とにかく忙しい。宿題の「トルシェ総決算」と「ジーコのひみつ」以外にも書きたい事がいくつかあるが、ままならない。でも、やれるところまでやろう。
サッカーは4年サイクルで動いているのは言うまでもない。それはそれでよいのだが、4年と言うサイクルはどうしても短いために、時代を4年ごとに切ると、どうしても視野狭窄になりがち。そこで、それとは別に10年サイクルでものを見直す事で、全体視野を
確保する事ができる。6年前にこの発想法の実例について述べたので、参考にして欲しい。
そのような10年サイクルで、日本のFWを振り返ってみる。
60年代を代表するFWと言えば、議論の余地なく釜本と杉山。70年代は釜本と永井(奥寺の位置づけが難しいが、私は永井を選ぶ)、80年代は原は決まりとしてもう1人にちょっと悩むが水沼でよいだろう(水沼が一番輝いたのは引き気味のFWのポジションの時だったから)。90年代は言うまでも無くまずカズ。そして、中山と言う事になるだろう(福田と言う選手は、FWではなくMFとして記録にも記憶にも残したい)。
では2000年代を代表するFWは誰か。まだ半ば過ぎしか経っていない2000年代。最終決定の段階ではないが、中間発表(笑)と言う見地からならば議論できよう。そして、その2000年代の日本を代表するFWの中間発表と言えば、やはり鈴木隆行と久保竜彦と言う事になるのではないか。
鈴木の業績については過去にも称えた。何回でも繰り返すが、あのベルギー戦の鈴木の同点ゴールが無ければ、4年前我々はどのような悲惨な地元大会を過ごす事になっていたかわからない。ジーコ政権下においても、あの04年アジアカップでの「死ぬまで走り続ける」ような奮闘。準決勝のバーレーン戦、120分間走り続けた鈴木が終了の笛を聞いた瞬間座り込んで自らのふくらはぎを丁寧にいたわった映像は忘れる事ができない場面だった。さらに同じ年のマスカットオマーン戦、小野と中村の2人の見事な細工からの鈴木が完璧なヘディングシュート。これ以外の場面でも、多くの場面で鈴木の最前線の奮闘が、後方の戦士たちをどれほど楽にしてくれた事か。01年のコンフェデカメルーン戦(この試合は日本代表史に残る完璧な試合だった)に抜擢され、鮮やかな2得点を決めた以降、あまり得点は決められなかったが、起用されたいずれの試合でも、鈴木はとにかく献身的に日本に貢献し続けた。
久保の代表入りは、98年トルシェ氏就任時。トルシェ氏は久保の潜在力の大きさに期待し、以降も再三起用するが、久保はA代表で得点を決められない。それでも、トルシェ氏は相当久保に期待したのだろう。ワールドカップの年、02年になった以降の強化試合でも再三久保を起用するが、結局久保は無得点。トルシェ氏は23人に久保を選考するのを諦める。
その後、02年シーズン終了後、サンフレッチェが2部降格となった際に、マリノスに移籍。03年シーズンで久保は大化けする。03年5月にアントラーズを叩きのめしたハットトリック以降、久保は当初から期待されていた潜在力を顕在化させ、Jの各クラブを恐慌に追い込む。そして、このシーズンの最終戦のジュビロ戦、終了間際に10対11の難しい状況から、強健な肉体能力を活かしたヘディングシュートを決め、マリノスの前後期優勝に貢献。その直後の東アジア選手権の中国戦で、完璧な2得点。さらに、あの埼玉オマーン戦でのロスタイムの決勝ゴール、加えて続く(親善試合だが)チェコ戦の完璧な強シュート。このあたりの久保の充実振りは凄いものがあった。トルシェ氏の仕事が「いかに点を取るか」だったのに対し、ジーコ氏の仕事は「以下に久保に点を取らせるか」に思えた。かほど充実したストライカはカズ以来。いやカズは優秀なチームメートの作った好機を敵陣に押し込むのが仕事だった。あの頃の久保はそうではなくて、自らが突破して強烈なシュートを決める能力を発揮していた。カズ以来ではない、釜本以来だったのだ。中田、小野、中村と、世界に誇る技巧と判断力あふれるMF陣の前で久保が待つ。そのようなフォーメーションで、ドイツを戦いたかった。
ともあれ、鈴木は昨シーズン以降不振に陥った。久保は結局03年終盤から04年半ばまでの僅か1シーズンに光り輝いたに過ぎなかった。ジーコ氏の選考も仕方がなかったのだろう。それを否定する文章を、もう書こうとは思わない。
ただ、2000年代の前半、我々に最も大きな歓喜を提供してくれたFW2人はドイツには行かない。これもまた歴史である。この2人の活躍をリアルタイムで愉しみ、感謝する事ができたのは幸せだったのだ。
あと3年半が経ち、2000年代のベストFWを選考する際に、この偉大な2人を忘れさせてくれる素晴らしいFWが活躍した事を思い起こせる事を切に望む。
2006年05月27日
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久保については実際のところしょうがないと思います。出れば相手は腰を狙うでしょうし。<br />
しかし鈴木については体調的には問題なく、2部チーム相手とはいえカップ戦で2得点を決めるなど十分に復調しており、自分はひそかに鈴木の代表復帰は確実視していました。大舞台にいきなり上げられても結果を出す運も持ってますしね。<br />
しかしジーコは思ったよりシビアでした。鈴木と同タイプでパフォーマンスを計算できる巻を選択。う〜〜〜〜。<br />
でも応援しますよ、代表を、巻を。おそらく鈴木も無邪気に応援するように思えますしね。<br />
私達はこれらの選手の活躍もしっかりと後世に伝えなければなりませんね。<br />
その積み重ねが文化となり、その積み重ねが強さとなり、その積み重ねが光り輝く未来に繋がると信じて。