先制点はとてもよかった。
一連の攻め込みは今野のインタセプトから。本田と細貝が起点となり、岡崎の受け、香川の右サイドの粘りなどが錯綜し、バイタル手前で細貝がまたボールを受ける。細貝の鋭いフィードを、清武が身体を張って粘り、ペナルティエリアに進出した内田につなぐ。フリーの内田のシュート性のクロスを、岡崎がいかにも彼らしく突くと、ボールはポスト内側に当たりながらネットを揺らした。
守備を固めた相手に、執拗な遅攻の連続で隙間を作り、サイドバックの進出からエースが得点。しかも、それに絡んだのが、いわゆるバックアップ的な存在の細貝と清武だったのだから、これはめでたい。
特にこの場面の細貝は印象的だった。適切な場所に顔を出し、攻め込みきれなかった味方からしっかりとボールを受け、十分なパススピードの正確なボールを清武に送った。「ボランチ」と言う単語の語源は「操縦桿」と言う意味との事だが、遠藤や憲剛がやるような全軍指揮官には「ボランチ」と言う称号は相応しい。それに対して、細貝は「守備的MF」と言う呼び方がよく似合うように思う。忠実に動き、敵の攻撃を摘み、味方からのボールを受け、適切に前線に渡す。この得点場面の細貝は、正にその職務を忠実に果たしてくれた。
遠藤と前田が不在のスターティングメンバ。頑健で大柄な選手が人数をかけて組織的に守ってくるラトビア守備ライン。決して簡単に破る事ができないこの壁を、細貝が起点となって破ってくれた。後半、遠藤が起用されてからの日本の方がよかったのは間違いない。けれども、この前半の45分間で、細貝がこの鮮やかな得点の起点となった事は、ブラジルでの快進撃を目指す我々にとって、とてもとても大切な事だ。遠藤不在でも、細貝が異なるプレイスタイルで、攻撃にも十二分に貢献できる事を示してくれたのだから。
予選突破を決めれば、今年の後半は今日よりも格段に難しい試合を組む事ができる(もちろん、ホームの豪州戦や、敵地近傍でのイラク戦も、その難しい試合に含める事ができるだろう)。そこで、細貝が、今日以上の活躍を見せてくれる事を期待したい。それは、そのままブラジルの上位進出につながるはずだから。
ラトビアのプレスが途切れずに体力的に厳しいはずの前半は、今野以外は欧州クラブ所属選手で戦い、上記のように細貝の充実と、清武の機能性を確認できた(清武については、もう十分確認済みなのだが)。そして、敵のプレスが緩む後半アタマから、遠藤と前田を起用し、ベストメンバに。
途端にリズムがよくなり、幾度も好機を掴む。そして、逆襲から岡崎が巧みに遠藤に落とす事を起点に、本田が左サイドの香川を使う壮大なカウンタアタック。香川の鮮やかな技巧から、本田が見事なドライブシュートを決めて2点差。さらにその敵キックオフ直後に、岡崎のチェイシングからのボール奪取からのショートカウンタ。遠藤の縦、前田のキープ、香川の個人技、岡崎の得点力で、3点差。たった、16分間で、来月のヨルダン戦に向けての準備も成功。
ヨルダン戦前に、皆が集まれて、本当によかった。
後は控え選手を試す時間帯となった。
気の毒だったのは乾。今日は伸び伸びとプレイする時間帯のみでの起用だった。やれる事はフランクフルトやフランス戦で、既にわかっている事。問題は多士済々の攻撃的MFのポジション争いで、変則的だったり、戦術的だったりする難しい仕事ができるかどうか。それができなければ、憲剛との争いに勝つのは難しい。そう言う意味では、この日は全く負荷なき状態での起用は残念だった。清武の代わりにスタメンで使ってもよかったと思うのだが。
後半、流れがよくなったのは、岡崎の他に、前田が入り、パスの出し所が増えたのも重要だった。今、このチームには、この「受けの巧さ」を発揮できるのは、この2人しかいない。パスの出し手は多数いるのだが。そう考えると、「受けの巧さ」の新たなタレントの発掘が必要に思う。と、言っても人材は豊富なのだよね。寿人を筆頭に、豊田、森島、大迫、もちろん永井も大前もいる。小野裕二もここへの参入を狙っているだろう。ザッケローニ氏は、そのあたりをどう考えているのか。それとも、前田と岡崎がいれば十分で、後はハーフナーのような飛び道具でよいと捉えているのか(え!闘莉王?)。このあたりは、氏の指向性次第だろうが、それが来年6月に向けて、段々明らかになっていくのを観るのが、また愉しみだ。
終わってみれば、誠にめでたい準備試合となった。うん、よかった、よかった。相変わらず、強くて、つまらん事この上ないけれど。
2013年02月07日
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なるほど。目が肥えてる方は違いますね。私なんかは活躍を無邪気に喜んでましたが。。たはは。
「強くて、つまらん」はもう決め台詞ですね!