2012年09月28日

風間八宏監督を高く評価する

 フロンターレを率いる風間八宏氏について。

 どうやら風間氏は、丁寧にボールを回すサッカーを志向しているようだ。そうだとしたら、狙っているサッカーは、短期に結果を出すものではない。しかも、今期途中からの監督就任なのだから、チームとしての完成度が低いのやむを得ない。そして、その状況下で、現実的に2部落ちはしそうもない成績は上げているのだから、まあ上々の戦績と言えるのではなかろうか。もちろん、フロンターレサポータの方々は「戦闘能力からすればもっとやれる」と思われているかもしれないが。
 ただ、現状のサッカーの延長線上にどんなすばらしいサッカーがあるのか、あるいは風間氏がどのような完成形がどのようなものなのか、正直言ってわからない。もちろん、このような「わかりにくさ」も、サッカーの愉しさの一つ。明らかに「何か」を狙っているのだろうから、その「何か」を愉しみに待つ事にしたい。

 風間氏の采配の特徴の一つに大胆な若手を抜擢している事がある。多くのケースで、若手選手の大胆な抜擢は、歓迎口調で語られる事が多いが、風間氏の事例では、その若手に2人のご子息が含まれるので、話が少々ややこしくなる。
 風間兄弟に触れる前に、他の若手選手について。大島僚太はいい。常に、個人技の冴えで突破なり、敵の裏を突こうとしている姿勢はすばらしい。しかも、守備も献身的だ。また、風間氏が筑波大から連れてきたと言う山越享太郎は、この年齢で既に自分の守備の間合いを確立しつつある。この2人は、今後の精進しだいでは、大変な選手に化ける可能性があり、彼らを常時先発に起用し定着させた風間氏の慧眼は、誰しも評価するところだろう。
 では、風間兄弟はいかがか。2人のサッカー選手としての基礎能力は見事なものがある。ボールを受ける一拍前に周囲を見て、適切に身体の方向を修正し、敵のいない地域にボールを止め、敵が寄せてくればしっかりとスクリーン、そして敵プレッシャをそれほど受けていない近くの味方に正確につなぐ。子供を指導した事がある方ならば、同調いただけると思うのだが、「子供に身につけて欲しい」と誰しもが思う能力を、かなり高いレベルでこの2人は身につけている。そう言えば、30年くらい前に似た選手を見た事があるな。
 しかし、この2人を見ても、トキメカないのだ。2人とも、鮮やかな得点も、敵を打ち破る個人突破も、敵の守備ラインを崩す鋭いパスも、遠く離れた味方への長いパスも、見せてくれない。あるいは、的確なボール奪取能力も、危ない場所を消す動きも、豊富な運動量も、見せてくれない。30年前の選手は、時に無理をして持ち出したりして、トキメキを与えてくれたのだが。
 地味で堅実で役に立つ選手を、よく「玄人好み」と評する事例が多い。しかし、この2人は地味で堅実だが、あまり役に立っているようには見えないのだ。そして、他のJクラブに移ればエースとして君臨する可能性を感じさせる小林悠を外してまで、2人を重要視するチーム作り、あるいは2人が不可欠なチーム作り。このあたりが冒頭に述べた「わかりにくさ」に、つながっている。

 とは言え。私は風間八宏監督を高く評価する。

 中村憲剛が光り輝いているのだ。
 ジュニーニョが全盛の頃の憲剛。ジュニーニョの抜け出しを常に憲剛は狙い続ける。憲剛の早くて速いパスが、前を向いたジュニーニョに通るのは、相手にとって恐怖だ。まず、相手はそれを押さえる。そこの不自由さをついて憲剛は自由自在に展開した。
 忠実な部下である谷口がいた頃の憲剛。憲剛が上がれば、谷口が下がる。憲剛が下がれば、谷口は長駆する。かくして、憲剛は後方を気にする事なく、自在に飛び出す事ができた。後方で溜めたい時は、そのための仕事場を谷口が作ってくれた。
 代表での憲剛。イビチャ・オシムも、岡田武史も、アルベルト・ザッケローニも、憲剛に主役の座を提供していない。中村俊輔、遠藤保仁、本田圭佑、香川真司。憲剛の仕事は、彼らを際立たせながら、勝負ところを見極める役回り。それを憲剛は完璧に務めてきたし、これから極めてくれるだろう。

 しかし、今のフロンターレにおける憲剛のシゴトは違う。すべてを、自分で担っているのだ。
 4DFの前に位置取り、バイタルエリアを襲う敵のパスを的確に読み続ける。横で彼のために、ボールを奪ったり、身体を張って憲剛が前を向く時間を作ってくれるチームメートは、もういない。最前線で裏を狙い続け、敵DFを押し下げるチームメートも、もういない。そのため、すべてを、自分で担わなければならない。豊富な運動量で、危ない場所を消し、的確にボールを奪取し、遠く離れた味方への長いパスを通し、敵の守備ラインを崩す鋭いパスを放ち、個人突破で敵を打ち破り、時に鮮やかな得点も決める。
 そして、憲剛は実に愉しそうにプレイしている。繰り返そう。中村憲剛が光り輝いているのだ。

 わかりにくかろうが、何だろうが、今の憲剛を観るのは愉しい。風間氏を高く評価するものである。
posted by 武藤文雄 at 23:40| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
もう少しなんか書くのかと思ったらまともだった
Twitterで独自性が出ないと悩んでいたのも納得です(笑)
風間兄弟の基礎能力の高さとか武器の無さとかも普通の視点
憲剛が楽しそうなところに少し毒を感じるけど普通の視点で
唯一他との差別化は山越を評価してるくらいですか
らしくない!(笑)

風間さんは兄弟みたいな基礎能力を全体に求めてるんでしょうね恐らく




Posted by あお at 2012年09月29日 02:58
自分でなにもできずボール持っても
すぐにあずけてくる風間兄弟のあと
しまつしながらあのパフォーマンス。
すごいことだ。
ザッケローニも試合を生でみれば
すぐにわかると思う。
Posted by はげぽ at 2012年09月29日 10:01
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