ちょっと記憶にないほど、残念な試合だった。
確かにドイツは強かった。6番と10番のドイスボランチの強さと上手さなど、近々、この2人は澤と阪口の域に達するのではないかとも、思ったほどだ。
しかし、序盤の3失点は、ドイツが優れていたから入ったものではなかった。単に日本の2センタバックが常識的な事、韓国戦までやれていた事ができなかったら失ったものだった。1点目は、ロイボルツが速かった訳でも狡猾だった訳でもなく、単に土光が油断してロイボルツのフリーランに気がつかなかったためだった。2点目も、マロジャンが強かった訳でも巧みだった訳でもなく、マロジャンと正対した木下の腰が引けていたためだった(土光のカバー意識の欠如も痛かった)。さらに3点目は、ロッツェンのヘディングの位置取りがよかった訳でも高かった訳でもなく、日本の選手達がロッツェンを見失っていたためだった。あの場所はセンタバックが押さえなければいけない。
確かに、NZ戦にしても、日本の守備はあまり誉められたものではなかった。けれども、このドイツ戦の失点は、従来の試合での失点とは本質的に異なる。はっきり言えば、センタバックの2人が舞い上がってしまったが故のものだった。決して能力不足によるものではない(「舞い上がった事が能力差だ」と言われればそれまでだが)。
「序盤のドイツのプレスに耐え切れなかった」との報道も見受けられるが、それは違う。確かに、ドイツのプレスは見事で、中盤で再三ボールを奪われたが、連続して攻め込まれて対応し切れなかった訳でも、プレスでボールを奪われた後に見事な崩しをされた訳でもない。また、準々決勝韓国戦の失点のように「非常に悪い取られ方」をして、守備の人数が少ないところに速攻をしかけられた訳でもない。単にセンタバックが不甲斐なかっただけの失点だった。ドイツが努力する前に、日本が自滅しただけの3失点だった。
また、後半立て直してからの攻撃も残念だった。前半からドイツの守備が非常に強い事はよくわかっていた。特に4DFとドイスボランチは、個人的なボール奪取力も、相互の距離感も、上下左右の連動も、質が高い。加えて、元々今回の日本代表の攻撃タレントは、(将来を見据えてのチーム作りのためだろう)技巧と勇気を持つ人材を並べ、個人個人のl即興的な連係を軸にしていた。したがって、日本が崩すとしたら、よほど冴えたヒラメキを発揮するか、しつこく分厚い攻撃をかけるしかなかったはずだ。しかし、前者は狙ってやれるものではない。すると、日本がやれた事は、分厚い攻撃を狙って、点がとれる可能性がある局面で多数の人数が前進する事だったはずだ。1点差でそのようなリスクをとった攻撃をするのは、セオリーに反するが、3点差である。行くしかなかった。
けれども、日本は常にボランチの藤田と4DFのうち3人が後方に残る。敵FWが2枚しか残っていないのに。
日本がつかんだいくつかの好機は、敵DFの粘りの前に、あと1枚が足りずに崩し切れなかったものだった。
相手が強かったのは間違いない。おそらく、この日本がドイツと10回戦っても2回か3回勝つのがやっとかもしれない。ところが、日本は100回やって1回あるかないかと言うヘタクソな試合をしてしまったのだ。
この日の彼女達に「よくがんばった」と言うのは、これまで見事な試合を見せてきた彼女達に失礼と言うものだろう。大変残念な試合だった。
どんな大会でも、優勝チームを除くと、必ず最後は負けて終わる。そして、上手に負けると言うのは難しいものだ。過去の世界大会での日本代表を思い起こしても、「うまく負けた」と言えるのは、南アフリカ大会のA代表くらいではないか。他の世界大会は、何か消化不良で大会を去っている。
ましてユース代表、若さを露呈するのはやむを得ないだろう。実際過去の男のユース代表を振り返っても、残念な去り方をした例は結構ある。若年層チーム史上最高の成績とも言える遠藤の代、決勝のスペイン戦の完敗は、あまりに残念だった。今野の代も最後のブラジル戦の惨敗は、やはり残念だった。ただし、遠藤の代も、今野の代も、そこに至るまで幾多の難敵を打ち破っていただけに、想い出は美しい。
そう考えると、今回の藤田とその仲間達は、ここまでの4試合、「格下の相手に確実に勝つ」と言うミッションをこなしてきた事もあり、あまり派手な戦いはなかった(もちろん、それはそれで決して容易な道ではなかったが)。
だからこそ、次が重要だ。ナイジェリアに勝って大会を終えて欲しい。それが、彼女達の2015年カナダへのスタートとなる。
もう1度、このチームの笑顔を観たい。
2012年09月05日
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