過日、「今シーズンの少年サッカーの試合はこれでお終い、優勝できてよかったよかった」と自慢話を書いたのですが、再度自慢話にお付き合い下さい。
あの大会終了後、少し離れた地域のミニタイトルマッチに招待されたのだ。既に22回の歴史を持つこの大会。手渡されたプログラムには地域の商店や飲食店などが多数スポンサとして参加しており、初日には地元クラブのお母さん方が美味しい豚汁まで準備してくれると言う歓待振り。日本のサッカー界がこのような地域に密着して努力を重ねている方々で支えられている事を改めて認識できる素晴らしさ。このような大会は各地で行われており、我がクラブも年に複数回招待していただける事がある。いずれの大会も広範囲な地域からチームが集まるためレベルが高く、我がクラブは過去中々よい成績を収める事ができなかった。ところがこの大会、我が教え子達が見事なプレイを見せてくれたのだ。
大会には12チームが参加、初日には3チームずつ4組に分かれたグループリーグを戦う。上位2位に入ると翌日の2次トーナメントに出場できるレギュレーション。
まず初日の1次リーグはよく試合をする隣町のクラブ。最近相性がよかった事に加え、先方は負傷者が多かった事もあり、後半立ち上がりまでに3−0と大きくリード。「主将のストライカ」が敵守備ラインの裏を、しつこく突いたのが奏効した。ところが、ここから敵の5年生のエースが機能。逆襲から3点を奪われて、一時は4−3まで追い上げられるも、終了間際に当方の「中盤の将軍」が20mのミドルシュートを決め、5−3と突き放した。
続く2試合目は相当な強豪チーム。この試合では、当方の「守備の大黒柱(地域トレセン選手)」が敵のエースストライカ(前の試合ではハットトリックを演じた)に対し、1対1でことごとく勝利。我が軍の「俊足ウィング」が中盤に引いて前線に絶妙なスルーパスを出し、「来年のエース」となるはずの5年生のFWが巧く抜け出して先制して前半終了。「俊足ウィング」は、これまで抜群の足の速さを生かした突破とシュート、センタリングを武器にしていたのだが、このような気の利いた変化技もできるようになっていたのは嬉しかった。後半も敵の攻撃を巧くつぶし敵にペースを渡さず、「将軍」が見事なドリブルで3人抜きの後スルーパス、再び「来年」が抜け出して2点目。2−0で快勝した。
2日目の2次トーナメント。最大の問題は昨日中盤に引いたプレイを見せ新機軸を開いてくれた「俊足ウィング」が、柔道の試合で不参加な事だった。
準々決勝の相手は、この招待大会の主催チーム。地元のチームゆえ、サポータであるお母さん方がたくさん見えていていて、典型的なアウェイゲーム。最終ラインを思い切り押し上げ、速い展開で攻め込んでくる厄介なチームだった。ところが、「俊足」不在を「主将」と「来年」が奮起してカバーくれた。「主将」は、運動能力の高さが売り物で、インステップキックの強さと精度は抜群。普段はただのいたずら小僧だが、責任感も中々で、他のチームにとって大変な脅威だった。ところが、その責任感の強さが災いしてか、肝心の勝負どころで、もう1つその能力を発揮しきれないでいた。一緒に指導している仲間が彼の父親で、そのあたりもプレッシャになっていたのかもしれない。ところが、この試合で彼が大ブレークしたのだ。名コンビの「俊足」の不在が、逆によい刺激になったのかもしれない。開始早々に角度の無いところから強シュートを放つと、敵GKは足でかろうじてブロック。その後、ハーフウェイラインを超えたあたりで思い切りよくロングシュート。枠は外れたもののこの2発で敵GKは、弱気になったようだ。そのゴールキックをあろう事か「主将」の正面に蹴ってしまった。落ち着いてトラップした「主将」は3度目の正直と言わんばかりにドライブがかかった強烈なシュートをゴールネットに突き刺した。この一撃で勢いに乗った我がチーム、「主将」がハットトリック、「来年」が2点と、5−0で快勝に成功した。
準決勝の相手は、実力的にはこの大会トップかもしれないと言う難敵。子ども達も「まず守備から入ろう」と考えたのだろう。慎重な試合振りで中盤戦を演じ、前半0−0で終了。ハーフタイムにドイスボランチの「将軍」と「坊主」に指示をした。「ここぞと言う時には前進して攻撃に参加しろ。その後戻るのはつらいだろうが、楽をしては勝てないぞ。」親譲りの単純な性格をしている「坊主」は、後半開始早々敵ボールを自陣で奪い取るや、無骨なフェイントで2人を外して勇気を持って前進、丁寧にルックアップして前線で抜け出した「来年」にスルーパス。ところが敵のスイーパがよくその動きについてくる。「来年」はここでよく粘り、逆サイドでフリーになっていた「主将」に正確な横パス。フリーの「主将」が狙い済ましたシュートを決めると言うビューティフルゴールで先制。さらにその直後、ゴールまで30mはあろうかと言う位置で掴んだFKを「主将」が直接シュート、敵GKがこぼす所を「来年」が詰め2点差に。終盤にFKから1点差とされるが、危なげなく逃げ切った。
決勝戦は、前日2試合目で戦った相手との再戦。さすがに2日間で5試合目となると、双方疲労が目立ち、お互い攻め切れないままに前半終了。ここまで来ると、ハーフタイムにはどうしても精神論になる。「勝つ気持ちが強い方が勝つのだ。このメンバで試合するのはこれが最後だ。勝ちたかったら死に物狂いで一歩目を早くしろ。そうすればボールが取れる。そこから慌てずにつなげ。」そして後半開始早々、「守備の大黒柱」が敵ボールをインタセプトし、そのまま攻撃参加。落ち着いて前線をルックアップし、敵DFの裏を狙う巧妙な浮き球のパス、意図をよく読んでいた「主将」が抜け出し、GKの頭越しにロブのシュートを決め先制に成功。ここからは、お互い疲労しているため、完全に蹴り合いになってしまった。これはハーフタイムの私の指示が拙かったと反省。「1につなげ、2に出足を負けるな」と指示をすべきであったが、子ども達は「出足」に専念してしまった。ここで我が軍の「無口で小柄だが最高到達点でボールをキャッチできるGK」が活躍。苦し紛れの敵シュートを、実に冷静なポジショニングでことごとく押え切ってくれる。そして、歓喜の優勝。
優勝チームには豪華なクリスタル風の優勝カップ。大きな盾。そして1人1人には金メダルが授与される。子ども達の誇らしげな笑顔。一方で勝てなかった敵チームの子ども達の悔しそうな表情。サッカーと言う至高の玩具を通じ、歓喜と痛恨を味わう事で彼らは成長するはずだ。
このような大会では、他のクラブの指導者との情報交換も愉しみの1つ。この大会では、攻撃的なサッカーで優勝できた事もあり、我がクラブの評判はすこぶるよかった。「土日だけで、あそこまでテクニックのある子を育てられるのですね」とか「大柄な子もパワーに頼らず技巧を活かしたプレイをするのはいいですね」とか「どの子も顔を上げて回りを見ようとするのは見事ですね」とか。エヘン。
とにもかくにも、6年生の子ども達には、曲がりなりにも「周囲のルックアップと自立的なドリブル」を伝えて中学校に送り出す事ができた。5年生の子ども達は、これらの基本を身に付けつつ「勝つ喜びと自信」を身につけてくれた。そして何よりも皆サッカーを大好きになってくれた。
まあ、指導の素人なりに自分でもよくやったかなと。
もっとも、こうやって毎週末子ども達とサッカーで遊んできて学んだものは、子ども達よりも自分の方が大きかったのかもしれない。一介のサッカー狂として、子ども達がサッカーを身につけていく過程を観察するのは、本当に勉強になった。何度も語ってきた事だが、彼らには感謝してもしきれない思い出がたくさんある。
そして、最後の最後に私に優勝と言う歓喜を提供してくれたのだ。
さらに...
閉会式も終盤、突然進行役が全く意表をついた発言。「では恒例の最優秀監督表彰です。」
齢46歳。サッカーに浸って約35年。個人表彰を受け、盾までもらったのは初めてでした。皆、本当にありがとう。
2007年02月12日
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武藤さんほんとうにおめでとうございます。<br />
いつものすばらしいコメントにも、トロフィーが必要かも?
おめでとうございます。<br />
本当に良かったですね。<br />
照れながら表彰を受けている武藤さんが目に浮かびます。<br />
微笑ましい話、ホントにありがとうございます。
武藤さんのいろいろな形でのご尽力が選ばれた方々の目に留まったのでしょうね。<br />
これからも楽しい講釈、期待していますよ。
盾を受け取ったときは最高にカッコいいお父さんに見えたはずですよ。きっと彼は尊敬したんじゃないでしょうか。
少年サッカー(4種)の指導で大切なことは、<br />
3種に繋げるスキルを与えること。<br />
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講釈師(監督)の益々のご活躍をお祈りいたします。<br />
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