2012年09月08日

この日調子がよいと困るのは確かだが

 日本代表は、UAEに1対0の辛勝。
 まず、UAEが中々よいチームだった。素早い切り替えで8人のブロックを作り、粘り強くカバー。マイボールになると、勇気を持って多数の選手が前線に参加する。しかも、ほとんど卑怯な反則がない。正直言って、過去のUAEの印象(-後方を分厚く守り、時に危険な反則も辞さない、敵のミスを引っ掛ける逆襲速攻、能動的な攻撃は少ない-)とは随分異なるチームだった。ワールドユースで上位進出、ロンドン五輪にも出場、そう言えばアジア大会の決勝でも戦ったな。アラビア半島の代表チームは、サウジを底辺に、ただ後方を固める志の低いサッカーをするチームが多い。このUAEが、過去のアラビア半島国の常識を打ち破るサッカーを伸ばしてくれれば、嬉しいのだが。と、まずはキレイごと。
 日本は、この日に関して言えば、「あまり調子がよいと、イラク戦に向けてのコンディショニングが心配になる」微妙なタイミングの試合だ。しかも、ほとんどの選手が、欧州からの期間直後。体調がよい訳がない。そして、その通り、各選手がやや重めで微妙な体調だったように見受けられた。「結構な事だ」と言わなければならないのだろうな。もっとも、それはそれとして、敵はいわゆる五輪代表。「そのようなチームに右往左往していいのか」とも、さすがに思うわな。

 ザッケローニ氏は丁寧に選手を前後半に「配分」した。

 前半は、本田と香川の連係の確認、マスコミを意識した2人の顔見せも考えたのかもしれないが。その上で清武の先発を試み、マイクも久々に起用する。最終ラインは、長友の負傷欠場により、駒野の左と、酒井宏樹の右。センタバックは吉田と伊野波。テストを含めた常識的な布陣。
 本田は体調がよさそうで、精力的にボールを集め、強さを発揮しチームを牽引する。先般の6月の一連の試合で、完全にチームの中核として自信をつけた事も大きかろう。こう言った自覚(あるいは自惚れ、自己顕示欲)がこの選手のすばらしいところだ。ポジション的にも、いわゆるトップ下から挙動を開始し、最前線に上がったり、サイドに開いて香川と位置取りを変えたり、能動的に仕掛ける。
 ただ、案外と好機が生まれなかった。これは、本田が、いつも通り前田と岡崎がいるかのような仕掛けを狙い過ぎた事が大きかったように思う。前田がいればいったん縦に入れれば収まるし、岡崎がいれば前線ですさまじい運動量で顔を出すので、本田の強引とよくマッチする。しかし、この前半は、最前線にはマイクが、両翼に清武と香川。常識的にはサイドからしつこく攻めたいところなのだが。結果的に、溜めも数的優位も少ない中で、必ずしもゴール前の混戦向きでないマイクに、本田の強引がからみ、攻め込んでいるが、せわしない攻撃が続いてしまった。
 加えて、香川が完全に試運転モード。こちらはイラク戦に向けて調整中なのは明らかで、守備も緩慢なので、時々そこから危ない場面も作られてしまう。前線守備が甘い状況で奮闘する苦境は、駒野によく似合うのだが。
 
 後半は、香川→岡崎、長谷部→細貝、伊野波→水本。まあ、これはこれで予想しやすい交代。
 岡崎が左サイドに入り、守備が安定する(それでよいのかと言う気はするが、「岡崎を所有する幸せ」と前向きに考えるべきだろう)。しかし、素朴な疑問だが(いつも言っているが)、憲剛なり清武を中盤に使い、岡崎をトップにおいて本田と交錯させるオプションを、どうして試さないのだろうか。
 憲剛が入るとさすがに、本田の強引とは異なり、ボールをさっさと回り始める。決勝点も、憲剛と駒野と言う「安心のJブランド」のお膳立て。このあたりの老獪な選手は、マイクの使いどころをしっかりわかっている。考えてみれば、マイクが大爆発した森島スタジアムのタジキスタン戦も、この2人がマイクに点を取らせたのを思い出した。
 ちなみに酒井宏樹だが、よいクロスを上げていたのは確かだが、「真ん中にマイク」と言う意識が薄かった。この2人は親和性がよいとは思うのだが。また、酒井高徳も上々のできだった。ただ、サイドバックについては、若き両酒井にとって、長友、駒野、内田の壁は結構厚いな。まあ、選手層の厚さは喜ばしいのだが。
 ところで、憲剛の強シュートが岡崎にブロックされた場面だが、その前の決定機を決められなかった岡崎に対して怒った憲剛が、思い切りぶつけたと思ったのは私だけか。

 麻也の相棒問題だが、私はイラク戦については、伊野波でも水本でも、2人のJでの実績を考えれば問題ないと思っている。ただし、ブラジルワールドカップに向けてとなると話は別だ。定位置をつかんでいる今野もそうだが、「高さ」と言う問題をどう考えるべきか。個人的には、水本がもう少し空中戦での力強さが出てきてくれればと思うのだが。あるいは高橋をここに試すか。それとも、最後は闘莉王でよいかと考えているのか。
 清武は五輪ですっかり自信をつけたのだろう。積極的に仕掛け、時に左サイドにも進出する。ただ、五輪で見せた責任感と言うかリーダシップが、A代表では前面に出てこないのが不満。本田に対して、文句を言うくらいの姿勢が欲しい。同世代に、優秀な攻撃的MFのライバルが無数にいるのだから、今の彼らに対するリードが、ほんの僅かなものだと言う自覚はあるのか。
 試合出場機会がすっかりなくなっていると言う長谷部だが(国内含めて、どうして移籍しないのだろうか)、プレイそのものは悪くなかったと思う。よく動いて、ボールを広い、精力的に前進する。チームメートも、皆長谷部を尊敬している。ただ、私は現状では「細貝のボール奪取力」を選択すべきだと思う。そこから、長谷部の更なる進歩も期待できるはずだ。
 また、遠藤に代えての憲剛のテストも行うべきではないか(あるいは本田のボランチ)。唯一、敵地北朝鮮戦で、憲剛ボランチを短い時間帯試しているが(その時間帯の日本はよかったと思うが)、遠藤もよい年齢だし、負傷もあり得る。遠藤が出られない時に、長谷部と細貝の組み合わせと言うのは現実的でないように思うのだが。

 イラク戦に向けてはよい調整だったと言う事だろうか。
 そろそろ憲剛と駒野(と選ばれていない闘莉王)以外に、レギュラを脅かす選手が出てきて欲しい。控えの層は厚くなっているが、このままではちょっと閉塞感が。まあ、ロンドンに行った人も行かなかった人も、五輪世代の多くがJで(いや欧州でも)活躍しているから、そこに期待だな。一番可能性があるのは、永井かなあ。
posted by 武藤文雄 at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本代表 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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