじゃないかと思います。

守備面は宇津木が良い感じに成長していってたのですが、
やはり直前のスウェーデン遠征アメリカ戦で怪我させられて選考されませんでした。
(宇津木はドイツ女子W杯も少し出場してるのですが成長ぶりから「新しい武器」と言えたんじゃないかなと)

怪我してなくても選ばれてはいなかったかな?でも…というINAC神戸のFW京川なども含め、
五輪メンバーに入りそうだった面々が怪我をして
その結果ドイツ女子W杯と同じメンバーになったのではないかなと思います。

同じく直前でフランスやアメリカに負けたのは、そこまで気にしなくて良いと思います。
北京五輪直前の時も中国に敗れたのに
本番では修正して中国にしっかりと勝っています。
ドイツ女子W杯でも直前の試合でアメリカに敗れています。
どうも佐々木監督は、わざと選手に負荷をかけた状態で試合をさせたり、
手の内を隠したりしているようですね。
Posted by at 2012年07月26日 13:29
関塚監督は真剣にGL突破、そして未来を考えての人選だったと思いますよ。
スペインはもちろんアフリカ系、南米系の国もいずれも日本にとって簡単な相手ではありません。
誰が戦えて、誰が武器になるか
Jリーグでの実績だの、何点とっただのとJリーグ標準選抜で挑み勝てるでしょうか
この年代の選手はちょっとした意識の変化や刺激で
想像もしていなかったほど才能を開花させる場合もあります。
選手の将来性も期待してのポテンシャル重視の選抜になることは当たり前なのです。
武藤さんの保守的な男子五輪人選へのご意見は
少し年をとられたのでしょうかと心配になります。
Posted by RIO at 2012年07月29日 00:35
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