大前元紀、小野裕二、永井謙佑、そして金崎夢生。
いわゆるロンドン世代の攻撃タレントが、次々と欧州クラブに旅立っている。いよいよ、日本の優秀なタレントの欧州流出が止まらない雰囲気になってきた。しかも、ロンドン世代と言っても、実際のロンドン五輪代表は永井のみ、他の3人はロンドンには行ってない。いや、3人とも、関塚氏に、ほとんど試される事なかった。つまり、そのような国際的に無名の(しかし、日本サッカー界にとっては宝物の)選手が、20代前半で欧州に買われて行く時代になったと言う事だ。
日本サッカー界がいかに他国から高く評価されているかと考えると喜ばしいが、Jリーグから次々にスタアがいなくなる寂しさもある。何とも味わい深い、複雑な心境。
圧倒的な実績を誇るのは大前。高校選手権を制した流通経大柏高で大スタアとして活躍し、エスパルスに入団。最初の2シーズンは出場機会がほとんどなかったが、2010年シーズンに使われ始め、2011、12年シーズンは完全にエスパルスの大黒柱に成長。高校時代からのシュートの巧さ(ボールを止める場所のよさと冷静さがすばらしい)、セットプレイの精度、小柄な体躯を活かしたシャープな突破、小柄ながら飛び込むタイミングが絶妙なヘディング。まぎれもなくJ屈指の機動的な攻撃タレント、この2シーズンのJリーグの彩りを鮮やかにしてくれた選手だ(いや、どうしてもエスパルスに勝てないベガルタサポータの感想で、誉め過ぎかもしれませんが)。ともあれ、この選手が、五輪代表に不在だった事そのものが、一種のスキャンダルに近い。メキシコ戦や韓国戦の終盤、「ベンチに大前がいてくれれば」と思ったのは私だけではないだろう。国際経験は少ないが、欧州に買われて行っても何ら不思議でないタレント。
小野裕二の狡猾さは、新しい息吹を感じさせてくれる。日本の前線の選手と言えば、カズ、中山、久保、寿人のように得点を狙うために動くタレント、柳沢や高原に代表される多様な能力を見せるタレント、大久保、田中達也、石川ナオのような突破力を武器にするタレント、鈴木隆行や巻のようにひたすら労働するタレントなどがいた。それに対し、小野の魅力は、したたかな位置取りからの受けの巧さ。無理をしたい時は得点をそのまま狙うし、我慢する時はキープに転じる事もできる。もちろん、いずれの英雄達も30歳前後になれば、そのような柔軟な対処がとても上手になる。しかし、小野裕二は、それを20歳そこそこで実現していたのだ。このような狡猾な若者は、中々登場しない。ベベットやラウルなどの系譜に入る才覚を持った若者だと期待してきた。
永井謙佑の五輪での活躍はすばらしかった。数mのダッシュが鋭い選手はいるが、永井はその加速が30mくらい落ちない。往々にして日本の俊足選手はブラックアフリカと対戦すると、見事なアジリティで敵を抜きさっても、フィニッシュ前に追いつかれてしまう事が多かった。しかし、永井はフィニッシュまで、フリーで走り切れるし、シュートもそこそこ巧いし、プレイの選択も上々だ。そう考えると、永井の潜在能力は格段のものがあり、世界屈指のFWになる可能性も秘めていると思う。個人的に永井のプレイで大好きなのは、長駆疾走で攻め込んだ後に、敵ボールとなって全軍が守備に入った時に、最前線からヨタヨタとオフサイドになる事を注意しながらジョギングで戻る場面。身体のエネルギーを振り絞って全力疾走+もう一仕事した後のヨタヨタは、大変美しいものがある。
金崎夢生は、この世代の選手としては、(ほんの3年くらい前は)香川と並び最高の実績を誇っていた(2人共89年早生まれの同級生)。ナビスコ制覇を含む、トリニータでの幾多の栄光。南アフリカ大会のメンバ入りも期待されたタレントだ。当時は、プレイ面でムラが多い香川よりも、安定感があり信頼できると言う向きも少なくなかった。ふてぶてしいボールの持ち方と高速ドリブルが魅力。背を立てた姿勢から突破を図るのか、パスを選択するのか、守備者からすると非常に読みづらい。不運にも、負傷での離脱が多く、五輪代表からもほとんど声がかからなかったのだが。
永井は五輪代表で、金崎はトリニータで、それぞれ監督が彼らを軸にした攻撃を作り込み、彼らも輝く事ができた。しかし、スタアがずらりと揃うグランパスでは、そうは行かなかった。しかも、ピクシーは、よい選手を並べて総合力で敵を圧倒するサッカーを好む、そして闘莉王と言う圧倒的存在が中軸として機能する(欧州トップクラブの監督は、ファーガソン氏を典型に、こう言うやり方を好む人が多い、モウリーニョ氏やベンゲル氏が例外なのだ)。結果的に、2人ともいわゆる「駒」としての起用に終始、大化けはできずにいた。確かに2人とも「河岸を変えるタイミング」にも思う。
繰り返すが、永井を除いては、皆必ずしも豊富な国際経験を積んだ選手ではない。しかし、大前に代表されるように、皆がJでの実績は相当なレベルの選手たちではある。欧州クラブが、まだ代表に定着していないこれらのタレントの素材を見抜いて(代理人のお勧めに「トライしてもよいか」と考えて)、欧州に連れて行っているのだから、これは大変な事態だ。「国際経験が乏しくても、日本での活躍、実績があれば、欧州のトップレベルで通用する」との判断が普通になっていると言う事か。冒頭にも述べたが、結構な時代になったものだ。
もちろん、代表未満の彼らが欧州に買われて行く事そのものが、Jのスタア不足につながるのは言うまでもない。ベガルタサポータとしても、エスパルス戦で大前の恐怖に怯える快感は何ものにも代え難いものだったし。彼らがいないJリーグは、いる時と比較すれば少々寂しいものになるのは否定できない。
しかし、我々は割り切らなければならない。
スタアの流出は確かに寂しい。けれども、仕方がない事なのだ。彼らを国内につなぎ止めたかったら、最低限相応のサラリーを約束しなければならない(もちろん、名誉、やりがい、歓喜なども重要だけれども)。そして、そのためにはJの観客が増えて行く事が全てなのだ。ブンデスリーガ級の観客動員があれば、ほとんどの問題は解決するのだ。
それには時間がかかる。今、やれる事は、Jの観客数を増やして行く事につきる。
今となれば、ピッチの上で、長谷部達がラーム達を上回る事は、不可能でないと思う。けれども、我々がかの国のサポータ達を上回るには、まだ時間をもらわなければならないと言う事だ。早く、長谷部達に追いつかなければ。
2013年02月02日
この記事へのトラックバック









中田英、稲本ら、マスコミのいうところの「黄金世代」がピークかと思っていたら、アレは序章に過ぎなかったのですね。
プレミアリーグで日本人同士のマッチアップが見られる(しかも1人は資産世界一のクラブに所属)時代になるとは。
観客数。ご時世もあり難しい問題です。どれだけ気軽に、ライトな層でも、サッカー場に足を運べるようなればいいと個人的には思うのですが。。
> 今となれば、ピッチの上で、長谷部達がラーム達を上回る事は、不可能でないと思う。けれども、我々がかの国のサポータ
>達を上回るには、まだ時間をもらわなければならないと言う事だ。早く、長谷部達に追いつかなければ。
え〜、その前に「我々」にマスゴミさんが追いついてくれなければw
これだけの”タレント”を抱えたリーグをろくに取材せず、その才能を世間に知らしめようともせず、
Jよりも劣るリーグ(どの国とは云わない)に移籍することを出世であるかのように報じる彼等。
2月末現在のWB某の馬鹿騒ぎをみながら。