19日はセンタ試験、両軍の選手に受験者がいないとの事。さすがに応援する同級生には受験者もいるだろうし、同学年のエリートを生中継で観戦したい高校3年生も多数いる事だろう。けれども、人生と言うのはそう言うものだ。決勝を戦う若者達、試験と戦う若者達、それぞれの青春を満喫してもらいたいものだ。
ともあれ、いささか遅くなったが、決勝の展望を。
何よりも、京都橘の2トップを軸とした攻撃力だ。噂には聞いていたが、見ているだけでワクワクしてくる見事な攻撃だった。
当たり前と言えば当たり前だが、ベスト4のチームの守備は皆見事なものだ。センタバックはヘディングは強いし、カバーリングへの理解も深い。サイドバックは速いし、押し上げもうまい。中盤のいずれの選手も守備の意識は高く、お互いの距離感も適切だ。そして、国立競技場と言う最高の舞台に立っているのだ、いずれの選手の献身も言うまでもない。
このような堅牢な守備網を崩すのは容易ではない。しかも、各チームとも「まず守る」と言う意識からスタートしている。ために、前線に思うように人数を割く事ができないから、攻撃はどうしても薄くなる。すると、敵陣をこじ開けるためには、個々の選手のヒラメキや、セットプレイや、勝負どころで人数をかける攻撃などが必要となる。実際、星稜対鵬翔戦は2対2からのPK戦と、出入りの激しい試合となったが、その4点はいずれも上記のような、見た目が華やかな「見事な」得点だった。ただし、このような「見事な得点」と言うのは、結構な偶然に頼るものとなる。
けれども、京都橘の攻撃は違う。明らかに準備された攻撃で、敵守備陣を崩し切る能力を持っている。
話題となっている2トップの仙頭と小屋松は、2人ともボールの受け方がうまい。桐光のDFは相当厳しくマークしているのだが、動き出しのタイミングの工夫やちょっとしたフェイントで、後方からのフィードを適切に受け、振り向いてしまう。そして、2人共相当なレベルのシュート力を誇る。
しかも、周囲の選手もこの2人の活かし方を心得ている。釋を軸にしたうまいボール回しで組み立て、引いて来た仙頭に(しかも仙頭がうまく前を向いた状態で)ボールを渡す。仙頭は前を向くと、いずれの場所からでも(敵陣でも自陣でも)迷わず敵陣に向けてドリブルを開始する。敵DFが前進を阻止しようとすると、独特の間合いから、30mくらいの射程の高精度なパスを絶妙なタイミングで繰り出せる。
このパスを受ける小屋松が、上記のようにまた受けるのがうまい。うまく仙頭と距離をとり、絶妙な動き出しで加速し、トップスピードでボールを受け、そのまま敵陣を襲う。しかも、ドリブルのコース取りが心憎いばかりに巧妙。敵守備陣にカバーリングの余裕を与えない。さらに敵ペナルティエリアに入ってからの冷静さも大したもの。先制点の際に、強引に敵陣に割って入り桐光のDF3人を引きつけながら、後方で全くフリーの中野にラストパスを出した場面。2点目でやや幸運に抜け出しながら、慌てて寄せて来た敵DFを落ち着いて抜き去った場面。いずれにしても、大した度胸である。
正直言って、桐光の準備の甘さには驚いた。京都橘の攻撃に対して、漫然とした対策をとっていなかったからだ。特に味方のパスを受けるために後方に引く仙頭を厳しく押さえに行かなかったのは、いかがなものか。結果、多くの場面で仙頭は自在に前を向いていた。また、小屋松の受け渡しの約束事もはっきりしていなかったようだ。特に小屋松が外に流れた際に、サイドバックと、小屋松に釣り出されたセンタバックの受け渡しが、はっきりとしていなかった。
さらに、呆れたのは後半の守り方。前半に、あれだけやられておいて、後半は立ち上がりから攻撃しか考えていないような前掛りになった。結果として、京都橘は、おもしろいように逆襲速攻を連発。特に仙頭は、自在に動いて後方からのフィードを受けて前進。慌てた桐光守備陣は、ファウルで止めるしかなく、次々と警告を食らっていた。負けているからと言って、強力な攻撃力を持つ相手に、あそこまで無防備になってしまっては。桐光の守備の甘さは、京都橘が用意周到に守備を固めていたのとは対称的だった。京都橘は、執拗に桐光の攻撃の中核松井を執拗にチェックし、さらに自陣に相当な人数をかけて粘り強いカバーリングを継続していた。2トップの派手な活躍が話題となるが、後方の選手の集中力や献身も大したものだ。
ただの邪推だが、桐光は日本テレビを中心とする首都圏マスコミに「優勝候補」と持ち上げられ、横綱相撲での優勝をしなければならない精神状態になってしまっていたのではなかろうか。結果、あれほど、厄介な2トップに対する守備が甘くなったのではないか。だいたい、桐光はプリンスリーグなどで、日頃からJクラブユースの強豪と戦った経験は豊富なはず。仙頭、小屋松よりも強力な攻撃タレントと相対した経験は豊富なはずなのだが。
しかし、鵬翔は違うはずだ。
元々、守備力を前面に押し立てて、ここまで勝ち上がって来たチームだ。京都橘の攻撃を押さえる事から試合に入ってくるはず。負傷上がりだったエースの中濱が、1週間の「延期」で、いっそう復調するだろう事もプラス材料だ。もちろん京都橘も小屋松の負傷の状態は悪かったようだから、この「延期」がどちらに幸いるかは、わからないけれど。
いずれにしても、双方が守備を固め、負けない事から入る、堅実な決勝戦が愉しめそうだ。一般のリーグ戦のように、準々決勝以降、1週1試合のタイトルマッチを戦う事ができる「幸運」に恵まれた両チーム。よい試合を期待したい。
2試合ありました。「あと1勝で優勝ほぼ決定」という条件で
迎えたのですが……
12月2日 ●1―2 市立船橋
12月9日 △2―2 マリノス
これで勝点40でFC東京・レイソルと並び、得失点差での
優勝となりました。マリノス戦は92分に同点においついて
まして、まさにギリギリの戦いだったんですね。
次はプレミア参入戦
12月15日 ○2―1 ジュビロ
12月17日 △1―1 大谷室蘭 (PK 15―14)
ジュビロ戦は難敵相手に丁寧に守っての勝利。大谷室蘭戦は
ご覧の通りのPK戦。これでプレミア昇格を決めてやれやれと
言ったところですが、息抜く間もなく選手権に。
しかも、初戦は四中工です。
1月2日 ○4―2 四中工
1月3日 ○3―0 佐賀商
1月5日 ○2―1 作陽
で、1月12日の京都橘戦となるわけです。
プリンスの優勝争いに始まって参入戦・選手権と1ヶ月以上
負けられない戦いが続いていたわけで、(しかも、
ロスタイム同点劇あり長大PK戦ありの濃密な試合の連続です)
精神的にも肉体的にも限界だったんじゃないですかね。
「こりゃ休ませなきゃ保たない」と監督が休ませたら、
精神的にキレてもう元に戻らなくなっちゃったと。
一週間休んだのに作陽戦より動けなくなってたのは、
そういうことじゃないかな。
最後は残念だったしコンディション調整も大変だったでしょうが、
桐光イレブンにとってこの1ヶ月は貴重な経験になったのでは
ないでしょうか。ちょっと前まで12月にこんなに試合
しませんでしたからね。
#ちなみに、プリンス関西は10月に全日程を終了したため、
#京都橘は11月17日の予選決勝の後、選手権まで1ヶ月以上
#空白期間がありました。