2012年08月06日

2つの準決勝を前に

 男女とも堂々とベスト4進出。まことにめだたい。
 毎試合毎試合、しっかりと講釈を垂れたいのは山々なのだが、どうにも難しい状況だ。3日に2試合のペースで試合が行われ、しかも試合が深夜に及ぶ。特に午前1時キックオフの試合で、翌日が平日の場合は、試合前の仮眠が必須となる。さらに、ついつい他の競技にも気をとられてしまって、作文の時間が失われて行く。

 
 女子。準々決勝、ブラジルに終始攻め込まれたが、落ち着いて守り切った。
 序盤に攻勢をとられ、危ない場面も多かったが、そこをしのいだ前半20分過ぎから幾度も攻め込み、連続して好機を作る事に成功。その流れから得たFKを、澤が素早く蹴り、抜け出した大儀見が、しっかりと決めて、先制に成功。
 以降は、ブラジルの攻撃を冷静にいなす。岩清水、熊谷のセンタバック、阪口、澤のドイスボランチの読みはすばらしく、押されてはいたが、ほとんど危ない場面はなかった。
 そして、後半半ばには逆襲速攻から大儀見の好クロス、大野が冷静に決めて突き放し、そのまま逃げ切った。ブラジルの攻撃精度は、日本と並んで世界屈指だろうが、その攻撃を狙い通りに押さえ切ったのだから大したものだ。また、体調もここに合わせていたのだろう、終盤にはブラジル選手の多くは疲労から一杯の状態になっていたのに対し、日本の選手はしっかり走り切った。たとえば、1次ラウンドのスウェーデン戦と比較すると、選手達の体調がよいのは明らかだ。
 気になったのは、守備ブロックがしっかりしているが、サイドバックが絞り過ぎの場面が見受けられた事。特に鮫島は(日本の右から左、つまり逆サイドから同サイドに)サイドチェンジされた際に、反応が遅れる事が再三あった。あそこの切り替え(内から外へ)が遅れると、川澄がカバーに下がる必要が出てきて、どうしてもボールを奪ってからの攻めが遅くなる。そこを修正するだけで、もっと楽に戦えると思うのだが。

 南アフリカ戦の駆け引きに関する騒動。当たり前の事を当たり前にやっただけで、騒ぎになるのだから、注目されると言う事は大変だ。しかし、かつてウェンブレイで柱谷哲二がハンドをしたり、アジアカップの1次リーグ3試合目で思いっ切り手抜きをしても、特別国民的議論?は起こらなかった。それが、今回相応の騒動になったのは、我々が着実にサッカー強国への道を歩む重要な一里塚だったと考えればよいだろう。佐々木氏の日本サッカーへの貢献に改めて感謝するものである。
 それにしても、スウェーデン対カナダが同点になった瞬間に、見事にスイッチがはいって、後方でボールを回し始めたのは、おもしろかった。あれを「おもしろい」と感じない人がいるのも、1つの発見だが。

 フランス戦は、コンディショニングと試合経験を考えれば、常識的には勝てると思う。
 ブラジル戦で見せてくれた守備の堅牢さを考えると、そうは失点しないだろう。またブラジル戦の前半20分過ぎの連続攻撃では、「攻める気になった時の凄さ」を見せてくれた。
 一部に宮間不振を心配する向きがあるようだが、私はそれも前向きに捉えている。宮間が今一歩でも、ここまで堅実に勝てると言う事だからだ。そして、宮間のように精神的にも技術的にも充実した選手が、大会最後まで不振を引きずる訳がない。
 おごる事なく、冷静に戦えば、決勝進出は相当確率で訪れるはずだ。


 さて男子。気持ち良い進撃が続いている。

 モロッコ戦。私はあのような緊迫した試合が大好きだ。
 両軍が稠密にプレスをかけ合い、僅かな隙から攻め込もうとする。序盤こそ、敵トップに裏をとられ危ない場面を作られたが、山口の忠実さと、扇原の丁寧な展開で、次第に互角の展開に。中々攻め込めない難しい時間帯でも、大津の巧妙な動きから、そこそこ攻める時間を作り、前半終了。麻也のヘディングが決まってリードできていれば最高だったが、それは贅沢と言うものだろう。
 そして後半、我慢を継続し、次第に当方の好機が増えて来て、最後にエース永井の一撃で仕留める事に成功。戦闘能力がほんの少し上回っていた差を、しっかりと出せた。同格の敵に、このような勝ち方ができるチームが本当に強いのだ。モロッコは、あの厄介だったトップを下げてくれて楽になった。おそらくスタミナに課題がある選手なのだろう。そして、先方はその後のカードがなかった。当方は向こうが2枚交代して様子をみてから、齋藤を起用できた。資源力の差が出た。サッカー力で上回っていたとも考えられる。
 ある意味では、後半10人となったスペインに勝つより、ずっと11人だったモロッコに勝つ方が難しかったはず。実に見事な戦いだった。

 ホンジュラス戦。前半は、宇佐美、山村が全くフィットしておらず、また杉本もトップで持ちこたえられず、苦しい展開となったが、麻也を軸に丁寧に守る。
 そして後半、ホンジュラスのプレスが弱まると、この3人もそこそこ順調に機能し始める。すばらしかったのは、山口と大津。この2人は出足もよいが、次の展開を考えてプレイをしているので、ファーストタッチと身体の向きが絶品で、次の展開が実にスムーズ。この大会で、完全に大化けしてくれた。また、宇佐美がレギュラクラスが周囲を固めれば、まあまあのプレイを見せてくれたのは好材料。金メダル獲得のためには、この天才肌の選手の活躍は必須なのだから。また、序盤は落ち着かなかったが、村松が自エリアをしっかり押さえる守備を見せたのも大きい。
 鈴木も褒めたかったのだが、あのアディショナルタイムのボール回し時に、最後ロングボールを蹴ってしまったので減点。

 そしてエジプト戦。序盤に一気に攻勢に立ち、清武のボール刈りから、そのまま永井が先制。守備の組織化の確立が、ボールを奪ってからの意思統一につながり、さらに永井と言う異彩を得て、このチームの長駆型速攻パタンは完成したようだ。日本のトップレベルが国際試合で、このような「長駆型速攻」を「型」として身につけたのは史上初めてではなかろうか。好事魔多し、永井の負傷が心配。メキシコ戦は難しそうだが、決勝に何間に合ってほしい。また、リードして敵が出てくれば、永井不在でも速攻が機能する事を示した斎藤はあっぱれだった。もし、永井不在でもメキシコはそう簡単には、前に出てこられないはずだから。
 後半エジプトが交代カードを切り終わった後で負傷者が出て、11対9になったのは幸運だったが、そうならなくても押し切っていた事だろう。そのくらい、攻守のバランスがとれていた。
 
 扇原の展開、清武の最終精度は、ほぼ確立した。残るは東と宇佐美だ。敵が速攻に対応してきた時に、得点を奪うために、最前線で必要な緩急を作り出せるのはこの2人なのだから。
 東はすばらしい運動量で献身的に戦っているのは間違いない。しかし、そこに加えて、ちょっとした溜めとか、ほんの少しスピードを落とすなどの工夫を発揮して欲しい。そして宇佐美には、勝負どころであの変幻自在なドリブル突破を。

 メキシコは難しい相手だ。しかし、発展途上のこのチームが大会前に互角に近い戦いを演じ、最終的に勝てたと言う実績は非常に大きい。あのメキシコ戦当時と比較し、当方の戦闘能力は格段に向上している。私は楽観的だ。
posted by 武藤文雄 at 21:37| Comment(11) | TrackBack(0) | 五輪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
オリンピック前の武藤さんの批判、苦言、憶測、予想等々が尽く外れたのが面白かったです。関塚監督にしてやられましたね。
Posted by at 2012年08月06日 22:50
この御仁はなにかというとすぐ「私の予想が外れた時には土下座をさせてもらう」と軽々しくいう。

そしてその中に必ず、「私の本当の願いは私のネガティブな予想を覆して日本サッカーが、華々しい功績を成し遂げることだ。つまり私はどんなに己が恥をかいたとしても、それは結果として日本サッカー界の成功、発展の代償なのだから、むしろ私は自分が惨めな醜態を晒さざる得ないことを強く望んでいるのだ」という意味を込める。

要するにそれは、自分ほどの価値ある尊い人間が恥も外聞もなく、土下座という醜態を晒すという、とんでもない犠牲を払ったとしても、それが日本サッカー界にとってプラスになることなのであれば、むしろ私はそれを真剣に望んでいるのだ、という、自分の途方もなく深淵な日本サッカーへの愛、を裏返し的に表現し、それを他人に理解させようとしていることなのだが・・・

そんな中で、ボクは「一体、貴方様の土下座ごときが、どれほどまでに深く、重く、シリアスな価値や意味を持っているのだと、貴方様は自分を買い被り、思い上がっているのですか?」と無邪気に質問したくなる。

今回、関塚氏は、見事に結果を出した。(メダルはダメかもしれないけど、これで十分だ)。
そして、関塚氏を否定し、偉そうなことを言った者たちは、当然、当事者として己のプライドと良心に従い、自らにペナルティを課すべきだろう。

そしてそのペナルティとは当然、「自分様の土下座」なとどいうクソゴミ以下の究極の無価値なものであってはならない。

具体的なことを言えばカネだ。

自分にプライドがあるのなら、良心があるのなら、己を罰するという意味を込めて、今現在の自分の銀行口座の残高の5分の4の額を東北の被災地に寄付すればよい。

そして最初からそんな覚悟もプライドもないのなら、偉そうなことを言うな。貴方達が何一つ発信をしなかったとしても、誰ひとりとして飢え死にはしないし、絶望に追いやられて自殺することもない。
Posted by 真の名監督4.5枠 at 2012年08月08日 10:23
真の名監督4.5枠も結局結果論で言ってるだけじゃないか。

そういうことは五輪始める前に言えよ
Posted by at 2012年08月08日 12:17
結果論ですが、一点だけ。
なぜ杉本健勇の高さを有効利用できなかったのか。
メキシコのプレスが弛まなかったことは確かで、敵を賞賛することは吝かではないですが。
彼らがロングボールに苦戦していたことはスカウティングできていたハズ。

戦力・戦術・準備の面で一枚上の相手でしたが、勝てない相手じゃなかった。本当に悔しい。

4年に1度の絶好機に、勝ちにいけなかった。サッカーのプロが集まる五輪はもう、育成を求める大会ではないでしょう。

Posted by at 2012年08月08日 14:14
勝っているチームを変えられなかったから、それに尽きると思います。まあ、しょうがないですね。

フレンドリーマッチで杉本の高さが活きたのは、同点の場面でセカンドボールを落とせるスペースがある程度あったから。

今回、杉本が入った時には既にリードを許していてスペースも少なく、アバウトなロングボールを入れられる状況では無かった。

たらればは色々思いつかないこともないですが、正直二回やって二回勝てる相手ではなかったのは明らかだと思います。

本田や長友は苦杯を舐めたし、香川や麻也は何も出来なかったのが4年前。それに比べれば苦杯もしっかりと味わい、なおかつ各々お土産も得た、何より6試合も出来たのは良かったと思います。

本当の「四年に一度」は二年後です。
Posted by at 2012年08月08日 21:02
>真の名監督4.5枠
久々の登場ですね。
見たくもない文章を読みにわざわざ武藤さんのブログにお立ち寄りいただくとは、相変わらずのようですな〜
たまには寄って「屁理屈」を捏ねて貰わないと盛り上がらないので、時々はお越しを。
Posted by at 2012年08月08日 21:11
>真の名監督4.5枠
この人すごいねえ。数年前堪忍袋の切れた武藤さんに名指しで批判されたのを未だに引きずってる。あなたのその負のエネルギーを是非東北復興に分けて下さい。
いやマジで。
Posted by at at 2012年08月09日 00:03
確かにメキシコは二回やって二回勝てる相手ではないですが、十回やって十回勝てない相手でもないでしょう。
もう、セルジオ並みに悔しがってます。

アバウトなロングボールを入れられない状況だったことは事実。とはいえ、ロングボールの精度や角度に工夫があれば打開策にもなり得たはず…急造チームにそこまで求めるのは酷なことですが。
そもそも、日本ではロングボールの精度や機能性に対するこだわりが少し足りないのではないでしょうか。


国内外に対する、五輪の影響力はバカにできないものがあると感じています。
本番はW杯であることは間違いないですが、Jリーグや協会に今回以上の努力を求める価値はあるのかもしれません。

Posted by 采配批判じゃないよ at 2012年08月09日 06:46
>真の名監督4.5枠
「貴方達が何一つ発信をしなかったとしても、誰ひとりとして飢え死にはしないし、絶望に追いやられて自殺することもない。」
出た! 得意の仰々しいナルシスティックな文章。
逆に言えば、武藤さんがこのブログでいろいろと発信しても、「誰ひとりとして飢え死にはしないし、絶望に追いやられて自殺することもない。」
んですけど。

あなたにもプライドがあるなら、無名性の中に隠れて他人を罵倒しているのだから、「己を罰するという意味を込めて、今現在の自分の銀行口座の残高の5分の4の額を東北の被災地に寄付すればよい。」
Posted by watanabe at 2012年08月09日 12:01
まあ、18人の枠でグループリーグ突破を目標としたチームでは準決勝で限界が出てくるのは仕方ないでしょう。
W杯でも準決勝より上に突破するには、最初から優勝を目標としてこの辺りにピークをもって来る事が出来るチームだけですから。

大会序盤でそういうチームの足元を掬うのも楽しいのですが、日本も最初からこのレベルを目標に据える時期になったというべきですかね。
Posted by at 2012年08月09日 12:10
リードされた後、メキシコゴール前に相手選手がわんさか居たのでロングボールは諦めましたが、それでも杉本は足元も上手いのでサイドを起点にして繋いで何度かそこからのクロスやCKもありましたが、ことごとく跳ね返されてましたね。
そもそも、1失点目もCKだったわけで、スピード・スタミナ・技術だけじゃなく、フレンドリーマッチで唯一勝てた高さでも上回られてしまったということ。
Posted by at 2012年08月09日 12:37
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