私は東北人だ。素直に嬉しい。私が物心ついた以降、東北地方のチームがこのような全国規模のタイトルを獲得した事はなかった。学生時代に幾度と無く岩手県のチームと戦った事もある。また、齋藤先生についてもよく存じ上げている(もちろん、先方は私の事など覚えていないだろうが)。現場近くにいた当時(20年ほど前の事だが)、関東や静岡の高校がやっているサッカーと、我が地域のサッカーとには、歴然とした質の差があった。それでも、齋藤先生を含めた多くの現場の指導者が、地道に努力を重ねていた。
東北のサッカー界は、藤島信雄や加藤久のような紛れも無い日本サッカー史に残るトッププレイヤを登場させているし、最近でも小笠原満男や今野泰幸など優秀な選手を輩出している。しかし、チームとして全国を席巻する東北チームは中々登場しなかった。一昨年の青森山田のインタハイ制覇にも感嘆したが、やはり正月の高校選手権制覇となると一層感慨深い。
のんびりと正月を仙台で過ごしていたのだが、利府高校が初戦敗退してしまったため、宮城テレビは高校サッカーを中継してくれない。このあたりは、ベガルタが仙台に定着した今日でも私の学生時代と変わらぬ悲しい状況だ。そのため、生観戦はもちろん映像でも、この大会をほとんど見る事はできなかった。じっくりと映像を見る事ができたのは、準決勝と決勝のみだから情けない。
大会序盤にPK戦が多く、3試合を無得点で勝ち抜くチームが丸岡、広島皆実と2チーム出たのが話題になったが、まあ乱暴な一般論からすれば、組織的な守備をしっかりするチームが多かったのだろう。その中で攻撃にも一工夫あり、かつ運に恵まれたチームが上位に進んだと言う事か。決勝に残った2チームにしても、組織的な巧みな守備もさすがだったが、前線によいタレントを抱えていた。
特に個人的に気に入ったのは作陽の村井。トップでボールを受けながら、テクニックによる突破もノールックのラストパスも選択でき、しかも長身。決勝戦でも、後半起用された早々に自分をハードマークしてくる盛岡主将の藤村にラフファイトを演じる駆け引きもなかなか。敗戦後の悔しさを噛み殺す表情もよかった。膝の負傷が慢性で無い事を祈るのみだが、大変な素材だと思ったのけれどあまり騒がれていませんね。
Jユースに選手が取られ「レベルが下がった」と評する向きがあるようだが、準決勝以降の3試合を見た限りでは、特にそうは思わなかった。一時の帝京とか清水勢とか国見とか市立船橋とか東福岡などのように、ユース代表クラスが複数名登場するチームがなかったと言う事ではないか。ちなみに友人のユースウォッチャの高円宮杯と仙台カップが東北勢の強化に貢献していると言う説には納得(仙台カップは、日本ユース代表が国内でアウェイ体験できると言う意味でも貴重な大会らしいけれど)。
もっとも、昨年アジアユースで準優勝したユース代表を構成した選手のほとんどが、Jユースクラブ出身だった。あれほど、高校チーム出身者が少なかったユース代表は初めてだったのは確かだが、選手の評価はこれからなのだから、むしろ北京五輪に向けてどの選手が伸びてくるかに注目したい。
2007年01月08日
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余談ですが、大晦日の昼間は利府の応援団がベガルタのチャントをつぎつぎと繰り出すさまを微笑ましく思い、大晦日の夜にはDJ OZMAたちがロペスのチャントで乱舞する(というかこちらが元ネタですが)さまに仰天しました。