欧州のクラブで活躍する日本人選手の多くが好調だ。
最も派手な活躍を演じている中村は言うまでもない。一時負傷のためスタメンを外れていた松井だが、先日の試合で2得点し、体調さえ整えば相当なレベルにある事を示してくれた。1度も映像を見ていないのだが中田浩二はセンタバックとして相当活躍しているらしい(射程の長さと展開力が武器だったこの選手が、欧州でセンタバックとして確立している事は、日本代表にとって非常に重要に思える)。そして、ここ数年今一歩の(と言うより今十歩くらいか)の出来だった高原と稲本も、それぞれレギュラとして大活躍している。高原はよく点を取っており、渡独直前にJリーグで得点王になった時のよいプレイを思い出したかのよう。稲本も名門クラブで中心選手として活躍、早期敗退したもののチャンピオンズリーグでも堂々とプレイしていた(ジーコ時代に、さっぱり自クラブで機能しないこの2人が代表に優先的に選ばれる事に毒を吐き続けたのは懐かしい思い出だ)。小笠原と大黒は、思うような活躍ができていないようだが、2人とも今期からの加入と言う事もあるので、仕方がない部分もあるかもしれない。
昨シーズンは、中村と松井の2人はほぼフルレギュラとして活躍したが、それ以外の日本人選手は中田を含めてほとんどがレギュラとは言えない状態だった。それに比べると今シーズンは見事なものだ。2010年に向けて明るい話題であるのみならず、長期的にも彼らの経験は日本サッカー界にとって財産になるだろう。
これだけ多数の欧州クラブ在籍選手が今シーズン活躍しているのは、やはり彼らがワールドカップ以降1度も日本代表に召集されなかった事が大きいとしか言いようがないだろう。何のかの言って、欧州と日本は遠い。我々凡人が出張や観光で飛行機で行き来をするだけでも相当疲労する。週末に試合をして消耗した選手が、(いくらファーストクラスを利用しようとも)すぐに日本に飛んで試合をし再び疲労し、とんぼ返りに欧州に戻る。これで体調を維持するのは相当厳しい。少なくとも今シーズンに関しては、この召集がなくなった事が各位の体調維持に大きくプラスにはたらき、好調につながっているのだろう。
思えば、中田がフランスワールドカップ後にペルージャに移籍した以降、毎シーズン欧州クラブ在籍選手は、公式戦でなくとも、しばしば代表の強化試合のために帰国してきた(あるいは対戦国に出向いてきた)。この移動で体調を崩した選手はかなり多い。04年シーズンの中田のグロインペイン(当時の中田のフル稼動は凄かった)は、明らかに再三の代表召集の影響があっただろう。00年シーズン、城が神戸の中国戦で膝を負傷したのも忘れ難い嫌な思い出だ(この負傷で城は早期の引退を余儀なくされたと言う)。高原の2度目のエコノミー症候群も遠距離移動による悲劇だった。体調不良とは違うが、中村がレッジーナ時代に周囲から度々帰国する事を非難された事、小野がワールドカップ予選のインド戦に出場するのに対し当時のフェイエノールト監督グーリット氏が「日本がインドに勝つために小野が必要なのか」と語った事なども、欧州クラブ所属選手の代表招集における問題点と言えよう。
オシム氏は代表監督就任以降、アジアカップ予選突破と言う結果を残すのみならず、札幌サウジ戦では内容的にも見事な美しいサッカーを見せてくれた。しかも、国内の選手だけで代表を結成した上での成果である。準備期間の少なさと異様な過密日程にも関わらずだから恐れ入る。見事な成果と言ってもよいだろう。加えて、欧州クラブ在籍選手を「呼ばない」と言う行為を通して、皆活躍させた事も大したものだと言わざるを得ない。リヤドサウジ戦など、中村のFKに頼りたくなるのが普通だと思うのだが。
とは言え、ここまで「代表に召集しない欧州クラブ在籍選手が活躍する」と、結構困った問題が出来する。
まず第1に、今後の日本代表強化はいよいよ監督に高度なマネージメント能力が必須となる事。先ほど「2010年に向けて明るい話題」と軽々しく語ったが、現場の運営は深刻だ。「代表監督が欧州クラブ在籍選手を代表に呼ぶと調子が落ちる」と言っているようなものだからだ。これは完全な矛盾現象。代表に呼べば調子が落ち、呼ばなければ連携が取れない。ジーコのように何も考えない監督ならば悩まなかったのだろうが、オシム爺さんが、この微妙なサジ加減をいかにさばくのか。結構愉しみと言えば愉しみ。
第2の問題はもっと深刻。こう考えると、今後ますます日本国内の代表試合で欧州クラブ在籍選手を愉しめない事になる。大事なタイトルマッチを応援に海外に行く事はやぶさかではないが、それとは別にたまには国内で中村や松井や中田浩二を加えた「ベストメンバ」の代表戦を堪能したい。定期的に「ベストメンバ」の日本代表を国内で愉しむ事は、もはや簡単には望めない贅沢なのだろうか。
2007年01月14日
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