ワールドカップが始まると何が困るかと言うと、試合が続けてあると言う事態そのものが困るのである。先日来、散々愚痴をこぼしているように、出発前と言うのは何かと忙しい。ところが、大会が始まると連日試合が放映される。それでも4年前は楽だった。試合の多くは昼間なり日本の夜なり、日本での生活時間にマッチした時間帯に行われたので、観ようにも本業の関係で観ようがない試合が多かったらだ。ところが、欧州なり米国大陸で行われる大会はそうではない。その気になれば、寝る時間を削りさえすれば、帰宅後生中継で2、3試合観る事が可能な時間帯に試合が行われる。これは大変つらい事態なのだ。ちなみに現地に行ってしまえば、この苦行からは解放される。4年前と同じ事で、常識的な時間帯での試合となるので、移動なり観光なり飲酒なりで忙しく、せいぜい1日1試合を観ればよいと言う気になるのだ(そうは言っても、現地で必死にテレビを探すのも愉しいのだが)。
だから、ポーランド−エクアドルのような試合は観なければよいのだが、これが観てしまうのですね。東欧のカウンタアタックの伝統国と、高地のホームの利を活かしながらいかにも南米らしく巧妙な守備を見せる国、全く異なるスタイルの両国の駆け引きは、ワールドカップならではのものだ。それにしても、ポーランドの試合運びの拙さは何なのだろう。32年前、ガドーハやラトーが見せた超速攻は片鱗すら観る事ができなかった。あの大会のポーランドの最初のお相手はアルゼンチン。アルゼンチンのGKやDFが次々にポーランド攻撃陣にボールを渡す凡プレイを、的確に突き3−2で完勝した(この大会のアルゼンチンは、今日の世界屈指の強豪の姿からは想像すらできない悲惨なチーム、それでもイタリアに競り勝って2次リーグに進出するが、クライフオランダに0−4にチンチンにされてしまう)。
それにしても、ジュラフスキは中村のありがたみを今さならながらに感じたのではないか。
ドイツ−コスタリカについては、ドイツの強さともろさの両面が浮き出た試合となった。16年前の優勝の時(ブレーメ、ブッフバルド、マテウス、クリンスマン、リトバルスキ、フェラー)は、さらに遡った16年前の地元制覇の時(マイヤー、ベッケルバウア、フォクツ、ブライトナ、オヴェラート、G・ミュラー)と比較して、技術とアイデアの無さを体力と精神力でカバーした印象だった。しかし、今回のチームは16年前のチームより一層技術とアイデアが後退し、体力と精神力で戦う事になるだろう。バラックが加わり、どこまでレベルを上げてくるか。
私は昔から西ドイツは大嫌いで、クライフ、プラティニ、ディエゴらが見せる美しいサッカーに立ち塞がる西ドイツに、ワールドカップごとに切歯扼腕していた記憶ばかりなのだが、今回はドイツ嫌いにとっても寂しいチームに思えてならない。
コスタリカで不思議なのは、ドイツのシュートの射程距離を見誤っていたのか、ペナルティエリアの外側近傍でのタックルが妙に甘かった事。あそこをもう少し厳しく守っていれば、あそこまで苦しい試合にはならなかったと思うのだが。
イングランド−パラグアイも、西欧対南米の対決。こちらは開始早々のベッカムの一撃で勝負がついた。先制したイングランドはリアリズムあふれる試合運びで逃げ切りに成功。いかにも優勝候補らしい戦い振りは、前日のドイツのドタバタとは大違い。個人的には、先日も述べた通り、やや奇をてらったかのように見えるメンバ選考は気がかりだが、今回のイングランドは相当行きそうだ。
一方のパラグアイ、早々にリードされてGKまで負傷退場と言う最悪の事態ながら、そのままリードを広げられず、しっかりとカウンタアタックもできたのは、こちらはこちらで大したものだ。イングランドに敗れたために、スウェーデンとの直接対決に勝ち点3が必要になったが、この苦しい試合で得失点差の痛手がなかったのをよしと考えるべきだろう。
それにしても、開幕からの3試合、引き分けがなくいずれも勝負がついているのは、今大会が攻撃的に進む前兆なのだろうか。
2006年06月10日
この記事へのコメント
イングランドのあの展開は、余裕の逃げ切りではないような気がするのですが、大丈夫ですかね。個人的にはあの中盤がしっかり機能するところを見たくてたまらんのですが、先日の試合を見る限りでは不安いっぱいです。監督も暑さにやられたとかしょぼいこと言うてるし・・。ぜひともブラジルとイングランドの決勝が見たい!日本はアルゼンチンとの3位決定戦でいいから!
Posted by hiro at 2006年06月11日 22:42
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