昨日の天皇杯1/16ファイナルでは、岐阜と鳥取で大雪に襲われてしまった。雪が積もった状態で、可能な限りよいサッカーを行うための方策はただ1つ、雪かきをしてグラウンド上の雪を取り除く事だ。しかし、これは口で言うほど簡単な事ではない。高校時代、雪が積もったとき、屈強の若者であった我々サッカー部員20数名は必死に雪かきを行ったが、全員ヘトヘトになるまで数時間頑張っても、ペナルティエリアの雪を何とかするのが精一杯だった。
余談ながら、降ってすぐの雪かきに失敗した雪はそのまま凍りつき、除去不能になる。凍った雪上でのプレイは滑るし固く危険ですらある。さらにようやく融けて雪が消えても、グラウンドは泥濘の固まりと化し、それがまた凍ると言うサイクルが継続する。もう1つ余談だが、降った直後の雪でやるサッカーは、ボールコントロールはさておき、それなりの肉弾戦となり結構愉しい。しかも、終了後スパイクが洗ったかのようにキレイになっている。
話題を戻す。雪が積もった際に、我々の高校時代の部活動ならさておき、有料試合をまともに成立させるためには、大変な人海戦術が必要なのだ。昨日の岐阜、鳥取はいずれも(おそらく県協会の関係者、あるいはサポータを含むチーム関係者の方々の献身的な努力の賜物だろう)見事にキックオフ前に雪は除去されていた。
元々、日本サッカー界はそのような雪害を見事に跳ね返した伝統がある。印象的なのは、84年の1月、ロサンゼルス五輪予選の準備試合として組まれた、日本−コリンチャンズ戦。前日の雪で覆われた国立競技場のフィールド上の雪は見事に除去され、それなりに良好なコンディションとなっていた。それは、MFにコンバートされた直後の木村に率いられた日本代表のパフォーマンスは素晴らしかったのと併せ、忘れられない思い出となっている(もっとも、その快勝で「今度こそ五輪に行ける」と皆で錯覚し予選では酷い目に合うのだが、それはそれとして)。
岐阜では、試合開始後も雪が降ってしまったため、試合終盤は雪まみれの激闘になってしまったようだが、これは仕方が無い(あの87年のトヨタカップも同様だった)。鳥取では試合中吹雪く時間帯もあり、相当重馬場にはなっていたが、ほぼまともなサッカーができる環境となっていた。あのどうしようも無い天変地異(と言ったらオーバか)に対応し、可能な限り良好な試合ができる環境を整えてくれた両県、各チームのサッカー関係者に感謝の言葉を捧げると共に、そのような方々に支えられている日本サッカー界を改めて誇りに思う。