しかし、最終戦で得失点差の争いとなり、双方のモチベーションが異なっている場合、大量点を狙うチームが勢いに乗れば、大差になるのは珍しい事ではない。まして、中国は最後の1点が奪い切れなかったのだし、クウェートもハーフタイムまでは同点だったのだから、疑惑と言うほどの内容では無いと思うのだが。唯一不思議な感じがするのは「中国のほうが異様にロスタイムが長かった」と言う報道。と、言うのはこの手の難しい試合は逆に主審の方が物議をかもすのを避けるために、さっさと終わらせる事を望むものだからだ。まして、終了間際でのロスタイムの表示はそれほど長くなかったとの事だから不思議。映像を全く確認していないのだが、どなたかご覧になった方がいれば、詳細を教えて欲しい気もする。
この手の「大量点」で世界サッカー史上もっとも有名なのは、78年ワールドカップ、2次リーグのアルゼンチン−ペルーの6−0の試合だろう。既に試合が終わっていたブラジルと同勝ち点で得失点差で3点マイナスで迎えたアルゼンチンが決勝進出を決めた試合。これは、なかなか怪しげな試合で、ペルーGKがアルゼンチンから帰化した選手だったのが話題となった。もっとも、アルゼンチンの先制得点前に、ペルーは猛攻をしかけポストに当たるシュートなどもあった。大差がついたのは、失うものが無くなっていたペルーが後先考えず攻撃的なサッカーを仕掛けた事、大会途中にケンペスをFWから上がり目の中盤に下げたアルゼンチンの多彩で美しい攻撃サッカーが確立された事が要因と捉えるべきだろう。
中国と言えば、82年のワールドカップのアジア・オセアニア最終予選。クウェート、中国、ニュージーランド、サウジアラビアの4ヶ国で行われたホーム&アウェイの総当り戦(2位までが出場権獲得)。クウェートのトップ抜けが決定、中国は最終戦を終えて、3位のニュージーランド(1試合を残す)に勝ち点で2差、得失点でプラス5で、出場権獲得ほぼ確定と思われた(当時は勝利は勝ち点2)。ところが、ニュージーランドが最終戦で最下位のサウジに、何と5−0で快勝し、勝ち点、得失点差いずれも並んでしまった。その後のプレイオフでニュージーランドが勝って出場権を獲得する。
また、この手の話で一番凄いのは、84年欧州選手権のスペイン。予選はオランダと同じグループ、お互いに1勝1敗、オランダは最終戦のマルタ戦を5−0で勝ち、1試合を残すスペインに勝ち点で2差、得失点差は11の差をつけた。ところが、スペインはセビリアで行われた最終のマルタ戦、何と12−1で完勝し、総得点数でオランダを逆転し本大会に出場する。スペインはその後、フランスで行われた本大会でも、決勝でプラティニフランスに完敗するも準優勝。この大勝あたりから、スペイン代表の重要な試合は、ゲンのよいセビリアで行われるようになる。
「中国と香港は普段は僅差の試合なのに」との声もあるようだが、昨年の東アジア選手権で両国の対戦を見た限りでは、両国の戦闘能力差は明らか。上記したモチベーションの違いがあり、チームとしての勢いの差があれば、あの位の大差がついてもおかしくはない。
もし、日本がオマーンと同勝ち点で並んだ状態で、最終のシンガポール戦を迎えたとしたら、10−0くらいの得点差がつく試合を狙ったはず(そして、それは不可能な事ではないと思う)が、最近のシンガポールとの試合は、先日の敵地での2−1、あるいは2000年アジアカップ予選での3−0。そう言うものなのではないか。
まあ、トップレベルに限らず、底辺中の底辺でも、モチベーションと勢いで「思わぬ大差」がつく事は、よくある話と言うのは昨日も体感したのですが。