田中誠対ハンガリーと言うと、あの96年アトランタ五輪最終戦ではないか。
大差で勝ちたかったあの試合、開始早々集中力を欠いた日本はCKから失点。その後猛攻をかけ前園のPKで同点。そして、一気に逆転し大差をつけようとして臨んだ後半開始早々、ハンガリーの実に美しい中央突破に失点してしまった。センタバックの田中誠はこの大会絶好調、素晴らしい読みを再三見せていた(ナイジェリア戦の失点は田中誠の負傷退場後)。しかしながら、冴え渡っていた田中誠の読みだが、あのハンガリーの美しい中央突破にはなす術がなかった。この東欧の古豪の伝統を見せ付けられた攻撃だった。
とは言え、あのアトランタ五輪で素晴らしかった田中誠は、すぐにでもA代表に昇格するのではないかと思われた。しかし、そうはならず、様々な不運が交錯し、あれから10年近く日本屈指のセンタバックとして実績を残しながらも、A代表に選ばれる事はなかった。その田中誠の初めてのA代表マッチ。それがハンガリー戦と言うのは、何と言う因縁だろうか。おお、そう言えばあの試合は、日本がロスタイムに点を取って、今日と同じ3−2で勝ったのだっけ。まさか9年越しの復讐戦だったのか(あの日本戦に出て今日も出ていた選手がいたのだろうか)
日本サッカーのエリートながらA代表に選ばれた事のない田中誠。大学サッカーで成長し、昨年来A代表のレギュラを獲得した坪井。名門市立船橋出身ながら、各年齢層で日の丸に縁の無かった茶野。この3人が一緒にプレイしたのは、それぞれ初めてなのではないか。2点目失点時の坪井の出足の拙さと、最後のPKの茶野の軽率さ(大変不運ではあるが、敵地のロスタイムにああ言う手の格好で後ろから当たってはいけない、この日の主審がホーム贔屓なのは明確だったのだから)を除けば、この3DFは見事に機能した。個々の個人能力の高さの賜物だろう。そして、この3人の経歴が全くまちまちなのは、今の日本サッカーの選手育成システムの多様性の成果を著している。ここは素直に、負傷欠場した宮本、中澤らとの今後の激しい競争を期待しよう。
藤田、福西、西のジュビロが誇るMF陣は、さすがにお疲れのようだった。
ただ、1点目失点時の福西は疲労は言い訳にはならず。福西と言う選手は、トルシェ氏時代から、どうにも代表でハッキリした活躍を見せてくれない。コンディションが整わなかったとは言え、このようなチャンスを活かして欲しかったのだが。以前から再三述べているように、私は小野と稲本のボランチ併用は疑問視している。そして、小野との組合せで活きるのは、遠藤ではなく福西(明神も戸田もいるけれど)と思っているのだが。
藤田に関しては議論は必要なく体調さえ整えてくれれば問題ない。西についての議論は今後の出場機会次第だろう。ただ、茶野と合わせて(卒業生が中々代表に定着しない事で定評のある)市立船橋出身が2人もA代表に出場した記念すべき試合とは言えよう。
2点を奪った久保、玉田、本山トリオは言う事なし。特に体調がいかにも悪そうな久保が、前半終了間際の大仕事こそGKの好捕に防がれたが、終盤帳尻を合わせたのは素晴らしい。久保と言い玉田と言い、シュートの巧さが前面に出たのも嬉しいところ。あの終盤加地のセンタリング、飛び込んだ玉田のボレーが外れた時の、後方でフリーになって構えていた久保の悔しそうな素振りが愉しかった。
本山もとてもよかったが、あの終了間際のファウルで止められたドリブル突破時に、ファウルを受けない工夫ができるかどうかが、この細身のタレントの課題ではないか。そのあたりの指導に最適な人が彼の身近にいるように思うのだが、その人がそのような指導に熱意を見せてくれないところが悩みの種。
もっとも、代表監督がこのトリオを上回る評価をしている3人を持つのだから、贅沢な話だ。
そしてアレックス。
藤田が交替時に腕章を外した時に、アレックスが実に自然に手を差し出した。さすがだ。アレックスは課題山積の選手ではあるが、このような自惚れは彼の美点だ。同じタイプの選手としては、この日のTV解説者がいた。サッカーとは自己顕示欲のスポーツなのだ。
プレイ振りもこの日は悪くなかった。攻撃面では、ポストを叩いた直接FK、開始早々に西に通した見事な逆サイド展開、上記した前半終了間際の久保の決定機へのセンタリングなど、突破力は往時とは比べようがないが、高精度の左インフロントキックを活かして好機を演出。課題の守備面でも、よい読みで敵の突破の機先を制して身体を入れる好守備が目立った。あの後半開始時の自己オフサイド判断はいただけなかったが。
この選手をレギュラに固定するから物議をかもすのであって、他の選手との適切な競争があれば、存分に面白い代表選手との位置づけになると思うのだが。問題は監督の使い方なのだ。
そう言えば、ロスタイムに疑惑のPKで2−3で敗れた日本代表監督(現役時代の実績は最高のブラジル人だったっけ)を、決然として更迭した切れ味鋭い人事を敢行した強化委員長がいたっけな。
2004年04月25日
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