2006年12月12日

存在そのものが難しい大会だが

 試合は期待通り面白かった。

 いかにもメキシコの選手らしいバネの利いたパスワーク。アメリカの3トップは、左からクラウディオ・ロペス、カバニャス、ブランコと名の知れた各国の代表選手が並び、3人のスタイルがそれぞれ異なるから面白い。左のC・ロペスが常に張り出し、カバニャスとブランコの2人が左右の関係を維持しながら上下の位置を切替えてスペースを作りながら好機を演出する。そうこうして右サイドからブランコが狙い済ましたカーブのクロスを入れて、C・ロペスがフリーで抜け出しながらヒール気味のシュートを浮かせてしまった場面。MFのファビアーノ・ペレイラのヒールキックから右バックのカストロがオーバラップ、カストロがカバジャスとのワンツーを狙ったところで、カバジャスがさらに大外に上がってきた(この攻撃の起点だった)F・ペレイラを使い全くのフリーにした場面(F・ペレイラのシュートはニアの枠外へ)。いずれも見事な攻撃。

 対して韓国は崔眞xを軸に中央の4人が、いかにも韓国らしく粘り強くよく守る。C・ロペスはお年のせいか、やや切れがなくなったようにも見えたが、ギリギリで身体を寄せてくる全北守備陣が最後で自由にさせなかったとも見えた。ちなみに守備的MFの金鉉洙は、この試合のCBを務めていた金鉉洙と同一人物なのだろうか。詳しい人いたら教えてください。そして全北の攻撃は、大柄で突破力のあるゼ・カルロスをトップにおき、空中戦の強い王淨鉉(しかし前半で交代してしまった)、その代わりに出てきたちょっとしたタメの巧いボティ、セットプレイでカーブのかかった強いボールを蹴る事ができる金炯犯などが、よいプレイを見せる。アメリカに比べると不正確だが長いボールを使い、受け手が強引に前に持ち出して攻め込むあたりも韓国らしい。

 かくして、ややアメリカが優勢だが、両軍ともシュートがほとんど枠に行かず、後半も半ばを過ぎ延長の風情も高まってきた。「寒いけれど面白い試合だから延長も悪くないか」と、坊主と話していたら、とうとうアメリカが先制した。セットプレイ崩れからアメリカが攻め直す、中盤から深いクロスが右に開いていたカバジャスに出る間、攻撃に参加しそのまま残っていたCBロハスは全北のDFと凄まじい位置取りの争いをしていた。カバジャスが持ち出したところで、この位置取りに勝ちかけたロハス、しかしDF(右バックの田廣煥だったと思うが確認し損ねた)もよく身体を寄せていた。ここで、カバジャスは意表をついて低く強いセンタリング、そのため意表をつかれたDFは完全にバランスを崩し身体を離してしまう。ロハスはそのため、完全に一歩前に出る事ができ、足が絡まりながらもボールになだれ込んで押し込むのに成功した。終盤の好機に勇気を持って敵陣に居座り続け得点を狙ったロハスの執念と、カバジャスの見事なアイデアが結実した得点だった。

 ガンバが全北に負けた試合は映像でも見ていないが、この日の試合を見た限りでは全北の代わりにJ1の強豪クラブが出ていても、十分にやれたと思う。これはこれで、このような悔しさは持ち続けるべきなのだろう。



 と言う事で中々愉しめた試合。

 先日述べたように、坊主と私は「今後の活動に向けた研修の場」と言う事で無料の観戦(研修観戦は本人の他に同伴者1名も無料観戦が可能)。周囲にも「いかにもサッカーのコーチをしています」と言う雰囲気の中年のオッサンと、グラウンドコートを着ている少年の組み合わせが多数いた。私同様毎週末サッカーと子ども達に遊んでもらっている父親が、研修観戦を堪能したと言う事か。ありがたい事だ。

 けれども、やはり本当にこれでよいのかとなると疑問。今日、青山門で研修観戦案内ハガキを提示してもらったチケットは何とカテゴリー2。バックスタンド、ゴールラインやや後ろの5000円の席だ。当然、2000円のゴール裏だと思っていたのに。まあ、TV映りを考えて、バックスタンドの空いているあたりの席を、招待席にしたのだろう。

 いや、悪くない席で親子で無料でタフな国際試合を堪能させていただいた訳です。文句を言ったらバチがあたるのは、よくわかっています。

 けれども、このような不自然な方策は長く続かないように思える。この試合の前売券を事前に購入していた方がどのようなお考えだったのかは全く想像できないが、やはり商売としては拙いのではないか。

 結局チケットの売れ行きと言う問題に帰着し、この大会の存在意義にまで話は遡るのだろう。元々、不定期開催を余儀なくされていたワールドクラブカップが、トヨタがスポンサになった事で日本での一発勝負となり、世界に定着した経緯を思い出してみよう。今ほど世界のサッカーが過密日程で悩んでいなかった70年代ですら、既に南米チャンピオンと欧州チャンピオンはH&Aで戦う日程を確保するのが難しかったのだ(ご承知のように不定期開催だったのは、日程調整問題以外にも多数の問題があったのだが、それはまた別途)。

 まして、今日これ以上大会期間を長くする事(あるいは欧州チャンピオンを長く拘束する事)が現実的とは思えない。その中で、ベガルタ仙台に「いつか世界一を目指す」と言う目的意識を持たせてくれるこの貴重な大会をいかに育てていくか。中々妙案が出ないものだ。

 とりあえずは、坊主と2人で無料観戦させていただいた事が、結果論としてプラスにはたらく事を望むものである。
posted by 武藤文雄 at 23:10| Comment(5) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 今回の金鉉洙と依然触れられている金鉉洙は別人(のはず)です。<br />
 実は金鉉洙は2人いまして、名前も生まれ年もポジションも同じなので知らないぶんには大変紛らわしかったりします。個人的にはプレースタイルも近いと思うのですが(どちらも大して見たことはありませんが…)、大きな違いがひとつありまして、それは今回来た全北の方が身長が10cm低い(176cm、もう1人は186cm)ところですね。<br />
 以前城南にいた方の金鉉洙は現在は大邱FC所属で、ちなみに昨季はディナモ・ザグレブにいました。
Posted by Unknown at 2006年12月13日 04:18
武藤さんのこのブログを見て、月曜は国立に行くのをやめました(TV観戦)。元々この大会のチケットは異常に高いのですが、無料配布のチケットがあると聞いたら身銭を切って行く気がうせました(→決して武藤さんへのあてつけではありませんので念の為)。 W杯もそうですが、国際的な大きな大会は曲がり角に来ていると思います。庶民が気楽に見られないスポーツはいかがなものでしょうか?
Posted by 生涯一サポーター at 2006年12月13日 05:58
とうとう2週間更新なしですか。<br />
ご多忙ゆえとはお察しいたしますが、愛読者としてはいと寂し。<br />
復活を心よりお待ちしております。
Posted by Unknown at 2006年12月26日 21:45
死んだのかな?
Posted by Unknown at 2006年12月27日 00:25
年末は大変に忙しいような業種もあるでしょうから・・・。まあ、気長に待ちましょう。
Posted by Unknown at 2006年12月27日 22:28
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