2006年12月28日

ファンタジスタを生み出す国

 ダラダラとサボっているうちに、すっかり年の瀬になってしまった。色々あった1年だったが、全体を振り返るのは毎年のように30日、31日に行いたいと思う。

 今日講釈を垂れたいのは、今年日本サッカー界に若きファンタジスタ(いや呼び方はエキストラキッカでも何でもよいです、要は技巧的で創造的な攻撃の名手の事)が次々に登場した(しつつある)と言う事。



 散々反町氏に毒を吐いたアジア大会。反町監督の手腕に多々疑問は残ったが、本田圭佑が凄かった事だけは間違いない。パキスタン戦のいきなりの先制FKで度肝を抜き、シリア戦では平山に完璧なクロスを合わせ、北朝鮮戦は先制された直後に増田に完璧なスルーパスを通し一柳へのアシストを演出。北朝鮮戦はその後も、苦しい状況で幾度と無く好機を演出した。

 一方、日本協会の不可思議な選考基準からアジア大会のメンバ外になった水野晃樹。水野不在でアジア大会に臨む事そのものがスキャンダルと言ってもよい程シーズン終盤は充実していた。あのナビスコの「水野晃樹の決勝戦」、そしてあの国立の韓国戦、幾度と無く右サイドをえぐり続けた水野。

 決勝がちょっと悔しかったアジアユース。大会前からJで猛威を振るっていた梅崎には相当な期待がかかっていた。技巧で屈強な守備者を抜き去るタイミングを完全にものしたこのこの若者は、そのドリブルへの自信(と言うか確信と言うか)から、次々に変化ある攻撃をJで見せてくれていたからだ。そして迎えたアジアユース、梅崎の出来はそう悪くは無かったのが、やや印象が薄くなってしまった。

 それは、この大会ではあまりに柏木が充実していたからだ。独特のテンポのドリブルから落ち着いたパス、正確なヒールキックで見事にゲームを作った。あげく、決勝では強引なドリブルから強烈な得点も決めた。この2人が来年のワールドユースで世界相手に、どのような技巧と発想を見せてくれるか。

 そして、柿谷。あのアジアジュニアユース決勝戦でのプレイ。何かこう、論評すら無意味な印象を持たせてくれたプレイの数々。組織がどうだ、駆け引きがどうだ、と言う事以前に圧倒的な個人能力で北朝鮮を叩きのめしてくれた。この若者も来年は世界が待っている。



 よく、小野たちの世代は「黄金世代」と呼ばれていた。この「黄金世代」と言う表現にはには2つの意味があったように思う。1つはワールドユースで準優勝した世代の事を示す意味。つまり、この年代の選手達には、小野を筆頭に高原、稲本らワールドユース直後に一気にA代表まで昇格した選手が多く、他の世代よりも質量とも優れた選手が多いと言う見方だ。

 もう1つは、少し世代の幅を広げていわゆるシドニー五輪世代には、中田、中村、小野、小笠原と言った所謂ファンタジスタ系の選手が多かったと言う見方もあったように思う。以降の世代に決定的なその手の選手がなかなか出てこなかった事もあり(唯一の例外は松井だろうか)、結果的に現在20代後半の世代が、日本サッカー界の1つのピークと言う雰囲気があった。そしてその貴重な世代のワールドカップを川淵とジーコによって台無しにされた悔しさが、今年の日本サッカー界には漂っていた。



 しかし、日本のサッカーは短期的に代表監督の選考を誤ったり、協会会長が訳の分からない理屈をこね回して居座っても、ビクともしない堅牢な若手育成システムが確立しているようだ。本田、水野、梅崎、柏木、柿谷と言った前途有為なタレントが次々に登場するのだから。彼らがこれから順調に成長できるかどうかはわからない。また、オシム氏が常日頃語るように、彼らだけでは強いチームは作れず、彼らに献身する優秀な人材の育成も不可欠だ。さらには彼らが作った好機を敵陣に叩き込むストライカの育成(いやストライカと言うポジションは、他のポジション以上に育成するものではなく登場するものかもしれないが)も必須だろう。

 とは言え、これだけの逸材が次々に登場した2006年は、それはそれで悪くなかった年だったと振り返ってもバチは当たるまい。
posted by 武藤文雄 at 23:34| Comment(11) | TrackBack(0) | 若年層 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サハラカップなんかを見ていると、ほんとにこいつらプロに行けないのか!?<br />
と思う選手がけっこういました、Jgorlのダイジェストだけだけど。<br />
<br />
そういう選手が大学や下部リーグに行って、また成長してプロに入ってくる。<br />
ネットの連載記事とかで育成指導員もけっこう面白い人がいるんだな<br />
と知ったんですが、良い選手が生まれてくるという事は<br />
良い指導者も育ってきているという事だと思います。<br />
<br />
天皇杯準決勝でトラップだけでアナウンサーを唸らせてた小野も<br />
若い時は色んな人の支援で育ったと読みました。<br />
広島ユースの森山監督も着任時は指導力に疑問を持たれながら<br />
今年はサハラカップで優勝しました。<br />
プロ選手を育てようと長年、滝ニで指導していた黒田さんも高円宮杯で優勝。<br />
そして神戸ユースへ転向。まだ高校選手権がありますが。<br />
あと、今年は甲府の大木さんに驚かされた。<br />
あのやり方がどうして清水で成功しなかったのか?知りたい。<br />
他のクラブとは選手の思考が違うように見える。<br />
茂原があんなにテクニックを使うのを見たのは神戸の時以来で<br />
他の選手もプレーの質がすごく面白い。<br />
千葉といい甲府といい、戦力的には少し落ちるのに<br />
あんなに楽しいサッカーができるとはは素晴らしい事だと思いました。
Posted by Unknown at 2006年12月30日 04:28
全能の神、電通様のニラミ、恐怖政治が蔓延しているせいか、メディアにおいて次のアフリカ大会のアジア枠が相変わらずの拝金主義まみれの腐ったものであることを批判する声など皆無だが、この一番大切なポイントを看過しておいて、やれ若手の育成は順調だ、などと喜んだところで一体何になる、というのだろう。<br />
<br />
日本サッカーのさらなる進化を実現することなどある意味簡単で、それはW杯のアジア枠を2以下に設定し、日本にとってアジア予選を生き地獄してしまえばいいのだ。無論そんなことをしてしまえば、JFA、電通などの一部の既得権者たちにとっては最悪のシナリオだが、その一番大切なことから眼を背けて一体何をしよう、というのだろう。<br />
<br />
今度のアジア枠は実質、5。そして世界中が注目している日本サッカー界の恥ずかしいことこの上ない、笑いモノの“裏口入学”はこれからも続く。根底にあるその病巣から眼を背けて、自分を誤魔化し、一体何を語ろう、というのか?何がそんなに面白いのか?何がそんなに尊いのか?一体そこに何の価値がある、というのだろうか?<br />
Posted by 真の名監督実質5枠 at 2006年12月30日 12:28
電通云々なんてホントーにくだらん話はおいといて、北京五輪世代といいU16代表といい面白いタレントが育ってきた感じがしますね。ただ、やはり面白い選手は中盤に偏っていて、例えばオシムが求める強くてビルドアップにも優れたDFや個人でも強引に局面打開が出来るFWってのはなかなか育たないなという感じは持っております<br />
もっともそういう選手は世界的に見ても不足しているだろうし、言っていることはかなり贅沢なことなんでしょうがねw
Posted by くまがい at 2006年12月30日 23:31
念のため補足しておきますが、ボクは要するに、結果として日本代表が世界に誇れるくらいに強くなれば、それでいいんです。ボクの願い、目的はそれしかない。<br />
<br />
だからもし日本代表が強くなるのなら、アジア枠なんてどうでもいい。<br />
アジア枠が8でもいいし、極端なことを言えば日本だけは特例処置で予選免除でもいい。ただしその代わりに日本代表がW杯ベスト8以内を達成しなかった暁にはその責任を取って日本サッカー協会の上層部は全て懲戒免職のうえ、各人の私有財産は残らず没収。そして電通は今後一切のW杯ビジネスから永久追放する。そういう取り決めでもしてくれれば、日本代表ももうちょっとはマシになるでしょうね。<br />
<br />
やってくださいよ、このアイディア。<br />
そうなればアジア枠なんてどうでもいい。
Posted by 真の名監督実質5枠 at 2006年12月31日 11:49
なんか又吉イエスを思い出した
Posted by Unknown at 2006年12月31日 12:48
>なんか又吉イエスを思い出した<br />
<br />
笑ったw確かにそんな感じだ
Posted by くまがい at 2006年12月31日 19:09
笑ったが、氏の意見を(予選で)てっとりばやく実現するならUEFAに入るのが一番早い。
Posted by しましま at 2007年01月02日 21:15
笑ったが、氏の意見を(予選で)てっとりばやく実現するならUEFAに入るのが一番早い。
Posted by しましま at 2007年01月02日 21:16
笑ったが、氏の意見を(予選で)てっとりばやく実現するならUEFAに入るのが一番早い。
Posted by しましま at 2007年01月02日 21:16
前にも書いた気がするが、真の名監督実質5枠さんは自分の主張を何の遠慮もなく述べる自分の場を持てばいいと思う。<br />
んで開設したblogからトラックバック打てば?<br />
武藤さんとこのコメント欄でごちゃごちゃ書かれるのはちと迷惑だけど、URLをここに書いてくれたら見に行くと思うよ。
Posted by p at 2007年01月04日 02:56
いつまでも、W杯に出たくても出たくても出られなかったころのメンタリティそのままに、ただ出たくらいで喜んでいるだけなのかね?ボクたちの感覚っていつまでもそこで止まったまんまなのかね?<br />
<br />
あと、どうしようもない寄生虫みたいなクズ政治家をなんとか使いこなすのに大切なのは「その政治家の一遍の良心に賭けてみよう」だとか「真心と本気を持って真摯に対峙すればきっとその政治家は判ってくれて改心するはずだ」などという寝言ではなく、「役に立たなきゃオマエは次、落選させる」という明快な“外圧”でしかない。<br />
<br />
ボクがアジア枠を減らせ、と主張するのはこの極めてシンプルな大原則に忠実なだけだ。<br />
<br />
ただ、W杯に出たい一心で、これ幸いと大甘なアジア枠の実情を看過し「それ以外の手段でも日本代表は進化していけるさ」などと言い張るのは、「きっと真心をもって接すればあの政治家は判ってくれる」などとホザくノー天気な、無責任野郎の言い訳、アリバイ作りみたいなモンだ。
Posted by 真の名監督実質5枠 at 2007年01月05日 15:32
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