2006年05月01日

強豪クラブと地方クラブ

 考えてみれば、今シーズンに入って、アルビレックスの試合をじっくり観るのは今日が初めて。ベガルタサポータの私にとって、アルビレックスは最も気になるJ1チームとも言える。今となっては随分と差がついてしまったが、一時は観客動員が順調な地方クラブとして、よく並立して取り上げられていた。さらに今シーズンは人的交流が激しく、シルビーニョ(この人は完全移籍)も、中原(この人は当方からのレンタル)も、三田(この人はレンタルの返却)、当方からの移籍選手。そして何よりアルビレックス監督の鈴木淳氏はブランメル黎明期の中心選手兼コーチなのだから(ちなみに、この人と私の因縁はこちらに)。

 さて、一方のガンバ。つい数日前にアジアチャンピオンズリーグのアウェイゲーム大連戦を戦い、相も変らぬ中国現地のインフラや対応の悪さもあり、苦杯を喫した直後。体調も悪かろうが、精神的にもきつい状態での試合。満員の敵地でのアルビレックス戦は、相当厳しい戦いが予想された。



 試合は予想通り、前半からガンバが攻勢を取る。けれども、アルビレックスはフラットな4−4−2で、8人が後方を固め、トップの矢野と中原が精力的なチェックで、ガンバのDFラインのボール回しを追い掛け回す。見事な組織守備で、なかなか隙を作らない。

 それでも、前半ガンバは幾度となく好機を作る。加地と家長がそれぞれ両翼から中に持ち込み、2回ほど二川の妙技でマグノ・アウベスが強シュートを放った場面は特に惜しかった。前半も半ば過ぎからは、橋本と遠藤が中盤を完全に制圧、上記の決定機を含め、幾度か決定機を掴みかける。一方のアルビレックスは、シルビーニョの展開からファビーニョの突破を軸に幾度か逆襲をしかけるが、2トップがシュートまで持ち込めない。

 ところが、先制したのはアルビレックス。中盤のボールをカットして仕掛けた速攻、寺川?のクサビを受けた中原が、ガンバDF山口の粘り強いマークを強引に振り切り、振り向きざま左足を一閃すると、ボールは強烈にゴールネットを揺らした。ここまでは献身的によく動いていたものの、シュートまでは持ち込めていなかった中原。この場面のはお見事の一言に尽きる。山口が振り切られそうになった瞬間によく読んだ宮本が寄せたが、間に合わなかった。この鮮やかな一撃を見た瞬間に、この中原の所有権は我がベガルタにある事を思い出すのだから、現金なものだな。ヘ、ヘ、ヘ。とは言え、本当に鮮やかな得点だった。



 後半、当然ながらガンバの逆襲が予想された。ところが、後半に入ると大連戦の疲労か、チーム全体の運動量がガクッと落ちる。自慢の両翼、加地と家長が押し出す場面はほとんど見られず、フェルナンジーニョも登場頻度が激減する。ボールが来ないマグノ・アウベスは比較的元気で前後左右に動き、ボールを引き出そうとするが、奏功しない。

 一方アルビレックスは、後半のアタマから宮沢に代え、左利きの鈴木慎吾を右サイドMFに起用し、中盤の活動量を増やし、8人による守備をいっそう完璧に稼動させる。さらに後半半ば、度重なる献身的な前線でのチェックを継続していた中原が足が吊ったところで、田中アトムを起用。田中の起用でチーム全体の運動量が増え、さらに守備が固まる。

 ガンバはフェルナンジーニョを諦めて前田を起用するも、チーム全体が疲労しており、ますますアルビレックスの守備の網にかかる。ここで、疑問だったのが西野采配。明らかに疲労している選手が多数いるのに、交代を使わない。あげく、シジクレイをトップに上げてパワープレイを狙う。けれども、家永も加持も前進そのものがつらそうで、アーリークロスを上げられる場所にすら進出できない。結果的にシジクレイがいなくなって後方が薄くなった分だけ、アルビレックスがガンバ陣内でボールをキープする事ができるようになってしまった。ようやく終了間際に播戸と中山悟を投入するも、ボールを前線まで運べない状態でストライカをいくら並べても、効果はなかった。

 西野氏の采配については、前々節のマリノス戦など見事なものがあり、昨シーズンの優勝と合わせて「ごめんなさい、恐れ入りました」のタイミングをうかがっていたのだが。従来の西野氏がこのような采配をすると「ほれ見た事か」と勢いづいて批判したものだが、最近の西野氏はこのような事はほとんどなかった。何か我々外部の者には理解できない理由があったのだろうか。いや、でも皆が動けていないで、しかも負けているのだから、交代枠はフルに使うべきでしょうが。



 かくして、スター軍団でもあるガンバが、体調が悪いと言う不運もあり、敵地で苦杯、典型的な、「強豪クラブが地方クラブにやられるパタン」となってしまった。

ホームのアルビレックス、前任の反町氏の手腕が冴え過ぎていた事もあり、鈴木淳氏は非常にやりづらい立場だったが、この日の勝利で満員のサポータにも完全に評価される立場になったのではないか。これは個人的にも嬉しい事だ。決してタレントに恵まれているとは言えないチームだが、組織的な守備と伸び盛りの若い2トップ、さらにはエジミウソンが復帰すれば攻撃に核ができる。いずれのチームにとっても、非常に厄介なチームである事は間違いない。
posted by 武藤文雄 at 23:00| Comment(2) | TrackBack(0) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
イタリア人が喜びそうな試合展開でしたね。
Posted by kun at 2006年05月02日 10:20
淳さんは前任の山形でもしっかりとした組織を作り上げた前任者の跡を継いでおりましたね。<br />
個人的には若手の育成手腕が高いんじゃないかなーと思ってます。<br />
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中原、今期のベガルタではなかなか出番には恵まれなかったとは思いますが…後は怪我をしないでがんばってほしいですね!<br />
<br />
Posted by ゴールド・フラッグ at 2006年05月02日 18:51
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