2006年04月03日

健太と青山の若さ

 ガンバにとってはつらい試合だった。エクアドル戦にフル出場した宮本と加地のみならず、代表に召集され負傷が明確になった遠藤、前節の代表組不在時の試合で負傷した明神と、中心選手4名が離脱(もっとも、西野氏にとって宮本が中心選手かどうかは議論が分かれようが)。

 試合は苦しいメンバ構成のガンバに対し、エスパルスが攻勢を取るが、先制したのはガンバ。それも、非常に美しい得点だった。左サイドに進出した家長が中央を向いて、右サイドバックの森岡と正対。ボールを左右に揺さぶって森岡の体勢を崩した瞬間に、内側に走りこんできた二川に森岡の股間を通して正確なグラウンダのパス。二川は縦前方に抜け出すドリブルを見せた上で後方にヒールで落とす。そこに走りこんだ家長は右足で実に見事なトラップで自分の得意な左足で強シュートを打てる場所に正確に落とす、このトラップからの体重移動で家長は追いすがる森岡をブロックする。そして、渾身の強シュート。この右足トラップから左足のシュートには、かのラモン・ディアスを思い出したりして。

 その後も両チームが攻め合う面白い試合が継続。シジクレイがゴール前で全くのフリーになって、腰が砕けたキックで枠を外した場面は特に惜しかった。ところが、この前半、シジクレイはもっと散々な目に会うことになる。ロスタイム、逆襲から矢島に(シジクレイから見て)右サイドに引きずり出され完全に抜かれてセンタリングを許す。そのセンタリングに伊東、ツ宰榛が合わせ損なうが、逆サイドから長躯した3人目の兵働が左足で美しいミドルシュートを叩き込む。さらにその直後、エスパルスDFのクリアをツ宰榛がヘッドで流すと、シジクレイがコントロールミス、再び矢島に狙われる。慌てたシジクレイは無様に転倒、矢島はフリーで抜け出し、余裕綽々好GK藤ヶ谷の股間を抜いた。考えてみれば、来月34歳になるシジクレイにとって、ここまでの連戦のフル出場は相当厳しいはず。連戦続きだったここまでの日程を考慮すれば、このあたりで休養を取りたいところだが、ここまでのリーグ戦で休養十分な宮本はこの日、日本平には不在だった。



 青息吐息のシジクレイとガンバを救ったのは、エスパルス長谷川健太氏の采配だった。ロスタイムに猛威を振るった矢島をマルキーニョス交代させたのだ(エルゴラッソによれば、矢島が右肩を負傷していた故の交代らしいが、あのロスタイムの連続2得点を見せられた野次馬からすれば、素直には信じ難い報道だ)。矢島のアグレッシブな攻め込みに苦しんでいたシジクレイはこれで一息つく事ができた。

 さらにそのマルキーニョスが、前半のシジクレイを思い起こさせるシュートミスで逸機するのだから。元々シュートの巧さ、ゴール前の冷静さが身上のこのストライカのミスは、エスパルスに「いやな雰囲気」を感じさせるに十分。さらに前半からエスパルス攻勢を担っていた藤本、兵働の両サイドハーフが飛ばし過ぎか次第にガス切れしてくる(TV解説の原氏が、かつての日本鋼管のファイタだった藤本のお父上について言及、「この技術に父上のファイトが加われば本当にすばらしい選手になるはず」は、けだし名言、藤本はこの日のガス切れを恥ずるべし)。

 2点目は、ガス切れした藤本のサイドを、ガンバの青木に破られて好センタリングを上げられたのがきっかけ。藤本の交代選手を準備していた時点での失点となった。これは長谷川氏の采配が後手に回ったと言わざるを得ない。とは言え、この失点は青山の決定的ミス。後方にフェルナンジーニョが走りこんでいるにも関わらず、青木のクロスに触らず逆サイドに流してしまった。クリアさえしていれば、何も問題なかったのに。

 同点になり、ホームのエスパルスは前掛りになる。幾度か好機を掴むものの、一方でガンバの再三の逆襲にも脅かされる。交代出場した播戸の広範な動きがエスパルスを苦しめる。その苦しい時間帯をエスパルスのベテランボランチ伊東が支え、ガンバのカウンタの目を摘む。伊東が西野氏の前に立ち塞がるとなると、ついつい昔を思い出したりして愉しい。もう、あれから10年経ったのだ。



 二転三転する試合を決めたのは、西野氏の見事な采配。双方が攻撃的に戦い疲労困憊した終盤、右サイドに安田を起用した。おお、あのアジアユース1次予選北朝鮮戦で終盤起用され決勝点を決めた安田君ではないか。そして、安田は右サイドでよく粘り、青木の好センタリングにつながる好プレイ。青木のクロスを受けたマグノ・アウベス。見事な個人技でDFをかわし決勝ゴール。



 面白い試合だった。ガンバとしては苦しいメンバ構成ながら敵地で勝ち点3を獲得したのだから最高の結果だろう。一方、エスパルスにとってはショッキングな結果。

 しかし、先は長い。(負傷と言う情報もあるが)矢島の交代、藤本→高木純の交代遅れは、長谷川氏の采配ミス。しかし、今は我慢の時、長谷川氏は若手を大胆に抜擢し、天皇杯準優勝を含み、良好なサッカーを見せつつある。個別の戦術ミスは厳しく指摘されるべきだろうが、近い将来の期待は大きい。

 もう1つ。限り無い未来を持つ青山。2点目の軽率な判断、3点目のマグノ・アウベスとの駆け引き、いずれも猛省すべし。

 繰り返そう、「青山よ、君のせいで負けたのだ。」
posted by 武藤文雄 at 23:47| Comment(13) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
矢島は明神と同じ怪我なので采配ミスにはあたらないかと・・・
Posted by k at 2006年04月04日 00:41
見て欲しいですよね、もっと多くの方に。
Posted by kun at 2006年04月04日 00:46
確かに矢島交代は健太錯乱かと思ってしまった。ケガをしていたとのことですが、じゃあケガしていてあの活躍はものすごいじゃないか。いまだにケガしてたとは信じられません。<br />
<br />
ちなみに水曜日のナビスコVS新潟戦でも先制ゴールをあげています。ジェジンのような屈強な身体に玉田のようなスピードを持つ男。大ブレイクする予感。
Posted by ロビン at 2006年04月04日 01:11
苦言を下さい。<br />
青山が清水と日本を背負って立つDFになるために。
Posted by 皇帝 at 2006年04月04日 01:42
どちらも好きなチームという訳ではなく、<br />
ぼーっとテレビを見ていました。<br />
でも、次第に画面に釘付けに・・・・。<br />
いやー、おもしろい試合だったです。<br />
でもって、武藤さんの講釈。<br />
いい週末といい週明けです。さんきゅ。
Posted by ベガルタファン at 2006年04月04日 09:22
右肩鎖関節 亜脱臼です。<br />
たぶん、初のリーグ戦先発で痛みは感じて無かったのでは。<br />
あの長身にスピード、足元、エスパサポの期待は大きいです。<br />
<br />
青山はヘディングが強く、スピードもある、将来の代表を<br />
背負うのでは?と思わせるホントにイイ選手です。<br />
しかもまだ高卒の2年目、19才ですから。<br />
<br />
だから、もっともっと素晴らしい選手になるために<br />
厳しい批判は大歓迎です。
Posted by 才谷@へちま at 2006年04月04日 12:50
全治6週間だそうですね<br />
少し心配ですね<br />
<br />
清水は本当に若いチームです<br />
これからどんどん強くなっていくと思いますよ<br />
やっと健太監督の考えも浸透してきたっぽいしw
Posted by DUNGA at 2006年04月04日 12:55
追加<br />
森岡SBは無理ですねw
Posted by DUNGA at 2006年04月04日 12:56
どうしても腑に落ちないのが、やはり西野。<br />
宮本よりシジクレイ、手島より安田を選ぶことは、<br />
状況を考えた上での最善を選択したのでしょうが、<br />
カバーリングやラインコントロールに長けた選手を意図的に軽んじているように思えてならない。<br />
シジクレイが前に出たがるところがあるのでこういった選手と組ませたほうが安定するようにも思えるんですが。<br />
どうなんでしょう?<br />
Posted by 京都サポ at 2006年04月04日 22:25
西野は好采配でしたね<br />
入江をSBに入れ、家長をいきなりボランチに移したのがキーだったようなきがします
Posted by Unknown at 2006年04月05日 00:10
清水は若手を勇気を持って使って<br />
その若手が頑張ってますよね。<br />
うらやましいです、ハイ。<br />
ウチなんて・・・・(泣)
Posted by トラマ at 2006年04月05日 09:12
よくわからないのですが、手島はちゃんとベンチ入りしていました(ここまで、キャンプ中の別メニュー調整から出遅れていたようです)。<br />
安田は攻撃的な位置に投入されたので、そこで手島とのオプションと言うことはありえないと思います。
Posted by あさ at 2006年04月06日 01:02
藤本は若き代表のころ、もっとひたむきだったのにねえ。。。でも藤本と青木という01年U−17代表の左サイドコンビがマッチアップしたことに感激。当時監督の田嶋幸三氏もさぞかし嬉しいことでしょう。<br />
しかしガンバは青木といい、丹羽大揮といい若くして代表を経験した逸材が控えにいて、もったいないねえ。。西野さんも彼らをもっと起用したいはず。宮本の立場、胸中はいかに。。。
Posted by 海外組 at 2006年04月06日 20:10
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