この日ポルトガルはどうしても勝たなければならなかった。
当然序盤から猛攻をしかける。ギリシャ戦のガタガタ攻撃が嘘のような高速展開。フィーゴやクリスチャン・ロナウドの両翼突破。さすがフェリペ氏で、2年前のブラジル代表同様、大会に入ってからチームを作ってくるとは(どうせならば、もう少し前倒しでチームを作れば精神衛生上はよいと思うのだが、これは大会終了後改めて考察したい)。しかし、スペインの守備もなかなか分厚く、攻め切れぬままに前半終了。
ポルトガルとしてはいやな雰囲気での後半突入。ここでフェリペ氏は2つの策を取る。1つは、4年前の欧州選手権で大活躍したヌノ・ゴメスの起用。そして今1つは、フィーゴを後方に下げた事だった。後半5分過ぎにフィーゴがヌノ・ゴメスに通そうとしたパスをインタセプトされる。解説の北澤氏が「あのような中央突破に拘泥すると、スペインの逆襲に食らうから危ない」と語った。全くその通りだと思って見ていたら、あの運命の中央突破が生まれた訳。つまり、北澤氏も私も、フェリペ氏に完敗したのだ。
フィーゴが半身で好パスを出せたところが1つ目のポイント。ヌノ・ゴメスがゴールに背を向けて時計回りに回ろうとして、その方向にフィーゴが高速で走り込みスペインのDF3人を引き付けたのが2つ目のポイント。そして、フィーゴが走り抜けようとした瞬間に、ヌノ・ゴメスが半時計回りに突然反転し、そのまま振り向きざまの強シュート。なるほど、フィーゴにはこのような使い方がある訳だ(余談ですが、中田と久保で、こんな得点を決めてくれないものかねえ)。
この得点そのものは、2人の偉大な選手のヒラメキと個人技によるものだが、この2人の位置関係を準備したのは間違いなくフェリペ氏。上記したように、フェリペ氏はじわじわとチームを作りつつあるが、たった3試合で早くも(笑)、芸術的な攻撃作りにも成功した。いや、大したオッサンだな。
さて、いずれ劣らぬ勝負弱さに定評のあるイベリアの眠れる巨人同士の対決だが、結果としては歴史的により勝負弱い方がまたも負けた訳。スペインはこれだけのサッカー大国なので信じ難いのだが、64年の地元欧州選手権で優勝した以降、つごう20回あったワールドカップと欧州選手権のいずれもで、84年の決勝進出以外、ただの1度もベスト4に進んでいない。一方ポルトガルは、66年、84年、00年と、3回もベスト4進出を果たしている。このあたりの勝負弱さの差が、この日の大一番の明暗を分けたのではないか。
ラウルを中心としたメンバの充実と悲惨な結果の落差を考えると、スペイン代表がビッグタイトルを奪う日は永遠に来ないのではないかと思ったりして。
2004年06月21日
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