2006年12月27日

拡大トヨタカップ

 すっかり更新をサボってしまい申し訳ありません。色々ありまして。とりあえず復帰いたします。すっかりタイミングを逃した感がありますが、まずは拡大トヨタカップ総評から。



 すばらしい大会だった。唯一悔いが残るのはいくつかの事情で3位決定戦を見られずアル・アハリを見損ねた事。大会前から都合でインテルナショナルの準決勝観戦はあきらめていたのだが、チケットを持ちながらの3決回避は今でも悔しい。

 しかし、そのような無念さを完全に吹き飛ばすような、実に見事な決勝戦だった。さらに、その決勝戦は試合そのものもトヨタカップの中でも高いレベルにあったのみならず、準決勝でのバルセロナの大爆発と言う伏線を見る事ができたので、一層色鮮やかなものになった。



 決勝のインテルナショナル。3FWのバルセロナに対して、4番のエレールを余らせて4DFでマンマーク。さらに所謂ブラジル風のドイスボランチの4MFが、左右にスライドしながらバルセロナMFにまとわり付く。ロナウジーニョについていた2番のセアラが攻め上がると、必ず8番のエジーニョが守備ラインに引き自陣の数的優位を崩さない。さらにザンブロッタが上がってくると、ジュリについていた15番(左バック)のカルドーソが巧みに3番のインディオにジュリを任せ自分がザンブロッタを押さえに行く(同時に中央と右サイドのDFが全体にずれてマークは崩れない)。この時カルドーソが、受け渡し直前にインディオに対し片手を上げてタイミングを取る仕草が何とも美しい。

 しかもインテルナショナルは、ただ守りを固めている訳ではない。ボールをよい位置で奪うや、2トップにもう1人が必ず絡み鋭いカウンタを狙う。常にカウンタを狙う事で、バルセロナが2CBとボランチのモッタが前進しづらくする事に成功した。ただし、インテルナショナルの逆襲で面白いのは後方に必ず人数を最低6人は残す事、結果的に間延びしたラインになり、悪い位置でボールを奪われると逆にバルセロナの速攻に脅かされる事になった。しかし、どうやらそのリスクは覚悟の上だったようだ。それでも最終ラインに人数を残し、自陣前で跳ね返す事に専念する守備を選択すると決めていたのだろう。実際、ギリギリのところで守備は崩れなかった。

 この鮮やかな守備と、執拗なカウンタを継続する試合を観て、つくづく「ブラジルは凄い」と改めて思った。ブラジルのトッププレイヤの多くは海外でプレイしている。ロナウジーニョやロナウドのような超トップクラスはもちろん、Jリーグで戦っているブラジル人選手のレベルも相当なものだ。けれども、あれだけの人材を輸出しながらも、国内のクラブにはこれだけ質の高いサッカーができる選手が十分いるのだ。それでも、去年のサンパウロは、まだシシーニョとかジュニオールとかアモローゾとか、私でも知っている人材がいたのだが、今大会のインテルナショナルで知っている選手はほとんどいない。試合後、イアルレイを思い出したくらいだ。



 一方のバルセロナ。

 準決勝は凄かった。幸運にも、後半大差がついてロナウジーニョとデコを中心に、バルセロナが奔放な攻撃を見せた側のゴール裏で観戦していた。もうバルセロナの3点目(ジュリが完全にフリーから打ったのをGKがこぼしたのを例のロナウジーニョのアレ)、4点目(抜き損ねたロナウジーニョが方針を変更して後ろを向いてデコに渡し、同時にシュートコースを空けて決めさせたヤツ)、以降ロナウジーニョがトップに残り、デコと共に、仲間を使いながら次々に見せてくれた芸術。「駆け引きがどうだ」とか「勝負のアヤがどうだ」と、普段講釈を垂れている事のむなしさを感じさせてくれる美しさ。サッカーの必勝法は巧いヤツを集める事がまず第一歩と言う当たり前の事を認識させてくれた。

 毎週、バルセロナの攻撃はTV映像で愉しむ事ができる。しかし、ゴール裏であの猛攻を生観戦すると改めて発見できる事が多数ある。中でも感心したのはロナウジーニョのDFの足先ギリギリを通すパスの巧さ。巧みなドリブルでDFの動かして、狙っている足に体重ががかかった瞬間にその横を通すのだろうが、ここまで理屈どおりに巧くやれるのだから恐れいる。

 ロナウジーニョとデコと言う大駒2人の周りを、技巧的で勤勉な選手が動き回っての美しいサッカーを堪能できた(もっとも、あれにメッシとエトーが加わるのが本来の姿なのだな)。試合後、一緒に観戦した少年チームのコーチ仲間の友人と「いや、よいものを見せてもらった。子ども達も連れてきたかったな」と試合を振り返るのがまた愉しい試合だった。



 そして決勝のバルセロナ。

 インテルナショナルの分厚い守りに悩まされながらも、幾度か好機を掴むが崩しきれずに前半を終える。ライカールト氏としては、どこかで無理をして攻めかけたいところだったのだろう。そして、そのタイミングが後半開始早々が一番よいように思っていた。ところが、何とした事か、ザンブロッタが負傷すると言う不運、ハーフタイムに守備ラインで交代を1枚使う事になってしまった。これにより、後半開始早々も落ち着いた入りをせざるを得なくなった。

 後半も押し気味に進めるバルセロナだが、インテルナショナルの守備は相当厚く、どうしても崩しきれない。後半半ばにシャビをを起用するも、結果的にはイニエスタが中盤の最後尾に下がってしまい、飛び出す手数が減ってしまった感もあった。さらに結果的にデコも前掛りになってしまい、よい体勢で前向きにボールを受ける場面が少なくなったように思えた。加えて、やや焦れてきたか、ロナウジーニョが引き気味の位置取りになってしまい、攻めあぐねが継続する。

 そして、そうこうしているうちに、鮮やかな逆襲速攻からやられてしまった。しかし、あの場面のプジョルはないだろう。2対2、さらに敵が1枚後方からフォローしてきている状態で、守備者が先に仕掛けてしまっては話にならない。イアルレイもアドリアーノ3号も素晴らしかったが、やはりあれはプジョルの自滅と記憶すべきゴールと言うべきではないか。非常に乱暴な感想だが、あのプジョルのプレイを見て、スペインがどうしてもワールドカップで上位に進めない要因を見たか感すらある。

 非常に苦しくなったバルセロナだが、まだ時間は10分あった。延長を考えて残しておいた「最後の交代カード」を切り、捨て身の猛攻に出るべきなのだが、何か落ち着かない。エスケーロが投入されのは、失点後6分も経ってからだったし、選手達も焦りから上滑りのプレイが続いた。インテルナショナルがいやらしくタッチ沿いでキープしているプレイに、あれだけ苛立ってつまらないファウルをする事などは、「もはや、あきらめてしまったのか」と思わせる程、トッププロとは信じ難い場面だった。

 ベンチのライカールト氏もニースケンス氏も、なすすべなし。ここでピッチ上に必要だったのは、現役時代の2人のように、冷静にあきらめず卓越したフィジカルで身を粉にしてクライフやファン・バステンに尽くすために戦い続けるプレイだったはずなのだ。しかし、この日2人が選択したプレイヤのいずれも、そのような発想でロナウジーニョに尽くすプレイはしてくれなかった。ここでもザンブロッタの負傷退場が痛かったと言う事か。



 まあ、そうは言っても、称えるべきはインテルナショナルの90分間継続した完璧な守備である事は言うまでもない。試合後、一緒に観戦した少年チームのコーチ仲間の友人と「いや、よいものを見せてもらった。子ども達には全く理解できないだろうけれど」と試合を振り返るのがまた愉しい試合だった。



 拡大トヨタカップに関して、私は完全な野次馬である。野次馬である以上は、サッカーがサッカーとして愉しめればそれでよい。たとえTV中継の演出が酷かろうが、バカな実況にフィルタリングをする事くらいは朝飯前だし、よい映像が流れてくればそれで十分だ(いつか、ベガルタが登場し、野次馬で無くなる日を心底愉しみにしているが)。

 よい大会だった。巷にこの拡大トヨタカップの改善案を検討する動きがあるようだ。私はそうは思わない。もう、これ以上の大会形式は考えられないように思う。欧州を含め、世界中試合の日程はもうこれ以上試合数が増やせない程になっている。その状況で、この大会の出場チーム数を8に増やすなど愚の骨頂だ。またオセアニアのレベルがいかに低かろうが、世界中のクラブがこの大会につながらなければ意味がない。予備予選にしたって、もし日本のトップクラブがそれに対応しようとした瞬間の日程破綻を考えればあり得ない選択だろう。地元枠が論外なのは言うまでもない。とすれば、現状の開催方法は現時点では最適と言えるだろう。唯一の問題は、チケットの異様な高値だけである。

 トヨタと言う世界的企業のおかげで我々は過去30年近く、クラブの世界一決定戦を生で堪能し続けてきた。そして、美しいバルセロナと、完全にインテルナショナルにしてやられるバルセロナの両方を堪能してしまった以上、トヨタカップの拡大は大成功だったと言わざるを得ない。いくらブラッターと川淵が嫌いでも、この2試合を堪能できて文句を言う筋合いは一切ない。昨年より拡大したこの大会が、未来も生で堪能できればこれほど嬉しい事はない。しかし、この大会が他国に行ってしまったら、それはそれで仕方が無い事だ。新たな開催国の、私のようなサッカー狂が堪能するだけの事だろう。
posted by 武藤文雄 at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 海外 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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