2007年01月11日

阿部勇樹移籍問題

 毎シーズンオフの常であるが、選手の移籍に関する騒動が喧しい。宮本とアレックスの海外同クラブ移籍にもビックリしたし(これはこれで後日述べます)、大量の選手を解雇したマリノスからは久保の離脱も噂されている(これまた興味深い話題だが)。そんな中で、最大の注目は、阿部勇樹の去就であろう。一部の報道によると、レッズへの移籍が決定的との事だが、FC東京やグランパスも相当な好条件を出して勧誘していると言うし、祖母外氏が移ったグルノーブルからの話もあるらしく、さらに当然ながらジェフも何とか慰留してるだろうから、最終的結論はまだわからない。



 阿部と言う選手は非常に面白い選手で、日本には珍しく高いレベルで汎用性の高い選手だ。展開力、長いボールの精度、身体の強さ、空中戦、守備でのしつこさ、いずれもトップレベル。基本的には守備的MFが適任だが、DFもできるし、局面によっては前でも使える選手だ。阿部にとって不運だったのは、得意とする守備的MFのポジションに、やや年上に豊富なタレントがおり、中々代表での出場機会が回ってこなかった事。それでも、一昨年のアンゴラ戦や昨年のUSA戦では、後半から起用されるや抜群の展開力でチームの流れを変えるなど、見事な存在感を見せていた。

 オシム氏就任以降は、完全に代表でもレギュラに定着した阿部だが、主に最終ラインを務める事が多い。現在の日本代表で一番目立つのは闘莉王かもしれないが、まあ闘莉王はアレだから、事実上のチームリーダは今後阿部と今野が務める事になる可能性が高い(このあたりは異論も多かろうと思いますが)。

 そう考えると、もし阿部が国内の他チームへの移籍するとしたら、現役バリバリの代表チームの中心選手の移籍と言う事になり、ここ最近ない戦力移動になる。これはJSL末期チーム再編時代の堀池や柱谷哲二の移籍以来の大事となるかもしれない。その事自体は、欧州南米の先進国同様、強クラブが移籍による補強を重視するようになったと解釈すればよかろうが。



 では阿部はどうすべきなのだろうか。そのあたりの余計なお世話を考察するのが、今日の講釈の目的である。

 まあ一言で語れば、今の阿部ならばどのクラブでも相当な活躍をするに決まっている。むしろ、問題は阿部の加入によってはじかれる選手になるのではないか。

 例えばレッズ。闘莉王、坪井、啓太、長谷部と代表選手が並び、さらに小野も山田もいるこのクラブに、阿部が加わる事を考える。確かにアジアチャンピオンズリーグを戦い抜くためには、相当な選手層が必要だろう。しかし、レッズが抱えている選手は、本当の意味で日本のトッププレイヤ。これは補強と言うよりは、破綻に近い現象となるのではないか。

 FC東京でも問題は同様だ。今野は別格としても、茂庭、伊野波、徳永、さらには梶山と、阿部とはスタイルが異なるがポジションがかぶりそうなタレントが多数いる。間違いなく阿部の加入は補強になろうが、チームは混乱するだろうと思う。

 グランパスならば、すっきり収まりそうだ。昨年はやや冴えなかったが中村直もいるし、老獪な藤田との連携も面白そう。隠れ代表候補の杉本が阿部のロングボールで抜け出したり、ヨンセンが阿部のクロスを決めるのを見るのは愉しそうだ。ただし、それならばジェフで君臨を継続するのとそうは変わらないようにも思えるのだが。

 そう考えてくると、今シーズン阿部がどこのクラブでプレイしようが、阿部にとっては変わらないような気がする。むしろ、大事な事は、早々にそのクラブで地位を確立し君臨し、代表で中核として活躍してアジアチャンピオンを目指す事だろう。つまり、悩んでいる(らしい)本人には失礼だが、今の阿部の能力ならば、(海外に出るというなら別だが)国内ならばどのクラブでも問題はなく、環境の選択は彼にとって本質的な問題ではないのではないと思う。



 私の意見は、こちらのレッズサポータの方に一番近い事になる。

 表現を変えれば、一番カネを積んでくれるクラブに行くべきではないか。阿部クラスの選手にとっては、オファーしてくるクラブの誠意はカネであるはず。そして、もしそのカネに差がないならば、ジェフに残留しリーグタイトルを目指すのが一番よいと思う。環境が変わらなければ、一番活躍しやすいはずなのだ。



 阿部が目指すべきはアジア最高の名手なのだから。
posted by 武藤文雄 at 23:49| Comment(7) | TrackBack(1) | Jリーグ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 千葉を応援してますが、阿部の浦和の移籍は阿部本人のことを考えると賛成です。浦和サポは「日本一かわいさから遠いサポ」(とうこく氏said)で、awayにも大勢押しかけて、対戦相手のモティべーションも上げています。以前の巨人のような立場。ほとんどTV中継され、観客多数の巨人戦に相手はNO.1投手をあて、野手も張り切る。巨人が勝つことは、他のチームが勝つことよりも難易度が上でした。浦和はJの中で一番厳しい状況でサッカーをやっていると思います。<br />
 浦和の選手の能力偏差値の平均は千葉よりも高い。チームメートのミスによる阿部のエネルギーロスも減るはず。代わりに千葉の時よりも頑張る相手と対戦しなければなりません。ACLも2年連続で参戦が決まっています。違った環境の中で、良い経験ができるはずです。<br />
 魔法使いのお爺ちゃんが去ってしまった千葉では阿部が残ったとしてもJリーグ優勝は当分困難。魔法使いの息子アマルは魔法使いではありませんでした。千葉が優勝するには次なる魔法使いを連れてくるか、クラブに革命が起こるかのどちらかが必要です。革命は大きくて古い体質の古河&JRでは多分無理。革命児か魔法使いの出現を待つのはサポーターだけでいいでしょう。
Posted by 木組み at 2007年01月12日 15:51
私も千葉サポですが、実際そうなった今になって言うのも滑稽ですが、<br />
浦和に行くのが阿部本人のためだなんてどうやったって考えられません。<br />
不思議な千葉ファンもいるものだなあ、という感じです。
Posted by Unknown at 2007年01月12日 23:12
あと、アマル監督の評価はこれからでしょう。昨年の成績は芳しくありませんでしたが、あまりに状況が異例すぎました。参考にならないと思います。<br />
今季は、降格しないで賞金を狙える順位を、というところが目標になるだろうと思います。<br />
もちろん個人的には優勝して欲しいに決まってますし、すると思っていますが、<br />
一応公に言うための現実的な建前としてはそれくらいでしょう。<br />
<br />
そして、チーム体質やらはともかく、アマルはもちろんオシムだって魔法使いではないですよ。<br />
<br />
話が阿部移籍問題から脱線してしまって申し訳ありません。これくらいにします。
Posted by Unknown at 2007年01月12日 23:18
こんなことがあってもなんとかするのがジェフですよw<br />
どーなっちゃうのか楽しみでありますね。<br />
阿部としてはACLで腕試し、来年は海外に移籍への腰掛なんでしょうけど。<br />
浦和としたら、近い将来の釣男の移籍を考えて獲ったんでしょうか。<br />
Posted by Unknown at 2007年01月13日 11:01
海外を最優先に考えた移籍ということであれば、ズルズル千葉の顔で囚われるよりは良いんですかね。<br />
でも来期以降もレッズに居続け、結果的にレッズギュラーになる事になったりしたら、かなり複雑な気が・・・。<br />
レッズの補強に関しては、巨人?と思いたくなりますね(笑)
Posted by ウルフ at 2007年01月13日 21:07
海外を最優先って言ったら、それこそ祖母井GM就任決定のグルノーブルがオファーを出し続けていたわけですしねえ。<br />
敏腕GMと日本屈指の選手2人で欧州に乗り込む、ってシナリオの方が格好いいとは思いますが(笑
Posted by Unknown at 2007年01月15日 00:00
アジアカップでチームの骨格を作る年なんで国内にいた方が良い、と判断したんですかねぇ。<br />
錚々たるレッズのメンバを考えるに、いくら阿部とはいえ後方の便利屋に収まってしまうのではないかな。<br />
結果、内舘・細貝が職を無くしたりして。<br />
あと長谷部あたりがが移籍志願とか、阿部が火種になりそうな気はする。
Posted by Unknown at 2007年01月16日 08:40
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

[Sports] 武藤文雄氏の
Excerpt: サッカー講釈を読んでいたら,阿部ちゃんの移籍にからめて以下のような記述が。 表現を変えれば、一番カネを積んでくれるクラブに行くべきではないか。阿部クラスの選手にとっては、オファーしてくるクラブの誠意は..
Weblog: dskeの日記
Tracked: 2005-01-01 00:00