1年間だけ、仕事の都合で愛知県東部に居住した事がある。ちょうどその時、JSLではヤマハが優勝した。磐田のヤマハスタジアムへはクルマで1時間ほどで行かれるので、当時の優勝争いの大一番だったヤマハ−日本鋼管戦などを観戦したのはよい思い出だ。ヤマハの柳下、石神のCBコンビと、鋼管の松浦の丁々発止は、今でも目に浮かぶ。ちなみにFC東京の倉又監督は、当時の鋼管の主将で、闘志と知性あふれるサイドバックだった。この時に知り合ったヤマハサポータの友人達は、今でも私の貴重な財産となっている。
一方、面白いものでプロ野球でもその年はドラゴンズが優勝した。つまり、サッカーも野球も近隣地域のチームが優勝した訳だ。一緒に仕事をしていた仲間の多くは当然ながら、ドラゴンズびいきだから、随分と祝い酒をおごってもらったのも愉しい思い出だ。ちなみに、当時のチームは星野氏は監督就任2年目、落合が主砲でフル回転し、立浪が新人だったのだから、時代を感じずにはいられない。
そのドラゴンズが、落合監督の下セリーグを制覇しながらも、またも日本選手権で敗れた。ドラゴンズは選手権では勝てない事に定評がある。けれども、今年の相手は大沢親分、江夏以来久々の選手権のフライヤーズじゃなかったファイターズだけに、今度こそ勝てるかと思われた。しかし、北海道サポータに押し切られてかのような敗戦だった。昨年のオリオンズじゃなかったマリーンズの勝利と言い、この2年の選手権は強力なサポータ抜きでは語れないようだ。
一方で、ファイターズの快進撃を、非常に複雑な思いで眺めているコンサドーレのサポータが多いのも確か。北海道あるいは札幌をホームタウンとして、活動を開始したのはコンサドーレの方がずっと早かったのだが、現時点では「見かけの人気」に大きな差がついてしまった。さらに言えば、コンサドーレの場合、一時はJ1に定着する雰囲気すらあったのに、明らかな監督選考の不備から始まるJ2陥落、同時に顕在化した財務的な危機により、J2中位に低迷する事になっただけに、悔しさはひとしおかもしれない。いや、近い将来イーグルスの強化が順調に進めば、我々ベガルタサポータも同じ感情を持つかもしれない。
このあたりは、やはり「野球の凄さ」だと思う。我々サッカーサイドの人間が何を言っても、この国における野球は凄い。もちろん、そこに至るまでにファイターズやマリーンズの営業努力もまた並々ならぬものだったのだろうが。よく「野球人気は頭打ち」と言う議論をよく読むが、私にはとてもではないがそうは思えない。06年の野球を回顧してみれば、王監督の下で世界一になって、ユースの日本選手権の決勝では歴史的な好ゲームがあって、トップリーグでは札幌と名古屋のクラブが叡智を尽くした死闘を演じた。我々が川淵会長とジーコでアボーンしたのとはえらい違いだ(いや、Jリーグはこれから非常に面白い終盤戦を愉しめるだろうが)。むしろ、「野球人気は頭打ち」ではなく、単にジャイアンツと言う球団が苦戦していると言う事なのだろう。
一方でかなり驚いた事がある。小学6年の坊主が「『遊びとしての野球』をほとんどした事がない」と言うのだ。「野球は道具が必要だし、ルールがややこしいからすぐケンカになるし」と言っていた。私が子どもの時は、放課後いつも野球ばかりやっていた。もちろん、「校庭でバットを使ってはいけない」と言ったキマリもあったから、いわゆる「ハンドベースボール」が多かったが。確かにルールの解釈で、よくケンカしていた記憶はあるけれど。ところが、坊主に言わせると「野球は少年団に入っている子が、ユニフォームを着てやる競技」らしい。坊主がサッカー少年団所属で、極めて特殊な父親の息子である事は割り引いて考えなければならないが、「みんなで身体を動かしたい時はサッカーだよ、道具はいらないし、わかりやすいし。」との事だ。
野球の凄さは認めざるを得ないだろうが、確かに時代は動いているのかもしれない。
誤解されては困るが、私はサッカー人だが、野球とサッカーの人気が排他的なものだとは思っていない。野球場に生観戦しに行く時間があったら、サッカーを見に行くだろうが、野球(を含めた他のスポーツ)をノンビリ愉しむのも嫌いではない。上記のWBCも甲子園決勝も、存分に愉しませてもらったし。野球とサッカーは「排他的ではない競合」として、相互を利用しつつ成長すべきものではないかと思っている。
先ほど、コンサドーレについて述べた時に「J1に定着」と言う表現を用いたが、長い歴史で見れば「J1に定着」と言う日本語が妥当かどうかは疑問が多い。たとえば、マンチェスターユナイテッドが2部落ちしたのは「ほんの」30年ほど前の話で、前回ファイターズならぬフライヤーズが日本選手権を制覇した時よりは「最近」なのだから。つまり、長い歴史と言うのはそう言うものなのだ。ファイターズとコンサドーレの、ホークスとアビスパの、ドラゴンズとグランパスの、カープとサンフレッチェの、そしてイーグルスとベガルタの、「排他的ではない競合」関係の戦いは、未来永劫続く。
(付録)
お遊びです。
ファイターズが栄冠を掴むまでの一連の道のりで、最も興奮したのは、プレイオフの決勝点の場面の森本の2塁からの快走でした(ホークス斉藤和に完璧に抑えられていたファイターズだったが、9回ウラに森本四球、田中雅送りバント、小笠原敬遠、セギノール三振で迎えた2アウト1、2塁で、稲葉の内野ゴロで2塁のフォースプレイになる所に小笠原が飛び込みセーフ、その間に森本が長躯ホームを突いてしまった!)。で、この場面をサッカーにシミュレートしてみました。もし、野球に詳しい方が不快に思ったらゴメンナサイ。
お互い完璧な守備で守り合っていた試合。ホークスの守備は、CBの斉藤和の驚異的な読みを軸に安定し、何らゆるぎを見せない。一方若手の八木を最終ラインに起用した日本ハムの守備ラインも堅実でとてもではないが崩せそうもない。
かくしてお互いに0−0で迎えたロスタイム。日本ハムのサイドハーフ田中賢が、ソフトバンクの中盤のプレスの僅かな隙を見つけてアーリークロス、もちろんそのクロスのコースを冷静に読み切った斉藤和は落ち着いてコースに入る。ところが、日本ハムの闘将小笠原が、そのクロスに強引に頭から飛び込んだ。
そのため体勢を崩した斉藤和は味方につなぐのを断念し、プレイを切るためタッチラインにクリア。ところが、この日素晴らしい気迫で守備ラインを引き締めていたサイドバック森本が、好機はここしかないと読んでいたのか長躯70mを疾走していた。森本はそのクリアを拾って、角度のないところからアウトサイドにかけたシュート、その一撃が完璧な決まってしまった。
ゴールキーパの新庄が、森本の近くまで来ていたのがご愛嬌。
って言う感じでしょうか。それにしても、ノーヒット、ノーエラーで、点が入るのだからビックリしました。それでサヨナラ勝ちで優勝と言うのですから...
2006年10月30日
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仙台の市街地ド真ん中で児童数も少なかったですが、休み時間や放課後はサッカーと三角ベースが半々といった感じでしたね。<br />
たまにベガルタのシャツ着てる子もいたりして(笑)<br />
でもプロ野球が来る前の話ですから、いまはどうなのか興味あります。<br />
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「野球人気」については全く同感です。オーナーの横暴ぶりがあそこまでチームをダメにした。<br />
パ・リーグの努力がやっと実になったのとは好対象。いまや「実力も人気もパ」ですからね。個性的な選手も多くて見てても楽しいし。<br />
という構図になってしまうので、いくら地方に移転してスタジアムを満員にしても、所詮コップの中の嵐で、ビジネスとしては成り立たないのですね、プロ野球は。<br />
選手の給与水準をJリーグ並にすればやっていけると思いますが、夢物語に過ぎません。まだしも放映権の一括管理の方が現実味のある話です。<br />
とにかく50メートルのコースをまっすぐ取れないほど狭い校庭なので、野球はきわめて不利な立場に立っているようです。サッカーは狭ければ狭いなりに面白く出来ますが、野球は遠くまでかっ飛ばさないと面白くないものなぁ。<br />
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「草野球をする空き地の減少」が低年齢層への普及の障害になっているのは確かなようです。開発が最も進んでいる東京はその影響が既に現れていて、サッカー部のある高校が野球部のある高校を50校上回っています。<br />
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東京都高野連:加盟265校<br />
http://www.tokyohbf.com/koyaren03.html<br />
東京都高体連サッカー部:加盟315校<br />
http://tokyosocceru18.com/kameikou.html<br />
(これ以外に三菱養和やヴェルディ等のクラブユースがあるわけですね)<br />
<br />
「空き地がない問題」はドイツサッカー界も直撃しているようですが、日本の場合は「サッカーはスクールで勉強するもの」だったためにサッカーにはほとんど影響が出ていないんですね。高校野球の予選を見ても、底辺の部分では「お前ら、野球やったことないだろ?」といったチームが増えてきていて、リトルリーグで本格的にやっていた子との格差は拡大してきています。普及の基盤が崩壊しているわけで、あと20年もしたら深刻な問題となる可能性が高いです。メディア的に目立たないので話題になってないのですが、実はこちらの方が「野球の危機」だと思いますよ。
1.あの場面はショートは持ち直しては駄目、グラブトスでアウトを取りにいくべき。<br />
2.フォースアウトを取れない可能性がある以上、セカンドはボールを受けると同時に2塁走者をけん制するべき。<br />
<br />
といったわけで、「記録がつかないだけで二遊間の致命的なミス」と断言しています。1.はともかく、2.は御説ごもっともでしょう。あんなプレー何年かに一度しかおきないものですが、「そこを準備しておくのがプロというもの(豊田氏)」<br />
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#エディタからコピペしたら余計なところまで写してしまった(汗)<br />
#19:58:06の書き込みは消していただけると幸いです
盛り上がり的にはサードで止まって「9回裏二死満塁で新庄」が見たかったなぁ。